答え:さもありなん
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
「マジか」
正直、久しぶりにびっくり。
何故なら、さっき退社したばかりの会社の先輩が駅のプラットフォームから
今まさに落ちようとしているからだ。
ゆっくり考えている暇もないので、先輩とは違う電車の入り口から乗った私はとにかく急いで駆け、なんとか先輩の腕を掴めた。
電車の扉はまさに閉まろうとしていたので、電車の外に出ることは出来ないと判断し一先ず中に引き寄せた。
そして、扉が閉まった事を確認する。
かなり危なかった。
何となく座る席を探す為にあたりを見まわしていなければ、先輩が落ちる事に気が付かなかったかもしれない。
–プラットフォームから落ちようとしている先輩を電車に乗せる。
という事については、やや矛盾を感じると思うが、今は説明し難い。
実際に電車に乗せた以上、電車は確かにそこにあるのだとしか言いようがない。
まず先輩の様子を確認。
意識はないようだが目立ったケガは見当たらないし、呼吸も安定している。一先ずは大丈夫そう。でも
「このまま連れて行くわけにもいかない。」
つい口に出てしまった。
電車に乗っているという事は、もちろんこのまま移動予定だった訳だが、流石に意識を失った人一人を背負いながら、気にせず移動を続けるわけにもいかない。
早々に次の駅で降り、和に近くの駅まで迎えに来てもらうとしよう。
それに見たところ怪我がないとはいえ、念の為にちゃんと診てもらったほうがいいだろう。
さて、彼女がどこまでどんなものを見たのかはさておき、この電車に乗ろうとした事の方が問題だ。
本来この電車は普通の人間が絶対に見ることが出来ない。
車内には魔法使い(見た目は普通だが)は良いとしても、他にも変な生き物がわんさか乗っているし、窓の外には妖精が飛んでいる。
「はぁぁぁ」
溜息も出る。うん。もう面倒くさい。口止め料だけ払って彼女には夢のように忘れてもらおう。
「彼女に仕事手伝ってもらえばいいんじゃない?」
また、面倒なことを
「ただでさえ忙しいんだ。この際いい機会じゃないか。」
そんな簡単なことではない。何事もなかったかのように戻すのが一番楽。
「年明けにどっかのお偉いさんも来るんだろ?寝る時間なんて皆無になるぞ」
いつもの事だ。
「見た感じ、彼女、好奇心旺盛な感じだし。人当たりも良さそう。社会人経験も長いんだろう?ちょっと教えればスケジュール管理ぐらいならすぐに出来るんじゃないか?」
まぁ出来るだろう。
そもそも先輩は営業経験の長い、いわゆる「出来る会社員」に該当するだろう。
「何がそんなに面倒くさいんだ?」
電車のことはもとより、世界について。自分の説明。相談所の説明。仕事の説明。何もかも。
彼女にとって電車の事が夢になってしまえばそれが一番良い。
「こんな感じだよってふんわりした説明でもいいんじゃないか?」
出たよ、大雑把。
普段はやたら几帳面なくせに時々適当になる。
そこは文系寄りで感情的な彼女と気が合いそうだ。
「でも今回彼女がなんで電車を認知したかわからないんだろ?」
嫌なところを突いてくる。
「今後、彼女以外にもこういったことがもしも起きたら、その度に口止めするのか?」
稀な出来事に対して、次に同じ事があったらと考える事はあまり意味がない。
特に今回の事は特に。
「今回の事はいずれにしても調べておく必要があるだろ?その為にも彼女のことは暫く様子を見ておくんだろ?」
それについてはどうせ同じ会社で働いているし、今のままで十分だと思う。
と和からの提案を否定し続けてみたが、非常に残念ながら今回はそれ以外にも問題がある事がすでに分かってしまっている。
「過去に妖怪や魔法に触れた事があるか彼女に確認するのか?」
「おい」
気にせず会話を続けようとする和にやや呆れる。
「ん?」
「私はひと言も口に出していないのに、勝手に会話をすすめるな。」
「内容はだいたい、合ってただろ?」
そういう所は昔から本当に無駄に器用な奴だ。
ひとまずは懸念材料があることは言っておかなければ、後から言うと口うるさく怒られる。
