現在試用期間中
ようやくそれっぽい描写が書けました。
まだまだ全然手ぬるいですけど。
伝承によれば、その地は人々の暮らす大地の遥か下に存在するという。暗黒が支配し、全てのおぞましき魔物達の生まれる場所よりも更に下、あまりの深さにより天に在りし神々ですら見通せぬ地だとされている。
その地の名こそ、エ=トゥドゥ。
古き言葉にて“恩寵なき土地”を意味し、かつ全ての魔物の母たる神フル=オ=アックの息子にして夫たる神の名である。
正しく葬られぬ者、魔物に殺された人々の魂を薪として燃え上がる巨大なる炉を無数に置き、その熱でもってフル=オ=アックとその眷属の産み落とした魔の卵を孵化させる。それこそがエ=トゥドゥの役割であり、最後の戦いによって海の底が貫かれるまで炉の火が絶える日は無い、と伝承は語る。
今日も元気にお仕事中~、ア、ソリャソリャ。
おっと、お久しぶり。こうして会えたのは大体一週間ぶりぐらいですかねぇ? 現在地は地球じゃないので、正確な所は分かりませんが。
うん? 誰に向けての発言かお分かりにならないようで。 貴方ですよ、あ・な・た。進行形で私の話を聞いて(読んで)くれている貴方ですよ。
今回から“メタ発言”のタグを付けたお陰で、自由にメタな台詞が吐けるになったんですよ~。
超感謝です。(作者が)
この話の構造上、視点は基本的に私限定で、しかも説明(被説明)キャラを出す予定はないので、メタ発言がないと状況がさっぱり解らないことになりそうでした。
超感謝です。(作者が(本当に大事な事は何度でも言いましょう))
では、改めてご挨拶を。
どうも、お久しぶりで。現在のところ名無しの権兵衛たる主人公です。ま、『人』ではないんですが。
前回の最後と言うと・・・アレですね。あの世っぽい場所で他人の話を遮りまくりのジジィと出会った私が、仕事を引き受ける証明として、拳銃を咥えて自分の頭蓋を中身ごと吹っ飛ばした場面ですか。
それでしたら、やはりその続きから話を起こすべきでしょうねぇ。
ちと長くなりそうですが、しばらくは移動時間なので物語は進行しませんし。丁度良いでしょう。
さて。前回の最後にブラックアウトした私が再び意識を取り戻した時、それまでとは異なる場所に自分がいる事に気付きました。
草木の一本も生えぬ、剥き出しの岩山が幾重に重なり―――
その上には山よりも高く聳え、轟々と吼えるように鳴動する炉が幾本も焚かれ―――
頭上を見上げれば、黒々とした煙が炎を照り返して真っ赤に輝く―――
とまあ、周囲を見渡してみると、有り体に言って地獄としか思えないような光景が広がっていたんですよ。
そして目の前には鬼、ではなく黒い靄が人型になったような存在が立って(?)いました。
もちっと詳しく描写すると、空中に浮かんだフード付ローブの中にもやもやとした黒い煙が漂っていた、といった所でしょうか。
これはアレですね。ちょっと凝ったファンタジーに登場するレイス(と呼ばれている事が多い)の同類でしょう。
所謂ゴーストが死者の無念を源としてこの世に現れ、その無念を晴らす為に行動するのに対し、明確な意思と悪意をもってこの世に舞い戻り、悪魔や死神の手先として人に襲い掛かる。それがレイス(と、作者は理解しています。メタですねぇ)。
そのレイスさん(暫定)のフードが向かって右から、私を通り過ぎ、向かって左までゆっくりと回転(なんですよねぇ、多分。回転と言うと360度以上の運動を言いたくなるんですが、数学としては二分の一回転とか五分の三回転とかいう表記が許されるからには、目視による推定三十度未満の回転軸を固定した運動も、立派な回転ではないかと思います)しました。
因みに。以上の文章を端的に言い表すと“見渡した”だけで済みそうですよね。
でもね、眼が無ぇんですよ、眼が。眼球が無い以上、見ているかどうか分からねぇじゃないですか。
だから“見渡した”なんて決して口にしないんですぜ、あっしは。
なら“見渡した、ような気がした。その黒い靄が漂う、人ならば顔に当たる部分にもしも視線を発する器官が有ったとしたならば”とした方がよっぽど文章として熟れていそうでしょ?
