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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第二章 境界に立つ者たち
64/82

疑問:お互い様?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

昨日は本当に大変だった。

それでも、なぜかスズと合流できて――無事に帰ってこられた。


ただ、部屋に戻ったスズも私もふらふらで、あれ以上話す気力はなかった。

目も、どうしてああなったのか分からない。


翌朝。

かなり疲れも溜まっていたので、ランニングは諦めた。

ゆっくり寝て、10時頃お腹がすいて三階へ降りる。


日向と秀人がやけにテンション高く、ウーノ達と喋っていた。


「ねぇねぇ、ちょっと進んだんじゃない?」

「うーん。ちょ~っと。判断は厳しいですがねぇ。」

「だって一緒に寝てたんだよ?」

「でもスズだからねぇ。僕らだって一緒に寝てた事あるしー。」

「キュウキュウ」

「そうそう。あれは普通に寝落ちって可能性もあるんだけどさ」


なんだか盛り上がってるようですが、一応声をかけてみる。


「おはようー。どうしたの?朝ごはん残ってる?」

「梓おはよ!」

「おはよー!作り置きあるよ、温めるね」

「ありがとう。……で、なにが起きてるの?」


イザベルも降りてきて、同じ温度で眉を上げた。


「なによ。二人とも朝からニヤニヤして」

「ふふふ、聞いちゃう?」

「へへへ、言っちゃう?」


日向がレンジを閉め、秀人が勝ち誇った顔で続ける。


「へい!お待ち!三色鶏そぼろ丼!」

「へい!みそ汁とたくあんもつけちゃうよ!」

「ありがとう。昨日も作り置きがあったけど、普段から結構用意してくれてるんだね。」


「でなんなのよ?」

「キーキ?」「キュキュ」


作り置きでも美味しそうな朝ご飯を早速頂く。

イザベルはやっぱりそっちが気になるらしい。


「朝さ。秀人が“和が部屋にいない”って言うから、スズのとこ行ったの」

「そしたらスズもソファにいなくてさ」

「で、寝室ちょっとのぞいたら――」


二人が声を揃える。


「「同じ布団で、二人ともぐっすり」」

「あら?それだけ?それってただ寝落ちしただけじゃないの?」

「「ちっちっちっちー」」


二人が一緒に指を振りながら、イザベルに返事を返す。


「和って、そういうの気にするほうなんだよ」

「普段、寝るときはぜっったい寝室戻るし」

「だから“寝落ちでも珍しい”って話!」


なるほど。

つまり“事件”というより、“珍しい光景”だったわけね。


――その時。


バタバタバタッ!