「彼女については、それよりも先に確認しておく事がある。」
「ん?」
「彼女の経歴について」
「どういう事だ?」
「それを確認するんだ」
今回のことを受け、もちろん暫く様子を見る事は決定しているが、まずは身の回りの確認を早めに進める必要がある。
もし必要なら和の言う通りこちらの管理下に置くことも視野に入れる。
今回は特に異例な点が多すぎる。
”私にとって”、初めてと言ってもいい。
初めての事に関して急いで事を荒立てると、更に面倒くさい奴が増える可能性がある。「はぁ」何にしても面倒くさい事に変わりはない。
-ピンポーン
「ん?普通のインターフォンだな。誰か予定は?」
「今日は来客予定はない。」
何かあればヒナあたりが呼びに来るだろう。
まずは今ある仕事をしよう。ミーティングの時間が近い。部屋に戻るか。
–コンコン
「どーぞ」
立ち上がろうとしたところで、ノックがする。
そしてこちらの様子も伺わず、和が勝手に返事をする。呼んできたのはヒデの方だった。
「あのー。さっき来た人が死神の人らしいんだけど」
「は?また珍しい、わざわざこちら側から回ってきたのか」
ああ、面倒なことが増えたようだ。
「私はミーティング。和。話だけ聞いておいて。」
「分かった。」
面倒なお客様への対応は和にまかせ、階段を降りていく。
死神はすでに応接室の方にいるようで、ヒナがお茶の用意をしている。そのまま更に階段を下りる。
「あーその質問の前に、今回の資料を改めてご確認ください。頂いたご質問についてのご説明を含んだ部分は36ページ目から38ページ目の集客による注意点としてまとめてます。そちらをご確認の上、気になる点・不明点があれば改めて質問を受けます。」
溜息を言葉に変えながら、つらつらと話す。
『な。なんなんだ!それを説明するのが仕事だろう?!』
「いいえ、この時間はこの資料の質疑応答の時間として設けてます。なのですでに記載のある内容については一度資料をご確認ください。記載不足や記載の内容が分からない部分を解決させていただいたほうが、御社にとっても生産的かと存じます。会議の内容に疑問があるようでしたらここでお話を続けるのもお互いに時間が勿体ないので、改めて社内でご検討ください。それでは、終了のお時間もそろそろなので。次を最後の質問にしましょうか。いかがですか?」
「はぁ」
この一時間で何度したか分からない溜息を吐く。
–キィ
一人掛けの固めのオフィスチェアに背中をかけ、ミーティングを終えた静かな部屋に軋む音が響く。
こちらのやり方やサービスは事前にホームページでも、最初のミーティングでも散々しているというのに1カ月に1度は必ずどこかのミーティングで行われるこの決まったやりとり。
まったくもって効率が悪い。
1時間きっちりに終わらせたミーティングを改めて思い返し、余計な疲労が重なる。
だが、ゆっくり座っても居られない。ミーティングの前に来た来客からは更に余計な問題が起こる事は既に約束されているようなものだ。それぐらい、彼らがわざわざこちらに来ることはイレギュラーな事なのだ。
とにかく応接室に向かうか。重い体を上げると椅子からは再び軋む音がする。そろそろ買い替え時かもしれない。
行きたくもない応接室へ向かうためにだらだらと階段を上る。
応接室は1階に3つあり、先日先輩を迎えた応接室もこのフロアだ。
行雲相談所
この相談所はあたりを高いビルに囲まれているが、四方にあるどのビルもこちらの相談所側には窓を持たず、高い壁に囲まれた要塞のような場所。
東京駅付近という地域的にはあまり見かけないタイプだが、いたって普通の7階建ての建物とそして広めの庭がこの相談所のエリアになっている。
建物自体は外見から見るとマンションのような感じにも見えるかもしれないが、この建物は丸ごとが相談所になっている為、応接室がまとまって用意してある1階へ残念ながら今は向かっている事になる。
1階へ上がる為に地下と1階を分けている扉を開いたら、ヒデと目が合った。
「和が呼んできてくれって」
私のミーティングがすでに終わっている事を分かっている和は「来るのが遅い」とヒデに私を呼びに来させたらしい。
