第七章 傷
「力が大きくなれば責任も大きくなるって言うだろ?俺が行くわけにはいかない。お前は金属でできてるんだから、弾丸くらい防げるだろ」
孫ジャックは真剣な面持ちでタパイに言った。
「くそったれ」
タパイは手にした銃を握りしめ、逆関節の両脚で地面を強く蹴り、背後の連中に向かって突進していった。
正面から飛んでくる銃弾が次々とタパイの姿を追い、ついに反対側から罵倒の声が沸き起こった。
「ハハハ!成功だ!」
孫ジャックは撃ち合う両陣営を見て、興奮して拳を握り締めた。
「プスッ」
孫ジャックの笑顔が一瞬で凍りついた。
震えながら下を向くと、血まみれのアークブレードが腹部から突き出ているのが見えた。刃が抜かれると共に、熱い血が噴き出した。
腹を押さえた孫ジャックは振り返ったが、誰もいない。血のついた刃が宙に浮いているだけだった。
彼の視線の下、両腕が金属義体で首に逆十字の烙印を持つ坊主の男が冷笑し、擬態を解除して姿を現した。「batard」
「この野郎め!」
孫ジャックは怒鳴りながら、手にした小銃を挙げた。
だが閃光が一瞬走り、彼が銃を握っていた右腕があっという間に三つに切断された。
時間が一瞬止まったかのように、空中に飛び散る骨髄を見て、孫ジャックは義体と肉体の絶望的な差を痛感した。「俺、死ぬのか?」
次の瞬間、時間が元に戻り激しい銃声が響き、左側から飛んでくる銃弾が坊主を阻んだ。
血まみれになった孫ジャックを一瞥し、男は冷笑して擬態を起動し、姿を消した。
孫ジャックが倒れる寸前、小銃を持ったタパイが駆け寄り、彼を戦場の外へ引きずり出した。
タパイのおかげで両陣営は激しく撃ち合い、一時的に彼らに手が回らなくなっていた。
「俺、死ぬのか?」
遅れて痛みが押し寄せ、意識が朦朧となる孫ジャックが途切れ途切れに呟いた。
タパイは孫ジャックを銃弾の届かない窪地へ素早く引き込んだ。「死なない!」
手を伸ばすと、先ほどコンピューターに侵入した細い光ファイバーが孫ジャックの体内へ素早く入り込み、破裂した血管を急速に縫い合わせ、出血量が激減した。
だがそれだけでは足りない。孫ジャックは今にも出血性ショックを起こしそうだった。
タパイは即座に感応線で孫ジャックの血液型を測り、周囲を素早くスキャンして、ボロボロの死体を引き寄せた。感応線を血管に挿すと、半透明の線は次第に血赤色に変わり、もう一本が孫ジャックの体内へ挿入された。
「待……待て!俺はまだ生きてるぞ!」
相手はもがきながら目を開けた。
タパイは拳を挙げて彼の頭部を強く殴り、頭蓋骨を陥没させた。「お前はもう死んだ」
温かみの残る血液が孫ジャックの体内へ急速に流れ込み、青白い顔に血色が戻ってきた。
タパイはレーダーで周囲の有用なものをスキャンし、死体から見つけた鎮痛興奮剤を孫ジャックに注射した。彼はやっと目を覚ました。
目を開けた孫ジャックは雨の降る灰色の空を見て、思わず罵った。「クソッ!」
孫ジャックはタパイを連れてきたことを心底幸せに思った。この古代ロボットがいなければ、今頃命はなかっただろう。
「早く逃げろ。遅くなれば何も残らない。抗菌薬は持ってないし、傷が酸性雨に濡れてる。医者を見つけなければ、長くは生きられない」
タパイは言い終わると、孫ジャックを支えて立ち上がろうとした。
「待て」
痛みを堪えた孫ジャックは、頭の凹んだ死体を見て足を止めた。
この男も傭兵のようだ。両腕の黒い義体はテクノロジー感溢れ、服は銃痕でボロボロになり、惨めな姿だった。
左頬にはドクロの刺青が彫られ、乱雑なドレッドヘアに大きな鼻輪をつけ、どう見ても悪人だった。
孫ジャックは空っぽの右腕を見て、死体の金属義肢を眺めた。「これを俺につけてくれないか?」
先ほど命を奪おうとした坊主のことを思い出し、孫ジャックの怒りは収まらなかった。ただ義体がないから虐げられているだけだ。
孫ジャックは単なる憤りではない。相手はまだ近くに隠れているかもしれず、今は戦闘力を回復する必要があった。
「義体を多くつけるとサイバー精神病になるぞ」
「今の状況でそんな話をするか?生きてここから出ることが先決だ!」
周囲の銃砲音に、孫ジャックはもう我慢できなかった。こんな環境で片腕がなければ廃人同然だ。
「分かった、お前がボスだ」
タパイの指は素早く工具に変わり、相手の金属右腕を取り外し始めた。
鎮痛剤の効き目が切れる前に、肉片と骨折部を素早く切断し、つや消し黒の金属腕が孫ジャックの体に移植された。
神経に響く痺れが走り、孫ジャックは右手が再び動くことに気づいた。
金属の腕を目の前に掲げ、ゆっくり開いて閉じる。手が戻ってきた感触がした。
「キーン」
アークを纏った刃が前腕から飛び出し、刃には孫ジャックの興奮した表情が映った。
「カチャカチャ」
刃は素早く収納され、五本の金属指が後ろに曲がって腕に張り付き、黒々とした砲口が掌から螺旋状に開いた。
この義体には砲撃機能まで備わっていた。近くの爆発音はこれが引き起こしたものに違いない。
痛みを感じ始めた孫ジャックは地面の鎮痛興奮剤を拾い、太ももに直接注射した。瞳孔が一瞬収縮し、世界が鮮やかに見えた。
「宝を拾ったみたいだ」
行動能力を回復した孫ジャックは残りの鎮痛剤をポケットに入れ、歯を食いしばって立ち上がった。
彼はすぐには撤退せず、先ほどの戦場へ行き、自分を追ってきた連中に向かって数発撃ち込んだ。
遠くの爆発の火を見て、孫ジャックは傷の痛みが和らいだ気がした。
「行くぞ!」
孫ジャックはタパイを連れて立ち去ろうとしたが、震える手が左足を掴んだ。「待……待て!」
孫ジャックが下を向くと、頭が凹み右腕を失った男が上を向いていた。よく見れば、これが自分の右腕の元の持ち主だった。




