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プロローグに代えての饒舌(冗長)なる前口上

感想、お待ちしています。

 さてさて、俺の話を聞きたいとは物好きな。

 数ある物語の中を、暇に手を引かれて歩き回っているうちに

 俺のところにまでに辿り着いてしまったと言うのならば―――



 今すぐ引き返したほうが、そちらにとって都合がよかろう。

 

 俺はそう思うがね。


 しかし自己責任で読むのであれば、これ以上は強く言えないが。



 なんだってそんなことを言い出すのかは知っていると思うが、

 一応、念のため、万が一を恐れて、言わずもがなではあるが確認しておこう。


 この話には<15歳未満お断り>のタグが貼られている。

 つまりは、まあ、そう言うことな訳だから、

 俺の所に来た時点でソレは覚悟している、と考えさせて貰っている。

 そこに異見(意見じゃないぞ?)を出されると、俺としてもどうしようもない。

 分かり合えないのは残念だね、とでも言って、肩をすくめて、諦めて、

 そして不貞寝でも決め込むとしよう。


 だがしかし、

 ソレは十分に覚悟済みオア(or)理解済みであると言うのならば、

 俺は喜んで俺の身に起こった出来事を、


 語ることなんてしないだろう。



 ………ん? 何だい?

 誤字か脱字じゃないかって?


 いやいや、俺は確かにこう言ったのさ。


『語ることなんてしないだろう』


 とね。


 おっと、誤解しないように。

 俺は話さないとは言っていないし、話す気が無い訳でもない。


 ただ最初にも言わせて貰ったように、それなりの準備もなしに足を踏み入れるのはちと危険すぎるのではないかと。

 ようするに“上級者向け”の話だと俺は考えているんでね。


 じゃあ、具体的には何がどう“上級者向け”なのかって?

 そりゃまた随分と身も蓋もない科白だ。


 ストレートに言ってしまえば要らぬ波風が巻き起こるのは疾うに視えている。

 だからこそ、外堀を埋めて搦め手を塞いで、真正面から注意を促してるんじゃないか


 さて話は変わるようだが、

 ってか、実際に変わっているし、変えているんだが、


『平凡な僕/私はある日突然何かの力に目覚めて、大冒険を繰り広げる』


 そういった類の想像(てか妄想)を、あまり好意的でない言い方をすれば中二病患者を、

 今この文章を呼んでいる方々はどんな風に見ていられるのかな?


 まあ、鼻で笑った方から赤面した方、現在進行形で罹患中の方までいるのだろうが、

 俺にとって、彼らはあまりに無邪気で、ひどく羨ましい存在だ。


 誤解しないで欲しいのだが、俺は皮肉を言っている訳じゃない。

 純粋に、彼らのその無邪気さに羨望を抱いている。

 それゆえの発言なのだから。


 彼らの想像(妄想)によれば、現時点の彼らに足りないのは特別な力だけだ。

 だからその特別な力さえ手に入れてしまえば、彼らは大冒険を繰り広げ、

 あまつさえ英雄にすらなり得る権利までも、持っていると想像(妄想)している。


 いやはや、何という無邪気さだろう!


 特別な力を得るための代償(努力や修練も込み)や、

 力を得たがゆえの苦悩(周囲の反発・利用しようとする者等々)、

 力を行使した結果に対する責任(俺達の旅は永遠だ!)。


 そういったことを最初から度外視している事を指して、俺は無邪気だと評しているんじゃない。


『力さえ手に入れれば、今現在の人格のままでも英雄に成り得る』


 そんな彼らの無自覚な前提を指して、

 俺は彼らを無邪気と呼ぶ。



 ここまで言えば、


『確かに英雄的行為を可能性として行える事と、実際に行うとでは大きく異なっている。

 それを言っているのだな』


 と、察する人も多いだろう。



 でも、そうじゃない。


 俺の言ってるのは、もう一段ばかし底に近い場所に在る。



 できるかもしれない事と、できる事の間には、深く深ぁい溝が有るというのは、現実を生きていれば、程度の差こそあれ誰もが身に沁みる。


 しかし『特別な力を持った彼ら』は特別な力を持つがゆえに、易々とその溝を飛び越えてしまう(そこに痺れる憧れるぅ!)。


 では、俺が言う彼らの持つ無邪気さ、とは何かと訊ねられれば、

 俺はこう答える。



『彼らの、彼ら自身の人格への無条件の信頼』だと。


 平たく言えば、

『お前ら、主人公やれるんだ。すげーなぁ』という純粋な賛嘆だ。


 ということは、


 裏を返せば、俺はテンプレ主人公を張れる器じゃないって事でもあるんだが。


 そこんところが“上級者向け”の由縁つーか原因だ。





 と、言いきったとしても、まだ伝わりきっていない方もいるだろうし、

 なにより、まだまだ俺は喋り足りない。



 自身がモノ好きである自覚があるなら、もうちょい俺の口上に付き合わないか?