今下手に喋ると和にも聞こえるし、愚痴になってしまいそうだったので、ヒデには「了解」の意味を込めて頷きだけ返して、再びだらだらと使用中の応接室へ歩き出す。
先日、先輩を招いた和洋室っぽい応接室の左側にある洋室の方を現在使っているらしい(和洋室の右側は和室になっている)。使っているかどうかは応接室のドアが開いているか閉まっているかで大体判断してる。
「失礼」
特に中の様子も気にせず部屋へ入ると客側のソファに女性が一人。反対側に和がいる。
死神であろう女性は原色に近い紫色の派手なジャケットとショートスカート。さらに黒のブラウスを着て、足を揃えてお淑やかに、まぁ言ってみれば女性らしい座り方で座っている。
入室してきた私に一度視線を合わせたと思ったが、すぐさま和の方に視線を戻す。
なるほど、私の事は流石に分かっているのか。
「ノックぐらいしなさい。」
ふん。来る事は分かっていただろ。
「改めまして、キャロルさん。こちらが最初に説明させて頂いたうちの所長のスズです。」
「はじめまして、キャロル・ジェンダーと申します。」
女性は紹介に合わせて、改めてこちらに顔を向けるが視線はややずらしているようで目線を合う事はなかった。
彼女は恐らく、私が「視線や表情から色々と読む」とでも勘違いをしているんだろう。まったくもって遺憾な事である。とにもかくにもそういった人からの聞いただけの情報というのは非常に曖昧かつ適当なものだ。
暫く時間をおいても挨拶を返すことをしない私を「いつもの事だ」と気にする様子もなく、和が今度は私に向かって説明を始める。
「まとめると。山本梓さんについて話を聞きに来たとのこと。彼女は死者としての行方不明者リスト入りはしていないが過去に一度記載された履歴が残っていた事が、先日彼女があちらさんに関与してしまった事で判明して、改めて調べている最中という状況だそうだよ。」
「なるほど。こちらからの情報は基本的にはお渡ししないつもり。彼女についてもこちらで管理する。以上」
「は??え?あの・・」
そう言い渡し早々に部屋を出ていこうとする私に対し、死神の女性は困惑している様子を見受けられたが、私の知るところではないので特に気にせず出ていこう。
まぁでも――
「スズ。彼女も今の返答じゃ、上司に説明できないだろう。ちゃんと順を追って説明してくれないか。」
そう来る事は予想が付いた。
でもこれだけ言っておけば、あとは和でも説明できると思うから最低限伝えたつもりなので、この場合は面倒くさがっているのは和の方だと私は思うんだ。自分の事を棚に上げて、面倒そうな顔のまま再び話を始める。
「あーはじめまして、ジェンダーさん。私はスズ。スー。サーズ。まぁ呼び方は任せる。
恐らく君はたった一人で上司とやらに『山本梓について何か情報をとってこい』とでも言われてここに来たんだろう。だが、1時間かけて和にした説明は、過去に山本梓の履歴がある事と現在調べている最中という情報だけだ。上司からの指示が本当に『彼女の情報をくれ』で、今回の君の目的なのであればそちらの札があまりにも少なすぎる。交渉にもならないと思わないかい?君が交渉できないのであればその上司とやらが本来は来るべきではないかね?結局のところ、そちらさんとしては今回の関与を受けて、彼女を放置するわけにいかなくなったからなくなく行動をしているというところだろう。なので、それについては彼女はこちらで管理すると言っている。何か質問はあるかね?」
さて一通り説明してやったぞ。おう、和さんよ。言葉を選べと顔に書いてあるぞ。
だがな、この女はこのぐらい適当に何も考えずに色気一本ぐらいしか持ち合わせていないままここに来たのは明白だ。
見たところ、武器は携行しているがそれは勤務中の定常装備といったところだろう。それ以外には目立った持ち物はない。手ぶらといってもいい。
私の事をどのぐらい分かっているのか知らないが、曖昧な情報だけを頼りにここに来るには彼女はうかつ過ぎる。自分の立ち位置がこちら側にどう見られるか全く分かっていないのだろう。
「・・・・」
