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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第一章 境界に立つ者たち
8/79

疑問:少し時間を頂けますか?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

 夕方に薫さんという女性の方が、ボーっと立ちっぱなしの私の体のありとあらゆる場所をメジャーで測りながら、心配そうな顔をしているのは分かった。

そう。分かっていたけど、声をかけられても、返事だけが身体の外に落ちていた…

そうしている内に、薫さんは静かに帰っていった事も覚えている。

そういえばその前には日向さんと秀人さんという双子の子達とも挨拶して、この部屋に案内してもらったんだった。


 部屋はシンプルだがベッドと床にはローテーブル。

そしてそれとは別に机と椅子、更には洋服が入っているクローゼットといった、両親と実家で暮らしていた時の昔の私の部屋を思い出した。

でも、家具はもちろんその他の物に見慣れた物が少しもあるわけではないので、居場所に困り考えることを放棄するみたいに、ベッドに沈んだ。


 明るくなることがなんとなく嫌で、外が既に真っ暗だというのに部屋の明かりはつけられない。

部屋の準備を今日してくれていたからだろう、風を通す為にベランダが少しだけ開いていてそこから漏れてくる風はとても冷たい。

だけど、起きてベランダを閉める気も起きず、静かに布団の中に身を潜める。

あの怖かった筈の静けさが、今は唯一何も要求してこない。

そんな風にどこか安心している事が不思議でたまらないが、そんな事は今はどうでもいい。


なんでここに居るんだろう。


「・・・」

 

 人生って何が起こるか分からないとはよく言うけど、ここまでの事が起きた人間はなかなか居ないんじゃないだろうか?


あの後、スズは確か、こう言っていた。

「山本梓という女性の人生を続けることを前提にした魔法があの家に設置されていた。残念ながら子供も夫も実在は確認できず、あの家の中だけの存在になる。あの家は一先ずはあのままにしているが、魔法使い側に場所を知られている以上、申し訳ないがあなたをあの家に帰すことはできない。」


帰れない?私の子供・夫は実在しない?


子供は二人・・・・


長女は高校生で、私に似て直毛のロングヘア。顔立ちは・・・良かった?


名前は?・・・・あ・・・あ・・・?何かを由来して確か・・・確か?


帰りたい。

誕生日は?


最後に話したのはいつ?


好きな物は?


趣味は?

帰りたい。


・・・・・・・・・・・・・・・・

まって・・・

まってお願い・・・

私には長男も

夫も

帰りたい。


名前は・・・・・


・・・思い出そうとすると、指の間から砂みたいに落ちていく…


さっきこの部屋を見て、実家での部屋の事を思い出したけど

私の母は?父は?兄弟?そんなの・・・・いたっけ?


帰りたい。これはきっと・・・


”   ”、おはよう。朝よー

そう呼ばれていた記憶がある。

懐かしい声だ。

カーテンを開く音と共に、まぶしい光が目に入る。

私は暗闇を求めて、布団の中に潜り込む。


早く起きないと、遅れるわよ!!

優しい声が徐々に大きくなっていく。


まだ眠い・・・・・・・・・・・・


「ん」

「おはよう。お嬢さん」

「・・・・・」


 いつの間にか寝てしまっていたらしい。

答えが出ない事を考え続けても行き詰まるだけだという事はわかっているけど、それを答えがないと答えを出してしまう事が嫌。

そんな筈ない。

ありえない。

そう。

今が夢かもしれない・・・・・・そう。願ってる。

願ってる・・・か・・・・。


目が覚めた今もここは私の家じゃない。

怖い場所から逃げてここにきたのに息苦しい。

ここが現実と認めてしまえば、私の今までのなにもかもがきっとそれで終わり。


 あれ。

部屋に猫がいる。小柄な茶色と白色。

飼われているのか毛並みは綺麗で首には鈴がついている。

ベッドの枕側にあるベランダは、結局閉めないままだった。

きっと、そこから入ってきたのだろう。

だけど今の声はどこから聞こえたんだろうか?


猫と目が合う。


もうこのぐらいならあり得るよね。

常識を疑う余裕すら、残っていなかった。


「・・・・こんにちは」


体を起こし、猫と向き合う。


「はじめまして、私はイザベルと言うわ。」

「はじめまして、山本・・・梓と言います。」


 やっぱり目の前の猫が喋っているようだ。

そして自己紹介から入ったから、そのままいつも通りに返答してしまったけど、私は自分の名前を言う事につい躊躇してしまった。


・・・・・・本当の私は誰なんだろう?


アリス・フォーラス?その、誰かも分からない子なのだろうか?


「疲れているわね。まぁ当たり前よね。」

「そう・・・ですね。あなたは・・・イザベルさんはどうしてここに?」

「イザベルって呼んでちょうだい。私は魔法使いなのだけど。ここでは魔法が使えないからただの猫と思ってくれても別にいいわ。」

「魔法使い・・・」

「ええ。びっくりさせちゃったかしら?あと、勝手に部屋に入っちゃってごめんなさい。一応、声はかけたのよ?」

「まぁびっくりしたけど、いいよ。部屋に入ったのも特に気にしてない。というか色々ありすぎて、これぐらいなら気にする余裕も無いよ・・・・・」


 魔法使いと聞いたところで、本当に反応する余裕もなかった。

ため息交じりに適当に返事を返しているとイザベルはベッドに上がってきて、普通の猫のように毛布の上で丸まる。


「そう。ねぇもし良かったら、何があったか教えてくれない?」

「ん・・・」


 教えて大丈夫なのだろうか?というかこのままで大丈夫なのだろうか?