 オーケイ。付き合ってくれてありがとう。


 これからはちょっと口調を変えて、ねっとりこってりでやってみるか。



 あー、うん、コホン。

 また話を変えるようだが、世の人の嗜好の中には、多数派にはなり難いものが多々存在している。


 費用面がネックとなっているものも数有るが、純粋に趣味に合わないというものも多い。娯楽そのものの数が少なかった時代ならいざ知らず、現代はそれこそ数百を超える数の娯楽がひしめきあっているんだから、当然と言えば当然の話だ。


 そんな事は一々言われずとも理解しているって?


 そうかもしれない。でも、そうでないかもしれない。


 例えば性的嗜好などはその最たるものだろう。


 俺は文章に置けるマゾヒズムに基づいた露出趣味といういわく言い難い嗜好をそれほど大量に持ち得ていないから具体的事例を列挙しないが、ま、アブノーマルなプレイなんて意外とよく知られている。わざわざ挙げる必要もない。


 だが、知られているという事と、許容されている事は異なっている。

 大いに、異なっている。


 本日二回目の“例えば”だが、


 自分の隣に座っているクラスメートや同僚がそういった趣味の持ち主だったら、

 そうではない他の人間と同じように付き合えるだろうか?


 あるいは同じ電車を利用する乗客でもいいし、行きつけのコンビニの店員でもいい。


 もっと踏み込んで何年も付き合いのある知人や友人、家族でもいい。


 そういった、自分の目の前で存在を確かめられる人物が社会的にはマイノリティであり倫理的には眉を顰めざるを得ない様な趣味・嗜好を持ち合わせていたとしたら、


 そしてその事実を知り合った当初から知っている、つまりはそういった人物として知り合った、


 のではなく、


 知り合ってから彼もしくは彼女の知られざる一面として知ったのならば、知ってしまったのならば、


 

 それまで変わらぬ態度で接し続けられる人間はどれ程いるだろうか?



 と、



 ここまでくれば俺の言わんとしている事がだいたい見えてきた




 と、



 先走る方も無きにしも非ず、と言ったところだろうか。




 これもまた本日二回目の“おっと、誤解しないように”

 俺はその想像が間違っているとは言っていない。



 しかし、だ。



 その想像が果たして俺が言わんとしているレベルにまで到達しているかと言うと――



 疑問と言わざるを得ない。


 俺はそう思うがね。



 おや? これもまた本日二回目の台詞だったか。


 とと? “本日二回目”は三回目か。


“本日二回目”が三回目というのは、何だか諧謔味が感じられるような気がするが、それは果たして俺だけなんだろうか?


 この感性の在り様について、今しばらくとっくりと話し込んでみたい気がするが、それはやはり脱線が過ぎるとも思える。


 んん? 気付いてみれば、俺はこの短い間に二回も“気がするが”なんて言ってるじゃないか!


 これはこれはいかんな。実に遺憾な事態で、これは弁解するにはどんな文言が相応しいか、ちと考え込んでみよう。




 っとっとっと。いやはや気分を害されたなら素直に謝罪しましょう。如何せん、こんな風に立場を考えずに話せる随分と久し振りで、調子に乗ってしまいました。まったくもって申し訳ない。



 本当に、本当ですよ? 



 まあ、こんなつまらない駄洒落をいつまでも続けては、俺の品性にまで疑問符が突き付けられてしまいかねない、と元から大した品位を持ち合わせていないくせに矢鱈と偉そうな、傲慢なのに自らが傲慢であることを気付いて、しかもその上で敢えて傲慢さを取り繕おうともしていない程に傲慢な俺は、愚考すると表面的にだけ謙虚な言葉を用い、その実――




 いや、もうそろそろ止めておいた方が好いな。


 いくらタイトルに“冗長な”と入れておいたとしても、そろそろ文章上として演出の枠をはみ出して、ただ人に疎まれるだけの悪趣味に堕している。


 たとえ単なる嫌がらせだとしても、そこには洗練が必要だ。そうは思わないか?


 つまり、だ。つい先程の糞の以下の駄文に付き合って下さった方々には、それ相応の誠意を見せるべきではないかと、俺の美学は命令している、という事だ。


 だからまずは謝意を。俺の下らない話を聞いてくれたお礼に。


 続いては警告を。これから始まる、この度の過ぎた悪意が詰め込まれた話について。



 そう。警告だ。


 散々冗談めかしてきたが、結論は単純。



 この話は悪意が強すぎる。



 もちろん、人の目に触れるからには、それなりの限度を設定するつもりだ。

 しかし、その限度が一般社会のそれとどれほど乖離してしまっているか、俺には見当が付いていない。



 だからこその警告だ。



 とは言っても、これだけでは悪意の程度は微塵も伝わらないだろう。


 よって、軽いテストを試してみたいと思う。なに、難しい代物じゃあない。


 次の文章を読んで、どの様な感想を抱いたか。それだけでいい。


“ある日、殺人事件が発生した。白昼堂々と被害者を路上で呼びとめた犯人は、隠し持っていた包丁で腹部を突き刺した。

 その後、すぐに周囲の人間によって犯人は取り押さえられたが、被害者は出血が多く、ほぼ即死に近い状態だった。

 犯人は被害者の過失によって家族を喪っており、復讐が動機とみられている。”