階段を上がってくる足音。

寝起きのままの和さんが、珍しくぼさぼさで現れた。


「!!・・・?・・あぁ。朝ごはんは・・・適当に・・・?」

「おそよー!済ませたー鳥そぼろ使ったー!」

「おそよー!もっと寝ててもいいよー?」


「・・・いや。すまん。俺も・・ひとまず着替えてくる・・。」


日向と秀人が、わざとらしく顔を見合わせる。


「や~ね~。ああいうのは子供には、もっと分かりにくくして欲しいわねぇ~」

「そうそう。あそこまであからさまだと、こっちが照れちゃうー」

「確かに珍しい光景であるわね。」


和さんは返事をしないまま、逃げるみたいに階段を上がっていった。


「キュウ!」


続いて、スズが上がってくる気配。

でも、いつもと違う。


「ふぁ…何食べてんの?残ってる?」

「「スズ!おは・・・」」

「あ。スズも来たんだね。目大丈夫?」


日向と秀人の声が、途中で止まった。


「キュウ!?」

「キュキュ!!!」「キーキー!!」

「スズ。メ・・・ドウシタ?」

「ケガシタ?」

「ミエナイ?」


スズは眼帯をしていた。

昨夜、止血のあと一瞬だけ見えた“空洞”が、胸の奥で冷たく蘇る。


……そりゃ、こうなるよね。


私が立ち上がるより先に、スズが淡々と言った。


「大丈夫。人にあげた。怪我はないよ。それより朝ごはん。」


「人にあげたぁぁぁぁぁ!?」

「どういうこと!?まさか和ぅ!?」

「え?でも目ってどういう――」


「順番に話す。でも、まず朝ごはん。」

「キュウ・・・」


その言い方が、いつもの“引き受ける声”で。

余計に、胸がざわついた。


「駄目!とにかく大丈夫なの?また見えるようになる?」

「誰にあげたの!?僕らが取り返してくる!?」

「いやいや。ちゃんと順を追って説明するよ。だからそれ前提で。」


「「無理!!」」

「二人ともオチツイテ・・・」

「マズハちゃんと話ヲ・・・」

「キニナル」


・・・これ、収まるのかな。

でも確かに合流した時には、もう目はないみたいだったし、誰かにあげたって誰にあげたんだろうか。


「日向。・・・復元魔法?」

「秀人。・・・時間戻しは」

「二人ともいいよ。慣れれば、意外といけるもんだし。」

「いやだ!どうにか・・・!」

「アンジェラに相談する?」


「やめといて。今頼んでることを早めに済ませたい。」

「キュウキュウ・・?」

「大丈夫だよ。」


「スズ。ご飯どのぐらい食べれそう?」

「あぁそれの半分で良いよ。ありがとう梓。」


「サーズ。二人は普通に心配してるのよ」

「分かってる。ありがとう。でも、なくなったものはしょうがない」


皆が固まってる中で、ウーノ達も不安そうに鳴く。

私も昨日はずっと気になってたけど、それ以上にスズは疲れている。――今この場で、目の話を掘り返して追い詰めるのは違う気がした。


それでも、空気はそう簡単に戻らない。


和さんが低い声で切った。


「いや。自業自得。お前はもう少し分かってやれ。」


日向と秀人がほとんど同時に食い気味になる。


「あ。和!これって治せないの?」

「和。医療の人にお願いできないかな?」


和さんは一度息を吐いて、落ち着いた言い方に戻す。


「一応昨日確認した。元がないから、修復系は難しい。

目だけの復元ってなると腕や足とも少し違って……すぐなら神経も繋げられる可能性はあるが、もう時間が経ってる。」


「むー。」

「えー。」


それを聞いたウーノ達の鳴き声が、さっきより小さくなる。


「まぁ、先に朝ごはん食べてからにしよう。」


スズが話を前に進めようとして、机の上を指で軽く叩いた。


「死神関連のことよりも、まずはあの後のことをお互い確認したい。」


「分かった。」


「治ラナイのか……」

「目、ナクナッタまま……」

「カナシイ」


本当にそれ。

皆が気にするのは、生活の不便さとか見た目とか、そういう話じゃない。


確かにwalkerの話を聞いていたら、スズが自分のことを軽く見積もる気持ちも、少しは分かる。

でも、目がなくなってもいい――みたいな覚悟を、こっちが同じ温度で受け入れられるわけがない。


それに死神の時も思ったけど、スズはわざと嫌われる側に回ろうとしている感じがある。

