疑問:要件主義?効率主義?平等主義?
大まかに進めながら細かいことで追加していったりと
後からあれもこれもとなる事もありそうで
実際そんな事もないかもしれない。
そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので
あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。
体にあった小説をお選び下さい。
昨日は大変だった。
とにかく大変だったけど、私にできることは少ない。
なら、地道にやろう。
一周するだけでも結構時間のかかる広い庭を、呼吸と足音をそろえ、庭の外周をなぞるように走る。
あーでも小屋の方は行かない方がいいだろうから、そっちは避けよう。
この季節は走る前はかなり寒いけど、走っていると冷え切っていた指先に、火種が戻ってくるみたい。
「はっはっはっ。」
「・・・・・・で。あー・・・」
あれ?
誰か起きた?
相談所の傍に徐々に近づいていくにつれて、誰かの声が聞こえる。
ルートを外れて、声の方に近寄っていく…
…と建物の傍に、いくつか生えている木の陰に誰かが立っているようだ。
「・・・なので、今日病院行ってみますー。はい。診察を聞いてっごほっ。明日以降についても一度先輩にメールしますね。ごほごほ。はい。先輩もお体に気を付けてーではーごほっ。」
スズだ。
多分、仮病の連絡中みたい。
スズは電話を切りながら、こっちに気が付いて手を振って来た。
「おはようースズ。有給とれた?」
「おはよう。無事。まぁ季節的に病欠が多い時期だ。」
「やっぱり早めに仕事辞めたら?」
「うーん。年末年始で忙しいし、梓辞めたばっかだから。有給まだだいぶあるし、年明け落ち着いたら考えようかな。」
確かにタイミングとしては悪いよね。
営業なら年末の仕事納めやお客様の挨拶で忙しいし、経理もうちは決算が年の終わりと同じ12月締めだから、今は計上やら各部署への請求やらでかなり大変な時期ではある。
「梓も昨日はお疲れ様。今日は相談所はお休みにするから、昨日の話を確認しながら整理しよう。」
「そうだね。分かった。
あのぉところで今さらなんだけどさ・・・こんな事聞かれるの嫌かもしれないんだけどさ・・・・。」
「私の事が気になる?」
「そう、・・・それ。」
今までの事。
昨日の挨拶の相手や対応。
お客様リストに連なる偉い方々。
普通のIT会社の社員ではまず納得がいかない。
「まぁそれも追々説明していこうか。例えばここは相談所だけど、梓なら自分の悩みをどんな人に相談したい?」
「どんな人・・・」
「恋愛相談。仕事の相談。家の相談。プライベートな事や友人関係。相談にも色々な相談があるだろうけど、内容によって相談相手は違うんじゃないかな?」
「それはそうだね。その悩んでる状況に近い人とか親しい人とかかな?」
「そうそう。それはヒント。」
「ヒント・・・。みんな友達的な・・・?」
「まぁいずれちゃんと説明しないといけない時も来るだろうから、その時で。今日もきっと情報過多。」
「それも確かにそう・・・」
「そういえば走ってたね。それじゃ、ここから向こうまで往復。私に勝てたら教える。」
「えぇ?!あ!のあっ!?」
スズは言うや否や走り出したので、反射的にそれを追いかける。
昨日車から降りたスズを見送った時も思ったけど…
スズの背中は、目で追う前にもう一段先へ行っていた。
ちょ待って!
結果は――
まぁ走り始めて数日の私が勝てるわけがなかった。
惨敗し疲れた私はお風呂に入り、3階へ降りる。
「梓さん。おはようー。はは!お疲れ様ースズに負けたんだって?」
「和さんおはようございます・・。ええそりゃあもう、半分走ったとこで振り返ればスズはゴールしてるぐらいも明確な惨敗ですよ。」
「はははっ。まぁ梓さんはまず瞬発力より持久力から行こうと思ってたしね、これからだよ。」
「キューウキュウ。」「キーキーキー。」
「おはようー。えーとクエとセイかな?」
「キュウ!」「キー!」
一番小さい2匹のようだったので、昨日の数字の事を思い出しながら2匹の名前を当ててみる。
2匹とも名前が合っていたようで
「その通り」
と言わんばかりに嬉しそうだ。
「今日は相談所を臨時休業にしたので、一通りメールを確認して、急ぎでないものは明日に回しましょう。」
「分かりました。」
「アズサ。コッチにスワル?」
「あ!ありがとうーそこで大丈夫です!私も手伝いますー。」
多分、ドゥエ。
2番目の子が朝食を運んでいてくれていて、私が座る席を確認してくれた。
そうしているうちに、日向と秀人に連れられたアイザック君。
と、そして食事の席にあまりいないスズも珍しく集まり、7匹と6人揃ったダイニングテーブルは、ほぼ埋まった。
今日の朝食は中華で、卵スープと中華まんとバンバンジーサラダ。
今日も美味しい!
