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未来へ向かって(終)

 バージルーズの崩壊は直ぐに全惑星、全世界に伝わった。

 攻撃対象にされたテトランスも、避難していた人達で賑わっていた。それはテトランスだけではない。レイド達に協力したエルリール、シリアの故郷グザリス、ジェシカのいるオアランド、一つの街を破壊されたヴァイラ、そして、四聖官のいるジェルラードもお祭り騒ぎである。街中には歓声が飛び交い、喜びのムードが漂っていた。

 その笑顔を人々に戻したのは、たった二人の男女。この二人の名前を知らない者は一人もいない。



「それにしても、さすがです!!僕は信じてましたよ!お二人なら必ずやってくれると!僕は二人に出逢えて幸せです!!本当に――」

「少し黙って、スティーブ。傷に響くわ。」

 ここは、グリンピアの中。

 ベッドに横たわり怪我の治療を受けている二人に、スティーブはかなりの大声で喜びを表していた。そのスティーブをシリアが我慢出来なかったかのように制する。

 スティーブはそこで、スミマセン、と小さな声で言うと縮こまった。それを見たレイドは苦笑いを浮かべる。

 ヴァイラのステーション前で倒れていた二人をグリンピアに乗せ、今は治療させる為ジェルラードへ向かっている最中である。 

「あの完全体はどうなった?」

 レイドは落ち込んでいるスティーブを励まそうと話題を変えた。

「今は完全に機能停止状態ですね。あのレッドクリスタルが動力源だったようですから。それが無くなった今、もう動く事は無いでしょう。」

 スティーブも冷静になったのか、淡々と話した。

 二人はそれを聞いて、心底ほっとしていた。

「またあんな奴が現れても、私は二度と戦わないわよ。」

「俺もごめんだ!その時はスティーブに任せるよ。」

「むむむむ、無理ですよ!僕にどうにか出来る相手じゃ無いですよ!!大体、僕が行っても――」

「スティーブ、黙って!」

 両手を顔の前で左右に振りながら慌てふためいているスティーブに、再びシリアのきつい一言が突き刺さる。それによって更に縮こまるスティーブ。どうやらシリアも少し遊び感覚のようだ。

 レイドは縮こまっているスティーブを見て、また苦笑いを浮かべるが、フォローすることは無かった。 




 ジェルラードで治療を受けて一週間。二人の怪我は完全に治り、いつも通りに動く事が出来ていた。

「イリーナ、レイド見なかった?」

 シリアはレイドを捜して歩いている時、ジェルラードのオペレーターの女性、イリーナを見つけ声をかけた。

 既にこの二人は四聖官並みの威厳を保っていた為、呼び捨てで話そうとも嫌がられる事は無かった。

 もっとも、シリアにはそんなことは元々関係無いようだが。

「レイドさんなら、休憩室でコーヒー飲んでましたよ。…もしかして、デートの約束ですかぁ?」

 イリーナは茶化すような笑顔を向けそう言った。

「違うわよ!四聖官と話をするから呼びに来ただけ!」

「なぁんだ。」

「何でそんなに落ち込むのよ!…まあいいわ。ありがとね、イリーナ。」

「お安い御用です。」

 二人は笑顔を交わし、シリアはレイドのいる休憩室へ向かった。



「怪我も治って良かったな、レイド!」

 休憩室では、レイドと第二部隊長、アレンが優雅にくつろいでいた。

「ああ。やっと剣が振れるようになったよ。」

 レイドは治った腕をぐるぐる回す。

「ハハハ。じゃあ、俺の修行相手になってくれよな!」

「アレンは銃だろ。ならシリアに教わった方がいいだろ!」

 レイドの言葉に苦笑いを浮かべ、首を左右に振るアレン。

「お前はいいかもしれないが、俺は無理だ!」

「何故?」

 無理だ!と言い切るアレンに問いかけるレイド。

「シリアちゃん……怖いんだよね。」

「誰が怖いの!?」

 突然、後ろからシリアの声が聞こえ、これでもか!というぐらいオーバーリアクションで驚くアレン。その姿を見たレイドは腹を抱え笑っていた。尋ね返した時に、レイドはシリアが入って来ていた事に気付いていたのだ。

「い、いや!べ、別にシリアちゃんが怖いと言う訳じゃなくてだな!その〜、あの〜。」

 必死に言い訳を考えているアレンにシリアも思わず吹き出す。

「まあ、いいわ。それよりレイド。四聖官が話たいことがあるって!行きましょう。」

「ああ。」

 レイドは立ち上がり、アレンの肩をポンポン、と二回叩き、その場を後にした。 




「怪我は治ったようじゃな!」

「ええ、お陰様で!」

 会議室では、レイドとシリア、四聖官が集まっていた。

「ヴァイラはあれからどうなってますか?」

「今、多くの人達によって再建の準備がされているわ。このペースなら直ぐに復興できるわ。」

 レイドの問いに、ダミアが答えた。

「それにしても、半日も戦っていたなんてな…!」

 グラゼンが一週間前の事を思い出したように言った。

「それは私達自身も驚いているわよ。」

「二度と出来ないな……あんな事。」

 二人は渋い表情で呟いた。


「それで…?話とは?」

 レイドが本題に入った。

「実は、四人で話し合ったんじゃがな。我々と一緒に五大惑星を見守っていかんか?」

「それは一体…?」

「六聖官、ってことよ!」

 ハーリーが笑顔で答える。

 レイドとシリアは顔を合わせ、笑みを浮かべた。

「悪いけど、遠慮させて貰うわ。私達は独自で見守って行くわ。」

「それに、まだまだ自由に生きたいんでね。頭を使うのはもう少し先にするよ。」

「まあ、その為には四聖官の協力も必要なんだけど、それはもう少し後に話すわ。」

 そう言って二人は立ち上がった。

「俺達はこれから五大惑星を回ってみます。協力してくれた人達にお礼もしないといけないし。」

「そうか、残念じゃな。」

「そうだ、レイド。ジェシカが逢いたがっていたぞ!オアランドに行ったら宮殿へ寄って行ってくれ。」

 グラゼンの言葉に、苦難の表情を見せるレイド。

「……考えときます。」

 そう言って部屋を出て行った。



「まずは何処へ行くの?」

「グザリスに行こう!」

「いいけど、何でグザリスなの?」

「飯も美味いし、いい空気も吸いたいしな!」

「そうね。一番落ち着ける場所かもね。」

「それに、シリアのお父さんにも報告しないとな!」

「報告って……何の?」

「無事に帰ることが出来ました、ってな。」

「何だ、……そんなことか。」

「何だと思ったんだ?」

「別に、何でも無いわ!」

 その後も、色々話ながらグザリスへ向かった。


 二人の手は、しっかりと繋がれたまま……。




       完

 読んで頂き、ありがとうございます。センスのない文章で申し訳ありません。一応、続編も考えているので、感想、要望だけでも貰えれば嬉しいです。では、またどこかでお会いしましょう。

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