でも、言いません。
私の性格が捻くれているからです。
歪んでるんですよぅ、あっしはぁぁっ!
・・・・さ、馬鹿話を続ける馬鹿の振る舞いは疾っとと止めて本筋に戻りましょう。
とまあ、ゆっくりと頭を巡らせたレイスさん(暫定)は私達に向けて『話しました』。
『お前達は一度死んで、この地で生まれ変わった。二度目の死を迎えたくないのであれば、文句を言わずに働け』
うん、顔がブラック(黒い靄)なだけはありますね。並大抵のブラック企業を超える台詞です。
と言うか、まあ、奴隷宣告以外の何物でもないような気がします。
私にとっては十分に予想の範疇ではありましたが。ま、あんな胡散臭い存在の紹介による仕事ですからね。真っ当な保障など有る訳がないでしょう!
しかし考え無しという奴は何処の土地に行ってもいるようでして、明らかに怒気を発したみすぼらしいレイス(暫定)が何体か私達より偉いレイスさん(推定)に詰め寄りました。
・・・んー、主観視点からだと話が分かりにくいですね。では、少しばかり時間を巻き戻して俯瞰描写を差し込んでみましょう。
私が目を覚ました場所は、地獄と呼ぶに相応しい場所だった。
草木の一本も生えぬ、剥き出しの岩山が幾重に重なり―――
その上には山よりも高く聳え、轟々と(以下略)
その一角、山々に囲まれた井戸の如き谷底を、一体の異形が見下ろしていた。
いや、異形と呼ぶには当たらぬのやもしれぬ。なんとなれば、それに定まった形などありはしなかったのだから。
その体を成すのは煙か靄か。この薄暗き土地においても明確に世界と色を分ける真黒い体は、肉も骨も持たぬ気体の集合によって形作られていた。
本来ならばたちまち空気に溶けてしまう粒子の塊は、まるで構成分子の一つ一つに意志が宿っているかのように決して互いから離れず、流動すれども隙間を生まない。
更に驚くべき事に、異形は服を身に付けていた。元は一枚の布を裁ち、ただ縫い合わせた様な粗末なローブではあるが、たしかな重みを持っている。その重みをものともせず、異形の体はしかと存在していた。
その異形の見下ろす谷底に、異変が起こる。あるいは既に起こっていたが、それと分かるほど異変が進んだか。
岩と、ただ砂ばかりの痩せた土地から、黒い気体が少しずつ噴き出している。
噴き出すばかりではなく、空中に淀み、徐々にその体積を増す。その様な塊の数、およそ十数。それらが一定の大きさにまで膨れると、気体の噴出は止まった。
やがて無意味に漂う筈の気体に何らかの意志を持った動きが見られ始めたとき、見下ろしていた異形は前へと進み、声なき声で宣告した―――
とまあ、こんな感じですか。要は服を纏った黒い靄の足元に単なる黒い靄の塊が幾つもあって、しかもそいつらには意志が宿っている。短く言えば、これだけになってしまいますねぇ。
さて、話を戻しますと、上から目線の言葉に食ってかかったレイス(推定)、もとい下っ端レイス達(面倒なのでレイスに統一しちゃいます。設定を明かすと、この作品では一般名詞の統一はさして重要ではなかったりします。詳しい解説はいつかどこかでする予定です、作者は)。
気持ちは分からないでもないですが、それが許される状況かどうかも考えるべきでした。怒りの声、というか波動を発した下っ端レイスに、上から見下ろす上から目線の上司らしきレイスさん(以下、上役レイスで統一)。
これで人間だったら冷たく見下ろした、とか表現できるんですが、いかんせんのっぺらぼうの上役レイス。きもち首を傾げたかな、ぐらいの変化のあと、体(つーか、靄)の一部を前方に動かして、
警告もなしに、伸ばした靄で詰め寄った下っ端レイス達を貫きました。
しかしその光景を見ても俺は微動だにしなかった、なんて言い切れたら格好イイんですが、それは無理でした。ちと残念です。
予想の範囲内とはいえ、やっぱり急に動かれると驚きますねぇ。
え? 貫かれた連中ですか? 文字通り雲散霧消して消えましたよ。過不足無く、ゴミに相応しい末路だったので、敢えて言及しなかったんですが、述べておいた方が親切でしたかね?