話し合いで空気を読んだり配慮しすぎると、本質がぼやけるのは分かる。だからスズの立ち位置が必要なのも分かる。


……だけど。

好きな人が、嫌われていくのを見るのは、やっぱり嫌だ。


スズが話を切り替えるように言った。


「さて、じゃあ先にはぐれた後の話だったかな?」

「そうだな。無理ない程度で頼む。」

「まずは前提の説明からする。ブライアンと一緒にいる執事だが、あれは悪魔。」

「悪魔ぁ!?」

「悪魔って・・・悪魔?悪魔って何?」


前提から驚く私とイザベルに、更に補足が入っていく。


「あー悪魔って言うのは、色々な種族や世界毎でも違うものがあるが、ひとまず今回のブライアンといる悪魔についてを説明すると・・・」


スズが悪魔についての説明を一つ一つ丁寧にしていく、そういえば最近は最初の頃に比べるとだいぶ喋りやすそうな感じもする。

話が核心に近づくほど、内容がえぐくなっていく。

契約のことやそのお礼。

悪魔が人間をどう見ているのか。


スズの説明を聞きながら、頭の中で一つの結論が浮かぶ。

そしてこれを前提と言って説明するって事は――


「その悪魔の世界が、最初に全員で落ちた先。」


やっぱりそういう事だよね・・・


あの最初の真っ暗で、ほとんど何も見えなかった場所。

そしてスズを置いて行ってしまった場所。

そんな場所に・・・本当に・・・どうできたんだろう。

今更遅いのは分かってるけど、後悔は勝手にのしかかってくる。


私が最初にあの影に落ちさえしなければ、こんなことには…


「梓。あんまり気にしない方が良い。私達でも対応に困るものだった。

最初に言った通りどこに居ても起こり得ることだから、これについて先にどうこうするのにも限界がある。」

「・・・・・うー分からないけど、分かった。」

「・・・・まぁそういう事で、あの後の事については・・・。」


 その後のスズの行動を続けて聞いていったけど、確かにスズは魔法も持たない人間として、最大限の事をしていると思った。

まず私なら、最初の部屋から逃げ出せるかも分からない。


「まて。その過去に契約した悪魔って、いつの話だ?」

「えーと。それはかなり昔。圭とも会う前だから1000年以上前?」

「・・・・まぁ分かった。」

「それで、まぁ途中でドラゴンに出会い、何とか地下迷宮を抜けて、外に出られたから無事に和達がいる世界で合流できた。という感じ。」


「悪魔にも色々いるのね。その悪魔は確かに対価はあったけど、前提を聞くとマシな悪魔って感じがするわ。」

「そうだな。ガゼルは元々食べる事自体を楽しむというよりは、美味しい物を最後にとっておいて、その過程を楽しむ感じなんだろう。」


・・・確かにイザベルの言う通り、他の悪魔ならもっと対価の要求をしてきたかもしれない。

それこそ手や足が、なくなってしまっていたかもしれないんだ。

その中で目だけで済んだ事が、良かったのかどうかは正直分からないけど…


和さんが話を引き取る。


「まぁ。・・・分かった。後で話す。まずはこっちの説明だな。」


最初のケンタウロスの事から、ペガサスを捕まえて和さんが相談?というか、半ば無理やりお願いする形になって・・・

あれ?

場所を気にしなければ、意外とただ移動してただけかも?


「悪魔の世界がその世界と隣同士だったから、移動先として選んだのかもしれないが、確かに神獣側や天国側の方にアリス・フォーラスの肉体があるという可能性は、死神の方でも言ってたから探してみても良かったかもしれない。」

「いや。多分あそこじゃない。途中途中で梓さんを確認したけど、魔法世界の方がまだはっきり繋がってるようにみえた。」

「…そうか。ならやっぱりエルフの方に行くか。」


「あの後のことは、ひとまずこんなところだろう。」

「そうだな。死神のところでの事もウーノ達にも話したいし、一旦区切ろう。」


場の空気が少しだけ緩む。

区切りを待っていたみたいに、ウーノ達が身を乗り出す。


「私タチノ世界ミツカった?」

「帰レル?」

「ドキドキ・・」

「キュウキュウ・・」「キー・・」「キュキュ?」


本当に色々ありすぎたけど、これは元々の目的の一つ。


「正確な場所は今、死神の方で確認してもらっているから、返事が来次第に一度見に行こうかとは思ってる。その時は6匹まとめて行っても違う場所の可能性があるから、ひとまずウーノだけ連れていきたいんだがいいかな?」


