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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第二章 境界に立つ者たち
63/82

答え:何度目かの正直。

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「今は何も説明できない・・・。」

「分かってる。……寝ろ。熱もあるって言われたぞ」

「……右目のことは」

「後だ。今は寝ろ」


梓は多少感づいたのだろう、素直にイザベルと上がっていき、圭もまた下へ降りて行った。


まぁ和は残る気がした…


本当にしばらくはもう無理。

視界はぐるぐるしてるし、倒れるのも時間の問題だった。

最後は急ぎ足になったが、とにかく最後まで立っていられて良かった。

正直ただでさえ、碌な話が無かった不安な状況の梓の前で、あまり心配もかけたくなかった。


「…気持ち悪い。」


「大丈夫か。桶か何か・・・。」


視界がぐるぐるし過ぎて気持ち悪い。

机の脇にあるゴミ箱を手に取ろうとして失敗する。


距離感が・・・


「うっ。」


ギリギリ指がかかったので、何とか間に合った。

また、掃除する体力は、今は無い。


和が水をソファの脇において、再びどこかへ行くようだ。


…気付いた顔をしているのに。

何も言わないのが、逆に怖い。


「はぁ・・・はぁ・・・・」


今日は散々な一日だったと言わざるを得ない。


「布団はそのまま使えそうだからあっちで寝ろ。運ぶぞ。」

「・・・・」

「だいぶ濡れてるな。・・・先に着替えるか。勝手にするから、寝てろ。」

「ん・・・・・頼む。」


もう・・・・・ねよ・・・・。

そう考える前に、全身から力が抜けた。


–夜の湿った匂いが近い。


吐くだけ吐いて、体力を使い切ったのだろう。

寝室のベッドの端に座らせると、こちらに倒れてきてそのまま寝てしまった。


「…はぁ。」


今回も本当に仕方ないのは分かっているのだが、それでも嫌なものは嫌なんだ。

ひとまず何処の誰のかも知らない男物の服を脱がせて、用意したタオルで髪から身体まで拭いていく。


「ん?」


手首を怪我してる。

大きい怪我は目だけかと思ったが、こっちもやや深そうだ。


寝室に常備してある薬箱から消毒液を出し消毒する。

治癒魔法をかけて、無事に傷口が閉じたのを確認する。


ついでに右目も見る。


・・・やっぱり中身がない。


何があったか分からないが、失ったのだろう。

血が流れないことを確認する。


一通り治療と着替えを済ませて、布団に入れてから体温を測る。


38.7度。


エルさんの時はちょっと熱がある程度だったらしいが、まぁその後色々あったし濡れたままだったからな。

手拭いや冷やすものを取ってくるか。


手拭いは洗面所のいつもの場所から、抜き取って・・・

あぁまた吐くかもしれないし、念の為に桶も持っていくか。

あとは冷蔵庫に入ってる冷やすシートと・・・


--ギシ


床板が一度だけ鳴って、圭の気配が刺さった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・和」

「あぁ。カルは?」

「・・・・・・・・・・・・・・・腹減ったって言うから、上で適当に済ませてくる。・・・・・・・・・・・・・・・・・ズーは?」

「寝た。結構ギリギリな気がするけど、一応目以外には大きく目立った怪我はない。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・多分、最初の世界はかなりマズかった・・・・・・スズ多分頑張った・・・・・・・・・・・・・・あんまり怒るな」

「まぁ・・・そうだよな。分かってる。夕飯は一応作り置きも用意してるから、適当に頼む。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ。・・・・・・・和も。」