(そうそう。私は基本的に計算できない馬鹿には冷淡です。私は強い正義感の持ち主や目先の利益『だけ』を追い求める悪党は概ね大嫌いですが、それ以上に憎悪しているのがいわゆる熱血タイプです。静かに闘志を燃やすのならばいざ知らず、傍から見てそれと知れるようなタイプは、漏れなくきっちり不幸にするので(確定)その心算で読み進めてください)
(でまあ、少々メタ視点を導入すると)程度の差こそあれ、それぞれに緊張感を漂わせる下っ端レイス達に、上役レイスはどこか気だるげに言葉を続けました。
で。本来の筋ならばここで上役レイスの台詞が入るんですが、たいしてひねりのある台詞回しでもないのでさくっと箇条書きで処理しちゃいます。
その1。私達(下っ端レイス)は全て一度死んだ身である。よって人権など絶無。名前を含めた全ての個人情報も認められない(ですから最初に言ったように、現在の私は名無しの権兵衛です)。
その2。現在地はいわゆる地獄とよばれる空間であり、私達の仕事はここに送られてきた魂を加工する事である。基本的に魂は生前の姿を保っているので、“その形を壊すことが”加工方法となる(イヤッホゥ!)。
その3。この地獄は複数の世界と繋がっている(請け負っている、と言っていましたが)ので、顔見知りと出会うかもしれないが、文句が言えると思っているのか(冒頭の文章ですか? ブラフですよ、ブラフ)。
その4。定期的に魂を配給するから、まずは加工しろ。加工したものを一定量収めたら、残りは好きにしていい。それが生命線兼給料となる。当然の事だが、一定量に足らなかったらその場でクビ(を切断し、死体は他の連中に下げ渡す)となる(要は規定量まで納めれば、あとは稼ぎ放題ということです。もちろん配給される魂だって限りは有りますが)。
その5。最初の仕事に慣れてきたら別の仕事も斡旋するし、待遇も少しはよくなる(慣れてきたら、てのがポイントです。いつ慣れるかって? それは上役の判断次第というのがセオリーですからねぇ)。
その6。加工済みの魂(フローと“私”の耳には聞こえました。つまり以降はフローと呼ぶ訳です)は私達の生命線であるが、同時に通貨でもある。具体的な使い道はこれから分かる(ま、使用方法筆頭は上役への賄賂となるんでしょう)。
その7。その6に関連して、フローの使い道の一つに転生の必要経費がある。それなりのフローを渡せば、次の人生(人に限らないようですが)を有利にできる(例によって、具体的な量は全く触れられませんでした)。
・・・箇条書きにしたのに、結構な分量があります。これで一々会話文やら情景描写やらを組み込んでいたら、どれほどの量になっていた事でしょう。メタ視点を導入しているからこその力技ですよね。
超感謝です(作者が(本当に大切な事は何度でも言いましょう、と人材育成系のハウツー本に書いてありました))。
それでも少々長過ぎるような気もしますね。例えるなら、自分専用のファイルに挟んでおくには適切でも手帳の最初にメモしておくには不適切なような、そんな感じに長過ぎるきらいがあります。
と言う訳で、更に簡略したものを書いておきます。
・ここは地獄。俺は奴隷。
・仕事は拷問。例外は無い。
・給与は歩合。ノルマに届かなきゃ死ね。
・金さえ貯めれば、勝ち組生活が待っている。
実にブラック。自分で書いといてナンですが、ビックリする位ブラックな文章に仕上がっています。
特に二行目がヤバい。仕事の内容が拷問、のつもりで書いたのに、仕事をしていることが拷問、みたいに読めます。
ただまあ、後者の意味でもそんなに違わないかもしれません。
同期、という表現も変な気がしますが、私と同時期にこの世界に出現した下っ端レイスの数は凡そ十体になります(一番に上司に文句を言って消されたのは除く)。
この十体は私を除いて全滅。更に、これ以降も4周期以上自我を保てたのは数える程しかいないという状態です。あ、周期とはこの世界における基本的な時間単位のことですね。