「・・・・ワカッタ。セイも連れッテいいか?多分スズにツイテイキタガル。」

「キュウ!」

「あぁ。じゃあ2匹でまず行こうか。ガルシアの・・死神の返事待ちだから、また声をかけるよ。」

「ありがとう・・・。助カル・・。」


その場所がウーノ達の世界だったら嬉しいし、そうだったらいいとは思うけど、やっぱさみしいよね。


日向達も口を挟まないけど、クワやクエを抱きしめてるし・・・


「あとは梓についてだな。・・・ところどころで話には含んでいたが、アリス・フォーラスの体が残っている可能性が高い事と、妖精精霊が多くいると思われる天国側だと思うって事。

あとはバレンとしては、エルフに聞いた方が早いかもしれないという事だから、そっちを早めに確認しに行こうかと思ってる。今週末とかどうかな?」


「こっ今週末?・・・まって。それって明日とか明後日って事?せめて来週は?」

「もちろん、それでも良いよ。梓も今週は頑張ってくれたし、来週にしようか。」


いや……

私も疲れてはいるけど、みんなの顔を見てほしい。

ウーノ達まで渋い顔してるよ?


「あとはー・・話し合いについてはバレン達に任せるしかないが、最終的な回答次第では徹底的にあんな感じの話し合いはするつもりだから、あまり今の時点では気にしないで欲しい。

といっても気になるだろうし、申し訳ない・・・」


「あぁあれはね。分かってるよ。大丈夫。なんか私も自分の事なのにどうなるのか眺めちゃってたし、スズやエルさんやバレンさんが頑張ってくれてたのも分かってるから、大丈夫だよ。」


「そうか・・・」


そんな事よりもだよ。スズさん。


「キュウ?」

「あぁ大丈夫だよ。」


ちょっと分かった。

セイはスズの肩に乗ってるから、体温とかが伝わりやすいのかも。

あなたちょっとまだ体調悪いでしょう?


「スズ休憩しよう。」

「分かった。じゃあちょっと圭の方に確認してくる。折角だし、今週にもう一度怪異の方に行けたら行きたいし。」


「スズ。駄目だ。分かった。先に話をしよう。」


あぁ私が来週が良いって言ったから、じゃあ今週が空いてるな。

という事でそういう事になっているのね。


・・・そりゃ和さん怒るよ。


「ここで?」

「・・・降りるか。」


「駄目!今日は怒るよ!」

「そう!言いたい事あるよ!」


「…分かった。」


空気が、変わった。


「まず何で、昨日の今日で明日には出掛けようってなるんだ。

皆もそうだが。お前も怪我して帰って来たばかりじゃないか。」

「怪我って手首と目だけじゃないか。手首も和が治してくれて、殆ど問題ない状態だし、目もこれが明日になって元に戻るって事にはならない。」


「スズ!!!怪我ないって言った!」

「言った!手首怪我したの!?」

「もう殆ど治ってるよ。これは本当に軽傷というか、さっきも言ったけど逃げる為に、自分で切ったんだ。」


「「それも怪我!」」

「キュキュ!」「キーキー」


今日は珍しく、和さんだけじゃなく日向と秀人まで強い口調になってる。

そうね。

たまにはちゃんと言わないと、これって変わらないよね。


「とにかくだ。今日尚弥が来るから、体調を確認して尚弥が出かけても良いって言うなら考えるが、また怪異に行くんだから、その前にはもう少し方法を考える時間も欲しい。」

「ナオが良いって言う可能性は低い。だがそれに合わせてたら、いつまでたっても進まない事が多いのは確かだ。」


「何で尚弥が良いって言わないと思ってる?お前、自分でもまだ良くない状況だって分かってるんだろ?」

「そうだそうだー!」

「尚弥が言うって事は事実証拠ー!」

「キュウ?」


確かにお医者さんの尚弥さんの意見は強いよね。

そして、診察を受けた上でダメと言われることも分かってる辺り、和さんの言う通り自覚はあるけど、ゆっくりする暇がないっていうのはそうなのだろう・・。

うーん。


「進む進まないは、行動しても進まない場合もある。

それにお前自身もアンジェラや死神側の返事を待っている事もあるだろ?