カルを持って圭は、上の階に上がっていく。


「はぁ」


そうかもな。

例のドラゴンといたってことはフォーラス関係に会ったか、あるいはその前に逃げたとかで、とにかく危険な場所にいたことに違いはない。

そこから無事にドラゴンまで回収して逃げたんだから、これも満点なんだよなぁ。


きっと…


それでも心配なものは心配。

これからもずっとこう感じていくんだろう。


今回は特に・・・、あの手が届いていれば・・・。

圭を掴んだと同時に伸ばした手が、あと少しというところで、スズに届かなかった。


「くっそ・・・」


寝室に戻る。


やや熱そうにはしているが寝苦しい様子もないし、ひとまずは安定してるようだ。

尚弥にも連絡入れておこう。


無意識に右目に目が行く。


・・・スズも頑張ったか。


何か俺がいない所でばっかり頑張ってんな。こいつ。

まぁ、それだけ頼られてるって意味なら良い事なんだろうけど、こっちとしては複雑だ。


精霊にも何か言われたな。


≪もし本当に向き合いたいなら、相応の覚悟は必要よ。≫

≪この子はあなたがいなくなった後の方が、遥かに長く生きる事になるのだから≫


「覚悟、か。」


・・・俺が踏み込めば、引き返せない。分かってる。


基本世界の人間より長いといっても、1000年生きたところで――

そんな生ぬるい長さじゃないんだよな。

それに、多分スズは俺がそういう事を希望するのは嫌がる。

それは何となく分かる。


日向達には何世代も一緒にいるとは思われてるけど、実際に過ごしたのはそこまで長くない。

戦争前半は、俺も家の領域関係で所々の戦争に参加する事も多く、正直それどころじゃなかった。


あの時も一つの戦がやっと落ち着き、俺は久しぶりに実家に帰った。


 戦争に良い事は無い、魔法の使い方も個人個人となってしまえば、ただのぶつかり合いに近い。

魔力切れになるその時まで、手がなくなろうが足がなくなろうが、とにかく動かされる兵士達を見ていると、何をしているのか分からなくなった。

魔力もなくなってしまえば、基本世界で普及していた重火器まで、どこからか持ち出してきて、最後は本当にただの殴り合いまである場面もあった。


そんな精神的にも肉体的にも疲労していたので、何も考えたくないし見たくもなかった事もあり、街からは少し離れた小さな実家に戻ろうと足を運んだのだが、丘を越えて街を見ようとしたところで・・・


――その景色はもう無かった。


街はそこには影も形も無かった。


記憶の建物が、どこにどうあったのかも分からない。


焦げた匂い。


破片。ガラス。焦げた布。何かだったもの。


全てが燃やし尽くされて、人だったもの。


それがどこの誰かも分からない。


「・・・・!」


実家!

少し離れた丘の上へ、疲労していた事も忘れ駆けだした。


「・・・は。っは!っは・・・・・・・・・っは・・・・・・」


――ない


地面がえぐられ、まるで隕石がそこに落ちたように焦げた後だけが残っている。

家という存在があったのかも分からない。


焼けた地面の端に、溶けた金属片があった。

母の鍋の取っ手だった。


–ドサッ


肩から荷物が落ちたが、どうでもいい。

なんでこんな事になっているのか、意味が分からない。

あたりに人の気配も残っていない。

生き残りがいる気がしない。


そもそも既に、かなりの日数が経っているのだろう・・・

何も残っていない。

ただの大きく凹んだ地面と焼けた野原だけ。


「・・・・なんで。」


数時間ぐらいだろうか?

そこに立ち尽くしていた・・・


だが、立っていても何故こんな事になってしまったのか、分かる事はない。

もと来た道を戻る。


母。父。弟。妹。祖父。祖母。

小さい家ながら家族がみんな揃って、一緒に暮らしていた。

途中、父とは色々あり喧嘩もしたが、大学に行く事や評価を得た事は喜んでくれていたし、家族全体で応援してくれていた。


街にも生まれた頃からの知り合いや友人がいた。

街も含めて家族の様な存在。

一時的な評価で嫌になった部分もあったが、それでも俺の事を全く知らない人間からの過剰な評価や批判とは違い、俺自身の事も見てくれる数少ない存在。


そこからは、まずは兵舎に戻るしかなかったが、何も考えられなかった。


言われた通り戦に出て

言われた通り人を殺し

言われた通り街を燃やした


街の事を調べても、適当な理由ばかり並べられていた。

本当のことに辿り着く手がかりは、何一つなかった。

その中でも、自分自身が他の街を燃やすザマをみていると、どこかで運よく死なないか期待していた事に気が付く。


それは自暴自棄と言っても良いのかもしれない。


本当にどうでもよかった。


それでも戦争時の評価が勝手に上がっていく。

色々な場所に連れまわされ、気が付けばそれなりの地位にいた気がする。

部下を持ち、いくつかの部隊を持ち、どうすればより効率的に人を殺せるかばかりを考え、大部隊の司令官もしていたが、結局やる事は変わらない。


それどころか、より人を人として見る事ができなくなってきていたと思う。


――そんな時


「おや。何やら派手に動き回ってるのが居ると言うから、ちょっと見に来たんだが見覚えがあるな?」


「・・・・・偵察か?」

「どう見ても一般人だろう。」


「・・・・・・・・こんなところに一般人が入れるわけないだろう。」

「まぁそれは色々なお願いを重ねた結果。」


「・・・・・で?何なんだ?味方じゃないなら、このまま殺していいのか?」

「ん~それは困るが・・・やっぱり見覚えがあるな。名前は?」


「・・・・そんなことも知らないで来たのか。カイルだ。カイル・ヴィンセント。」

「・・・カイルねぇ。なんだっけ?」


「まぁいいや。死ねよ。」


話すことも面倒になり、窓から入って来た少女に風刃を飛ばす。

少女は、さっきまでのんびり動いていた動きを急に変える。

素早く避けるとともに、こちらに飛び込んできた。


–ドサ


「なんだか適当だね?・・・あ!あぁ。そうだ。思い出した。この不貞腐れた顔。エリーザのところにいた天才君か。」

「・・・学長の知り合い?」


戦争になるとともに行けなくなってしまった。

大学の学長の名前だ。


やっぱり知り合いだったのだろうか?