 さて、あなたは犯人に対してどんな感想を抱くだろうか。








 では、答えというか、これからの物語に適した人物像が抱きそうな感想を言おう。


 別にこの答えと違っているからといって、読むなとは言わない。


 ただこの解答に違和感を抱くのであれば―――



 あまり向いていないのは確かそうだ。









 解答 『とても慈悲深い犯人だ』

 解説  一撃で殺すなんて、優しすぎる。



 いかがだろうか? よくテレビのコメンテーター等が殺人事件を評して“残酷”だの“残虐”だのと言っているが、相手を簡単に死なせる行為のどこが残酷なのだろう。


 歴史を少しでも振り返ってみれば“苦痛の少ない速やかなる死”は、むしろ恩情としての刑罰だったというのに。




 要するに自慢以外の何物でもないが、

 俺の倫理感や人間性は確実に底辺に位置している。


 世紀末ならば胸に七つの傷を持つ男に殺され(汚物は消毒だぁ!)、


 江戸時代ならば旗本の三男坊に「成敗!」と言われ(出あえ、出あえ!)、


 デーモン族が復活すればアモンの肉体を持つ人間に殺される(悪魔は殺してない!)、


 その手の類の人間だ。



 鬼畜、外道、畜生、ゴミ、人非人、ケダモノ、人間のクズ、ウジ虫にすら劣る、吐き気しか催さない、今すぐ死ぬのが世の中の為、お前なんかニンゲンじゃない、声をかけるな汚らわしい、生まれてきたのが貴様の罪。


 なんともまあ、ひどい言葉の数々。

 もしも俺にこんな罵倒が浴びせ掛けられたら、


 胸を張って、

 足を広げて、

 腹の底から、

 満面の笑みで、


 「その通り!!!」


 そう叫び返すしかないじゃないか。だってそれは事実なんだし。



 だからもしも俺が何か特別な力を手に入れたら、

 人類の幸福の総量が減少に向かう様に行動するだろう。


 そう考えると、やはり特別な力を望む連中は無邪気としか言いようがない。

 だって彼らは多分、自分達は世界の幸福に貢献できると考えているんだぞ?

 世界の幸福を心のどこかで願いながら、それに数十倍する強い想いで

 他者の不幸を心待ちにしている俺にとっては眩しくすらある。


 そんなに眩しいと握りつぶしたくなるのが(外道の)心情ではあるが。



 さてと、長々と話させてもらったが、この話とは詰まるところ、ある事を契機に不思議な力を手に入れた俺自身の物語となる。


 先に結末を言ってしまえば、

 物語はハッピーエンドを迎える。


 そう、俺にとってのハッピーエンドを。


 それが何を意味しているか、理解できる方も理解できていない方も、これから先は自己責任の領域だ。

 

 最初に言ったようにね。


 ただし俺の持つ最小限の良心の囁きに従えば(小狡い責任逃れを考えるなら)、

 この場合の自己責任の意味を明確にしておかなければならない。



 ここでの自己責任とは、


 この先の内容を知った事による閲覧者が受けた精神的なショックに対してではなく、


 この様な内容を閲覧した事を周囲の人間が知ってしまい、結果として社会的・人間的評価を著しく下げてしまったとしても、


 それは閲覧者自身の責任に帰せられるべきである、という意味になる。



 分かり易く言えば、


 顔見知りも多くいる場所で失禁と脱糞を派手にやらかしたとか、


 こっそり所有していた犯罪級のポルノ画像がメールのアドレス帳に記載されている全人物に配信してしまったクラスの、


 自殺が有力な選択肢として出現するような状況に陥ったとしても、

 俺は責任を負いかねます。


 という宣告だ。



 ソレを理解した上でなおも俺の話を読むのであれば、


 どうぞお好きなようにされるがいい。




 以上を踏まえて、最終警告だ。


 これは残酷である事を誇りに思う物語だ。


 他者を不幸にする事が歓びである物語だ。


 人間の持つ尊厳を踏みにじる為の物語だ。



 全ての文章、全ての場面に残虐な表現が溢れている訳ではない。


 しかし僅かな幸福は、更なる悲劇の為の生贄とされる。その為だけに幸福は存在する。


 そういった物語なのだ。



 覚悟を決めるには十分な情報を与えたと思う。


 それでも続きを愉しみにしてくれると言うのであれば。



 そんな外道な貴君に無限の感謝を。


 同胞を除く、全ての人間から忌み嫌われる世界に生きる者と出会えた喜びの対価として。


 慈悲深き邪神<ピウス>の名において、あなたに捧げる。




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