そっちを聞いた後に変わる行動もあるんだから、今を休養期間にしたっていいんじゃないかって話だ。」

「彼らが確認してるのは、あくまで彼らが対応が可能な範囲だ。

他世界が含まれている以上、私でしか確認できない事も、それこそフィーの居場所だっていつまでたっても見つけられない事になる。」


「でもそれはまた世界によっては、危ない場所もあるって事!」

「トライアンドエラー反対ー!」


「それは種族によって考え方や弱肉強食の立ち位置が異なるから起こる事で、もちろん怪異なら圭が行けるなら圭を連れていくし、その場その場に合わせた対応は考えて行くつもり。」


言ってることは分かる。

だからこそ、噛み合わない。


「それでも何が起こるか分からないから、万全を期して行くべきだって言っているだけだ。

途中でブライアンが割り込んできたり、死神の世界の事もイレギュラーに用意もできずに、他の世界に行ったから起こった事なのは、ある程度仕方がない部分も分かってるが、既に危険だと分かって、こちらから行くにはお前は急ぎ過ぎだ。」


「平日は仕事も入ってるし、基本的にはそういった捜索をメインにした移動の場合は、土日に絞っている。月に4度しか行けないとなると、年間でも48回。

1年を通しても行ける場所としては少ないし、そこまで時間をかけられる事では、到底ないと考えている。それを更に減らすのは、現実的に厳しいと思うけど?」


「むむむむ!絶対に危なくない場所なら良いけどさ・・」

「ぐぐぐぐ!トライアンドエラー反対・・・」


「スズ。・・・・モシモ日向達ダケシカ、その場所に行ケナイなら行カセル?」

「比較対象が違う。私の場合はそう言った事を既に経験している、日向達は全く知らない。」

「ウム・・・」


おお。

ウーノまで入って来たけど、これは手強い・・・


「なんでお前が――」


和さんが一瞬だけ言葉を選んだ。


「…全く気にしていない右目が無くなった事で、日向達がこんなに騒いだんだと思ってる?」

「そりゃ生活にも多少は支障が出るし、見た目にも分かりやすく欠損しているから、反応はあるだろう。」


「スズ!生活の事じゃない!」

「スズ!見た目の問題じゃない!」

「じゃあ。日向達がこれから怪我をする可能性が高い場所に行く時どうするんだ?」


「事前対策はするが、間に合わないようなら私もついて行って、できる限りの事はする。」

「俺たちはお前についていけないんだぞ?」


「だからそれは、しょうがない事だ。比較しづらい。

大体もしついてきても良い場所だとしても、さっきと同じく場所によっては、私一人の方が取れる対策が多い場面もあるってだけ。」


・・・これ、終わらなくない?