覚えてない。


「覚えてないのも無理はない。私はその時に会った同居人だよ。見た目は違うけどね。」


この世界で、同居人に直接会う機会は殆どない。

たった一つの記憶に繋がる。

だが、見た目、というか年齢が明らかに違う。


「・・・お前。あの時の同居人?いやこんなガキじゃねぇ。」

「それでもあの時の同居人だよ。君は限界の先は見えたかね?」


その言葉に、再び記憶が繋がる。


「・・・うさん臭ぇ。」

「今の君はなんだか・・・。不貞腐れているというより、疲れている感じだね?

おや。誰か来そうだ。ではまた会おう。」


少女は来た窓から、そそくさと出て行ってしまった。

魔法結界がかかった兵舎内だというのに、どこから入って来たんだ・・・


ほんの少しの間だけ、確かに色々話した覚えのある同居人を改めて思い出す。

だが、あの時の彼女は20代半ばの大人の女性に見えた。

さっき見た少女は、10歳にも満たないだろう。


・・・全く意味が分からん。


そして少女は本当にどこから入っているのか。

何故俺が一人のタイミングなのか知っているのか。

全く分からないままに、時折やってくるようになった。


「こっちは止めておきたまえ。重火器の普及どころか戦車まで持ち出してきて、話しにならん場所。

殺戮がしたいのであれば止めんが、ただの魔法の力も低い暴徒民を含んだ人海戦術だ。適当に罠でも張って、足止めしておけば済む話。」

「なんでそんな事知ってんだよ。」


「おやおや今日はお疲れだね。じゃあ、お菓子を置いて立ち去ってあげよう。おやすみ。」

「なんでこんな場所で、こんな菓子が手に入るんだよ。」


「今日はちょっと雑だったんじゃないかい?なんであのタイミングで前に進んだ?設置魔法の調査結果待ち、だったんじゃないのかい?」

「なんで、こっちの情報を知ってんだよ。」


と知りえない情報や知られてはまずい情報、そして菓子などを持って度々現れる。


どこかのスパイなのだろうか?


だが、彼女の情報は後から確認しても正しい内容で、こちらに対して害意がない事を言っている事が殆ど。


一体何がしたいんだ?


そこからも頻度はまちまちだったが、たまに彼女は来て少し話して、誰かが来る前にすぐに退散していくので、途中からどうでもよくなって放っておいていた。


戦争はそこからも20年近く続いた。

終わりの匂いがし始めた頃、ふと彼女は来なくなった。


「カイル聞いたか?なんか皆が精霊とか妖精とかって、かなり前から戦場で出た噂があっただろ?」

「あぁなんか白い妖精が次の戦のヒントをくれるとか、お菓子を配ってるとか?」


戦時中は皆どこか壊れている。

噂話の一つだと、聞き流していた。


「そうそう。あれって同居人なんだってよ。ところかしこで無駄な戦が起きないように、上層部のお偉いさんに声をかけまくっていたらしくて、まぁ俺たちとしてはすげぇ嬉しい事なんだけどさ。」


「・・は?」


喉が、うまく動かなかった。


「上層部からしたら、スパイ扱いって事で、その子を処刑するって話になったらしい。」


「・・・っ」


今度は、声にならなかった。


静かすぎて、息の音だけがうるさい。

何も感じていないはずなのに、指先だけが冷える。


妖精だの精霊だの。

確かに噂は何度も聞いた。


だがあの小娘とは結びつかなかった。

どう見ても、ただの少女だった。


だから――考えなかった。


なんで処刑される?


少ししか話していない。

勝手に喋って、勝手に帰るだけの存在だった。

情報を流していたなら、スパイと言われても仕方ない。


……どうでもいい。


そう思っていたはずなのに。


あの日。

処刑場に立たされた小さな影を見た時、足が一歩も動かなかった。


まさか。

ただの“同居人”に対して、あそこまでするとは思わなかった。


彼女が流していたのは、無駄な戦を減らすための情報ばかりだった。


お前。


多分、良い奴だったんだろ。


だって、そうじゃなきゃ――



「ん・・・?」


なんだ?

こいつまたここで寝落ちしてるのか。


まだ外は暗い。


真夜中。


枕元のテーブルにあったペットボトルの水を口にする。

長時間置いてあったと思うが、冷たく感じる。

それだけ私の体温が高いのか、あるいは部屋が寒いのか。


和は体の上には乗っていないので、布団の端でうつ伏せに潰れている。

その体勢は苦しくないのか。

そして、人には風邪を引くと言って、口うるさくあれやこれやというのだから、自分も気をつけ給え。


和の顔の下にある布団を引っ張りめくり、下半身を少しだけ持ち上げて体をずらす。

まぁちょっと布団の使える範囲は狭まるが仕方あるまい。

こいつが風邪をひいては、日常生活に支障をきたす。


珍しい事だが、先日に続いてここで寝落ちするのだから、今度からもう一枚用意するか、いっそ布団を1セット置いておく?


だが、今日はこのまま寝てしまおう。


「おやすみ。」

「・・・ん」


翌朝、和がいないと呼びに来る日向と秀人がニヤニヤしながら、起こさずに戻っていってしまったようなので、二人して寝坊した事は仕方がなかった。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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