暫く様子を見ていても、彼女は出来るだけ表情には出さないよう努めているようだが、言葉にも困っている様子。
こちらの情報を引き出す為の下調べも準備もやはりなさそうだ。
もはや視線を気にしているどころではないと焦っている事からも、本当にこれ以上この女と会話しても何も進まないだろう。
まぁだが、こちらとしては勝手に来てくれた情報として十分だ。
・彼女には死んだ経歴がある。
・だがそれはあくまで過去の履歴のみで現在の死者リストに含まれていない。
・今回彼女が死者に関与したことで、改めて調べる必要が出てきた
つまり、先輩の細かい事は引き続き調べるとしても、彼女は全くの無関係ではなく元々あちら側にも何かしらの繋がりがあったという事だ。
そして今回よりにもよって最も面倒なあの電車に関わってしまったのだろう。
先輩自身の自覚がない様子から、こちら側でも自由に動ける第三者が現在もいるのか、または過去に居たのか、そのどちらかは分からないが恐らく居るのだろう。
その第三者が死者側である可能性は、今回の死神の動きや彼女を見ても確率は低そうだ。先に魔法使い側を調べた方があたりが付くのは早いかもしれない。
これは憶測になるが、単純に死神側は情報不足で困っていて手を付けられないのでは?と踏んでいる。
元々彼らはこちら側に来たがらない連中だ。
彼女が関与して2日目、嫌々に彼女を送り込んだ様子から見ても人手不足か私のことを元々上司とやらは分かっていて、諦め半分という感じで投げ込んできたんだろう。
「一先ずお帰りなさい。お嬢さん。ここにいても君にメリットはない。」
表情こそあまり変えないが、手は膝に置いたまま固まっているし視線は泳いだままでちょっと可哀想にも感じるが、優しくしてやる義理はない。
まぁ手土産一つ持って帰らせるか。
「そうだね、それでは上司にはこう伝えてくれたまえ。」
その言葉と同時に、パッと彼女は目線も気にせずこちらを見上げる。
「日本には”人の振り見て我が振り直せ”という諺がある。君たちが人間から反映したのか、それとも人間が君たちに影響を受けたのか。しかし、それを最初に間違えたのはどちらなのか、一度考えてみたまえ。それによってはこちらも対応を考えてやる。」
そうして部屋を出た。
お茶を持ってきてくれたヒデには申し訳ない。お盆に乗った私の分であろうお茶を受け取ってヒデに告げる。
「お客様のお見送りをお願い」
「分かったー」
さて、状況は分かってきた。
急ぎ先輩の迎えに行かないといけない。既に二日経ってしまったのが悔やまれる。
昨日の彼女は私の方をとても気にしていたが、その他は普通の様子で周りからの変な関与があるようにも見られなかった。
経歴こそ不審点は残っているものの、ここまで早急な対応が必要だと正直思っていなかった。既に変なのに絡まれていなければいいが。
お茶をすすりながら2階に向かうと、後から和が追って階段を上ってきた。
「最後のはなんだったんだ?」
「あれはカマかけとちょっとした嫌味。」
過去にとある大きな事件を起こした男が居た。
その男はとっくの昔に歴史の波に流されてしまい、既に名前も存在も徐々に消えていってしまっているが、その事件と明らかに似た事がその後に起きた。そして、それに関与する何人かはみつけられたが、起こした一部の本命や関係者は未だ行方不明。
死神側は今回の事を明らかな大事としてしまいたくないという事は、さっきの彼女が何も知らされていない様子や上司が出てこない所からも感じられる。そうすると嫌でもある一つの可能性に繋がる。
過去、あの変態男はさも自慢げに言っていたな。
「歴史の一つや二つがもし消えたところで、それすらも時間と共に消え去っていくさ」
まだ可能性でしかないが、今回この可能性に繋がるという事はある意味「可能性」として有力なことと言う事ではないだろうか。
本当に急がないといけないかもしれない。
「山本梓を急いで探す」
「分かった。」
私は一先ず動きやすそうな方法で探すか。
なんだかんだで家に居ればいいが。それは無いと勘が告げている。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