後ほど詳しく説明する機会もありますが、私達は一周期ごとに未加工の魂を渡され、勤務に就くことになっています。
で、その周期内にノルマ(規定量のフローを収める)を達成できなかった場合、即座に処刑。一切の情状酌量はなし。これでほぼ半分が消え去ります。
また、業務内容が業務内容なので精神を病むのも多く、そうなると自閉して精神を防護するか、業務に過剰に適応することとなります。これで残りの半分以上が事実上の脱落。
結果として脱落率が九割を越える、比喩が比喩にならない地獄の職場となっています。上の方もそれを見越して、一周期ごとに十五体前後の新人を呼び出していますが。
以上、長々と説明させて頂きましたが、最後にもう一つだけ。
前回までとは私の一人称やら口調やらが異なっていますが、これはミスではありません。
こうして他人(例によって人間じゃありやせんが)に仕える身になった以上、言葉遣いやら態度やらを改めるのは当然の行為です。少しでも自分に有利な環境を構築する為、可能な限り印象は操作したいですし、生き残っている連中は私に勝るとも劣らぬ、腐れ外道のキ(ピー)イの反社会性人格の、とにかく危険人物の揃い踏みな訳です。用心し過ぎて、し過ぎるということはないでしょう。
ま、本音を言うと、私自身の茶目っ気も多分に原因に含まれていたりもするんですが。
あるいはもっと下っ端感を出す為に~っスと語尾を変化させてもいいかも知れません。現在地は地獄ですし。投げられても爆発しませんし、鳥類風味の皮をかぶっている訳ではありませんが。
ん、あー、あー、あー。コホン。では、しばらくこの喋り方でいくっス。よろしくおねがいっス~(思った以上に楽しいですよ、コレ。無責任さが行間からにじみ出るようで、意外とお勧めです)。
それではいいかげん物語を進めるっス。改めて状況説明をさせて貰うっスと、一仕事終えた俺がフローの入ったバケツを上司の所に持って行く途中だったっス。
物理的な重さなんてのは感じないんスが、なんとなく足が重い感じがするっス(くどいですが、今現在の私は気体状の物質で構成されているので足はありません。単なる比喩表現です)
理由は分かってるっス。仕事に飽きてきたんス。(作者注。ここから先、耐性が無い人はあまり見ない方がいいかもしれません。少なくともR-15指定クラスの残虐表現が続きます)
最初は凄く愉しかったっス。正気を保ったまま体を貫通する穴を幾つ開けられるかとか、指の先から順に関節を外して最終的に頚椎脊椎も外すと全長がどの位伸びるかとか、わりと初歩的な拷問(による殺害)しかしていなかったんスけど、それでも充分愉しめたっス。
でも、直に飽きてきてしまったんス。だって俺達に配給される程度の魂では簡単に壊れてしまうんスから。
元々反応が薄いなとは思ってたッス。一度に配給される魂は人間の形で二十体前後なんスが、目の前で他の連中が殺されても悲鳴も怯えた様子も見せないんス。どれだけ反応が薄いか一回試そうと、瞼を切り落とした上で眼球を眼窩の中で押し潰してみたんスが、そん時も少し身じろぎをしただけでこれと言った反応は無かったっス。しかもその後には、僅かな反応も無くなってしまったんス。
これじゃ死体と変わらないっス。死体をどうこうする趣味は持っているっスけど(ええ。色んな方法で楽しめますよね、死体は)、愉しむためのモノを持ってなければ悶々とするだけっス。
それに俺は肉体的に痛めつけるのも大好きっスけど、精神的に痛めつけるのも大好きなんス。なのに連中ときたら怯えもしなければ、多少傷つけただけで反応もなくなるんス。これじゃ何の面白味も無いっスよ。
愚痴を言った所で、稼がないと消えてしまうんスけどね。
とはいえ、メンド臭いっス。早く別の仕事、っていうかもっと活きがいい魂を扱いたいっス。
そんなこんなを思っていたら、俺の担当上司の居る炉に着いたっス。
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