「スズ。私達はここでみんなと一緒にいたいよ?」

「うん。色々な人が来るから危ない事もあるけど、ここが僕らの帰る場所。」


「…分かってる。だから一人の時の様に気軽に死ぬことを選択にはしていない。」

「分かってない。それはあくまで最悪の選択肢というだけで、死ななければ良いと言う話の問題じゃない。」


「…分かった。今週は出かけない。」

「っそれが分かってねぇから!毎回毎回こうしてんだろ!お前いい加減にしろよ!」


――誰も笑わなくなった。


日向と秀人はかなり困ってしまって、泣きそうになってしまっている。

スズが了承の返事を出した。


たぶん、いつもならここで終わるはずなのに…


スズが、一度息を吐く。


「…じゃあどうしろと?」

「お前がいつまでもそんななら!マジであのドアぶっ壊すし、どこも行かせねぇよ!」


冗談じゃない声音だった。笑えないやつだ、と背中が冷える。


「それでも良いけど、付き合っても今回まで。私は私でやりたいようにやる。壊したところで意味がない事は分かってる筈。」


「そういう事はな!お前の妥協じゃなくて、こっちに諦めさせてるっていうんだ!」

「和がそれを制限すること自体は構わない。だが、それは私の自由を奪っている事になるんだから、適当なタイミングで終了の目途も経たせないつもり?」


「そうだな!期限は俺が決める!医者の許可と、最低限の安全策が揃うまでだ!お前がそれを理解するまでは!」

「そんなのは二度も三度もごめんだ。意見を通す以外にも私の理解を求める必要がどこにある?」


「お前のやり方に対して改善を求めているんだ!それはお前がこっちの考え方を理解しないと、一生直らねぇだろ!」

「多少は勝手に動くこともある。でも基本は共有してるし、間違いは修正してる。

考え方まで同じにするのは難しい。だから行動で補ってるつもりだよ。」


「なんで!そんなに極端なんだよ!そういう事じゃねぇ!何故その改善を求めたと思う??何故!こっちの考え方に対しての認識合わせを繰り返してると思う?!」

「根本の考え方の違いによる、行動の齟齬を減らす為というのは理解している。

だが相手の思考がそのまま読める訳じゃない。早期改善を求めるなら、行動自体の共有で改善を進める事が効果的だと思うが?」


スズは淡々としている。

けど、言葉の端だけが、どこか急いでいる。


「早期はどうでもいい!時間をかけたっていい!理解からの改善をこっちは求めてんだ!

すべてを理解しろって言ってんじゃねぇ!お前が梓さんを心配するみたいに、俺たちもお前を心配してんだよ!

だからこうして言ってるんだろ!なんで分かんねぇんだよ!」

「それも配慮したうえで、今回の対応にも軌道修正はしたつもりだ。

例えば重大な後遺症が残る状態なら、もちろん早急な行動が起こせないだろうから、時期を変える事もあるが、今回はほぼ普段通りに動ける状態だというのに、どこが特に早すぎるのか、教えてほしい。」


「あのさ!後遺症が残る状態と比べる事が、おかしいだろ!お前の一番普通で元気な時っていつだよ?比較対象はそこだろ!その時と・・・・」


これってやばいよね。

かなりヒートアップしてるよ。

セイはスズの肩の上で、すっごい震えてるし・・・

ちょっとそろそろ止めないとまずいのでは・・・?


「はいはーい。終了ー。二人とも頭冷やせー」


尚弥さんが、いつもの軽い声のまま入ってきた。


張り詰めていた空気が、少しだけほどけた。


い、いつの間に・・・


「・・・あれ? インターホン鳴った?」


でも日向と秀人が迎えに行ってたみたいだし、多分鳴っていたのかも。

二人とも尚弥さんの後ろで見守ってる。


「和。なんで僕を今日呼んだのか覚えてるかなー?何でこんな喧嘩する事になっちゃうかなー?」

「・・・・」

「スズ。ひとまず降りよう。君ね・・・まぁ後でにしようか。さぁ行くよ。応接室は右側借りるねー。」

「分かった。」


はぁぁぁぁぁ・・・

二人が喧嘩するってああいう感じなんだね。

あれはちょっと口挟めないです。

尚弥さんが来てくれて本当に良かった。


「でも結局痴話げんかって感じね。」


……そう言い切れるなら、どれだけ楽だろう。


確かに考え方の違いって言われれば、それまでだよね。

こればっかりは確かに、スズが悪いとは言いづらいと思った。

目がないって聞いた時は、本当に驚いたし心配したけど、それが一番の最善策だったと改めて状況も含めて説明されれば、確かにスズはスズなりに頑張って帰って来たと私は思う。


まぁ明日には怪異世界へ行くってのは、確かに反対なんだけど、それもこちらの事を思って急いでると言われれば、和さん達がスズに言っているという行動と同じことをしているともいえる。


結局、どっちも同じことをしている気がする。


その空気が落ち着ききる前に――


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・和。ちょっと。」

「・・・分かった。」


え!


「え、圭さん? なんで?」


しかも何?どうしたの?


–ガララ


ええ!?


圭さんは、迷うより先に和さんの腕を掴んで、窓枠へ引っ張ってそのまま降りてしまった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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