お姫様がみんな美女だと思うなよ
私は転生者だ。
中世ヨーロッパ風の異世界ファンタジーの世界のお姫様に転生した。
そんな世界のお姫様に転生したらさぞかし美しくなれると普通は思うじゃん?
でも、美的感覚は人それぞれで、この世界にも醜いものを美しいと言う人もいたりする。
それがまあ、私の父バルガス王だったのだ。
ガルドニア王国の姫レティシアは年頃になり泣いていた。
レティシア、それが私の名前。
絶対に美女以外が名乗ってはいけない名前だ。
「今日も、我が娘は、なんて美しいんだ!」
父は私を絶世の美女と信じて疑わない。
超絶イケメンの父の娘なのだ。
美女に生まれるに決まっている。
なのに父の横に立つ母の遺伝子が強すぎる。
「ミレーヌに似て、レティシアはなんて美しいんだろうね」
父が横の母に極上の笑みで同意を求めると、母は笑ってうなづく。
その笑顔の醜いことと言ったら……。
控えている使用人が吐き気を催すほどだった。
その笑顔は私が笑っても出来るのだ。
母を絶世の美女と疑わない父だけが極上の笑みで満足している。
「僕がこんなに不細工に生まれてしまったのに、君が愛してくれて、こんな美しい娘に恵まれて、世界一幸せな王になれた」
ズレている……。
ガルドニア王国では王と王妃が幸せに暮らしている。
泣いてる娘を尻目に。
◆◇◆
そして、父が持ってくる縁談は不細工ばかり。
「レティシア、すまない、こんな不細工な男しか紹介できなくて」
そう言っておいて行く肖像画は超絶イケメンで、身分の高い男ばかり。
父の美的感覚では不細工に見えるらしい。
こんな超絶イケメンと結婚できるなら、願ったり叶ったりよ。
前世で婚活20年やってた私は思う。
けれど、
「姫様の肌が眩しすぎて直視出来ません……」
「細い腕が可憐すぎて折ってしまいそう……」
「大きな瞳に見つめられたら心臓発作が……」
と断ってくる。
「確かに、レティシア姫の美しさを前にしては、気後れしてしまうだろうな。私もミレーヌに話しかけるだけでも緊張した。王子という身分があったから、なんとか勇気が出せた」
王は納得したように、家臣に隣国の王子たちを当たるように命令する。
え!? 私のこの美しさ、輸出されちゃうの!?
外交問題にならないだろうか……。
不安を抱えていると隣国のエドガルド王子から会っても良いと返事が来た。
父王はとても満足しているけど、私は、
「絶世の美女と聞いたのに、醜すぎる!」
と言われて、戦争の火種になる未来しか見えない。
◆◇◆
俺はエドガルド、王子に生まれた転生者だ。
気づいた時にはこの世界の美的感覚のおかしさに絶望した。
ブラッド・ピット似の父王と、アンジェリーナ・ジョリー似の母王妃が不細工と言われている世界。
絶世の美女と紹介された相手は不細工ばかり。
そんな中で隣国の王が溺愛している絶世の美女だというレティシア姫を紹介される。
一体どんな不細工なのかと肖像画を見たら——!
「オードリーヘップバーンかマリリン・モンローのように美しい……!」
——見合いの席で不細工な王子が私を褒めた。
前世で聞いたことある美女の名前だが、割と違うぞ、その二人。
けど、私は鏡を見てみる。
そこにいたのはその二人とは似ても似つかない、
「……グレース・ケリー」
だった。
その瞬間に私の頭には前世で見た映像が洪水のように膨れ上がって行く。
映像記憶が弱い私は気づかなかったけど、浮かび上がって来る映像で思い出す。
超絶イケメンと言われていた父は不細工に、醜いと言われた母が絶世の美女に見えた。
そうだ……私って美女じゃん!
目の前の不細工だと思っていた王子はまるで、レオナルド・ディカプリオかキアヌ・リーブスかって……割と違う二人だな。
とにかく前世で言う超絶イケメンだった。
「エドガルド王子も転生者なの!?」
王子はうなづいた。
「やっと、まともな美的感覚の持ち主に会えた!」
前世の美的感覚を取り戻した私はエドガルド王子と婚約した。
父の美的感覚の方が正しかったのだ。
「レティシアとエドガルド王子! ああ! なんて美しい二人なんだ!!」
前世の記憶を取り戻した私には醜くみえる父王が私たち二人を見て喜びに悶絶する。
使用人たちが呆れている。
私はこの世界で不細工(絶世の美女)として生きて行く。
父王と王子という、権力者だけがその美しさを知って、私を溺愛する。