ここはあの子、スズの管轄下ってことだとは思うけど、イザベルの事はまだ聞いてない。

まだ挨拶できていなかっただけという可能性もあるし、家に来た詐欺師やあのうさん臭い男のような嫌な感じはしない。

でも私の判断に私は自信がない。


でもこれ以上何かが起こったとしても、これ以上に悪くなる事があるのだろうか・・・


「不安よね。大丈夫。私はあなたに危害を加える事はしないし、あなたに何かあればここでは絶対にあの女が来るわ。なんなら、私が居ることぐらい既に知っているだろうし」

「そう・・・」

「梓が話したいことだけでいいわ。言いたくない事や答えたくない事は言わなくてもいいし、今日はまだ整理がつかないなら、今度でも良いわ。」

「・・・・・・・・・・・ありがとう。」


 後で考えればやっぱりまたもや短絡的になっていたと思う。

詐欺師の男を招いてしまった時からどこか抜けてしまっている。

この時にスズでも和さんにでも双子の子の誰でもいいから聞いてみればよかったし、そもそも急にベランダから来たという事は部外者の可能性の方が高かった。

それでも答えの出ない、出したくない状況に私はかなり疲弊していたのだろう。

一人ではどうしようもないこの状況をとにかく誰でも、誰かに話したかったんだと思う。


「・・何から・・・あのね。・・・私は・・・・・」


--それからどのぐらいの時間が経っただろうか。

電車での出来事。

家での出来事。

そして、今まで居ると思っていた自分の子供や夫が居ないという事を言われたさっきの事。

順番も時系列も考えず、頭に出てくる良く分からない事や驚いた事、とにかくここまでの全ての事を黙々と話した。

そして、実際に居るか居ないかを家に見に行く事ができないという事なので、私はどこかまだ「実は居るかもしれない」って願っている事。

でも私自身もその顔も名前も何も思い出せない事。


 自分の思考もごちゃごちゃに混ぜながら、イザベルの反応も全く気にせず話していく。

話す事で色々整理していっている筈なのに、どこまでが私の人生で本当に起こった事でどこまでが嘘だったのかも分からなくなっていく。

でも話したおかげで寝る前まで、ずっといっぱいいっぱいで「帰りたい」「もし夢だったら」とばかりぐるぐるしていた思考が少し落ち着いた気がする。

ほんの少しだけど自分の中でも状況を見直すことができたのかもしれない。


「私は今でもアリスという名前を聞いても、さっぱりで全くしっくりこないんだよね。」

「なるほどね。十年以上その家にあった魔法の影響を受けてきているんだものね。急にそんなこと言われても混乱するのも無理ないと思うわ。」


魔法・・・


「魔法ってそんなこともできるの?」

「私にはそこまで精密な魔法は多分できないけど、その魔法は思考を操るというより多分梓が望んでいることや見たいものを作り出して見せていたんじゃないかしら。」

「私が見たいもの・・・」

「例えば子供は二人欲しいとか、性別は男の子と女の子で、最初は女の子がいい。とか」

「!」


そういえば、小学校の時に将来の自分について授業で書いたことがある――


–やまもと あずさ

しょうらい 大きくなったら けっこんして、こどもはふたりぐらいほしい!

おんなの子がいたらいっしょにごはんつくったり、りょうりして

いっしょにおかいものに行って・・・


そう。

そうだ。

そんな感じに子供の頃から、「こうなったらいいな」って将来の夢として考えていたし、高校生とかになっても、そのまま「もしもそうなったらいいなぁ」ってずっと結婚願望としてどこかで持ってた。


でも、つまりそれはこの現実が夢である事と同じ、という事だよね。


もう認めるしかないんだ・・・・・


私には子供もいない。


結婚もしてない。


何もないんだ。


「やっぱり本当に何もいないんだ・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・そうね。それはかなり酷い魔法だと思うわ。」


これが現実だと、私の中でも”答え”として出た。

顔が熱くなる。

視界がぼやける。

目から零れる涙が冷たい。


「全部、魔法で見た事・・・・」


私にとって「魔法」というモノは、なんとなく綺麗で素敵なものだというイメージだった。

でも、今日の出来事やこれまでの事が全て魔法のせいだと言われると、それはもう私には到底どうしようもない事のようで・・・


そんな訳が分からないものにもう関わりたくない。


もうほっといてほしい。


帰りたい。


溢れぼやける視界に、苦しさが重なって空気はあるのに、胸まで届かない。

ここにいる、ここにいる自分がなんなのか分からない。


私は何なのだろう・・・・・・・・


どこに帰ればいいのだろうか・・・


どこにも帰れないなら・・・私は・・・・



「梓、今は時間が必要よ。」


どのぐらい時間がたったんだろう。

外は相変わらず真っ暗で時間が分からない。

何も言わずにずっとイザベルはそこに居てくれたらしい。


「でも忘れないで、今は辛いことばかりで何も信じられないと思うけど、ここに梓が居て今日私と出会えた事は事実よ。それは魔法使いとか関係なくこの私が約束するわ。だから今じゃなくていい、いつか信じて。これからあなたが生きていく先にも幸せがきっとあるわ。」


そういってイザベルは静かに近づき、私の側に体を下した。

暖かい体温を感じながら、自分の体が冷え切っていたことに気が付く。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ありがと。」

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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