「スズー今日お休みー?」
「そうだよ。昨日の事を整理。圭は起きるとしたら夕方だろうから、それ以外の事からにはなるけど、アイザックの事も話を聞いてどうするか次第で、日向と秀人にもお願いがあるから一緒に聞いてほしい。」
「「わかったー」」
「わかった・・・」
「あ。イザベル。昨日来た魔法使いの引き取りを、ミランダに連絡。」
「忙しいお母さまにする連絡じゃないわ。リリーに伝えとく。」
「ああ。昨日のね。よろしく。」
「和。解析は迎えが来た時?」
「そうだな。魔法省の人が同席した方がトラブルも少ないだろうから、引き取りに来た時するよ。」
「じゃあ。やっぱりまずは朝ごはんが終わったら、お前の話を聞こう。待たせた。」
「・・・本当にな・・・」
「悪い悪い。」
「いや。悪い。いいよ。あんたの言ってることは正しい。今の状況じゃあ俺には何にもできない。昨日、カイルとも話して少しは分かった。」
「そうか。」
アイザック君も落ち着いたようで良かった。
基本的には良い子なのかもしれない。
昨日は怪我も目立ってたし、洋服もぼろぼろだったけど、一晩明けてクマもとれた彼はかなり印象が変わった。
綺麗な茶髪にブラウンアイ、顔も小顔で顔立ちも既に綺麗系。
将来イケメンの要素しかないですやん。
魔法の世界の方々ってイケメンや美人な人が多いのかな?
「さて、移動する必要もなさそうだし、ここでそのまま話す。まずは和から昨日聞いた内容を伺おう。」
食事も終わり、一服しているところでスズが話し始める。
セイ?一番小さい子の定位置はやっぱりそこなんだね。
さっき食事が終わった途端、スズの肩へ登ってたのを発見した。
「あぁそうだな。大きくはあのニュースにもなった。トルストイ家の長が殺人された事件についてになる。
昨日アイザックも一部言っていたが、犯人はトルストイ家に設置している結界の中に現れてトルストイの長エドモンドを殺害し、そして結界を壊すことなく消え去った。
というのがアイザックの話だ。
警察側ではその犯人という人物の痕跡が残っておらず存在が未確定な為、結界の中に居てその場で一番近くで発見された第一発見者のアイザックを容疑者として取り調べた。という事になっている。」
第一発見者が犯人である可能性は高いっていうのは分かるし、アイザック君の証言の人間の痕跡が見つからないとなると確かにアイザック君にとってかなり厳しい状況だよね。
「ふむ。それで家を追放されて奴隷になっていたと?」
「・・・家からは見栄えが悪いから、正式に追放された訳じゃない。でもほぼそんな扱いだったから、犯人を見つけるために俺が家を出て行ったんだ。」
「それでなんで奴隷商に捕まった?トルストイ家として名前が残ってるなら、奴隷にはならなかっただろう?」
流石に家がある子供を、奴隷にすることはないのかな?
なら、どうして?
「奴隷の奴にも俺と同じ奴がいたんだ。そいつも容疑者扱いになって、奴隷になったって言ってたんだ。そいつは犯人の事は全く見てないって言ってたけど、他の奴隷にもそういう奴がいるかもしれないと思って・・・」
「一事例じゃないかもしれないのか。他の奴隷は見つけられたのか?」
「・・・・俺を買った奴隷商がいうには、最近そういう奴が多いっては言ってたけど、実際には誰だかは教えてくれなかった。」
最善の方法だったとは言えないかもしれないけど、私でも同じことをするかもしれない。
選択肢が一つずつ剥がれ落ちて、アイザックはただ最後に残った綱に、飛びついただけなのかもしれない。
…そんな気がする。
「じゃあそれは一先ずおいておく。お前は犯人を見たんだろう?犯人はどんな奴で、どこから来てどこに去っていった?」
「・・・・」
「お前が協力しないなら、犯人を捜すなんて無理な話だが?」
「・・いや悪い。・・そうじゃない。お前は信じてくれるのか?結界の中にいきなり男が現れたなんて言ってる子供の話。」
「それが前提で相談しに来たんだろ?それともやっぱり犯人はお前か?」
「!!!・・・そうじゃない!!俺が親父を殺すわけがない!!!!」
「キュ!?」
急な大声にセイが驚いた。
「・・・わるい。・・・男は多分190?ぐらいのかなりの大柄で、黒い帽子とコートを羽織っていた。顔色が悪い感じだったと思うけど顔ははっきり見れてない。」
アイザック君は、一生懸命嫌な記憶を思い出そうとして、顔をしかめる。
「手には重そうなナイフを持ってた。俺は親父が刺された後から、たまたま親父の部屋に行ったんだ。
男は既にナイフを親父から抜いて立ち上がってた感じで、部屋に入った時その男と目が合って、その後ろに血まみれで床に倒れてる親父を見つけたんだ。」
家の中で急に知らない人が居て。
お父さんが…
「だから、男がどこから来たのかは分からない・・・。
その後に俺が男に殴りかかろうとしたけど避けられて、床に転げて振り返った時には男は部屋のドアから出ようとしていたからそれをすぐに追いかけたけど、ドアを開けて廊下を見た時には男はどこにもいなかった。」
「そのドアは一度閉まったのか?」
「は?」
「男は部屋を出た後、そのドアは一度閉まったのか?」
「・・・・・・あぁそうだな。そうだ。男がドアを閉めて出て行ったから、俺がドアノブを握ってドアを開けてから追いかけたんだ。」
「だけど、空間移動についての魔法痕跡はなかった。と」
以前、私の家で詐欺師の男がドアを開き、マンションの廊下を別の部屋に変えた時の事を思い出した。
「そうだね。そっちの状況報告は、見せてもらえないか聞いてみてるけどまだ返事はない。」
「内容は分かった。」
「・・・・・・・・・それで」
「お前次第だな。」
「・・・・は?」
「こっちは昨日の事といい、他にも抱えてる事がある。お前の問題を最優先に調べる事はできない。つまり多少は時間がかかる。」
「・・・・じゃあ無理って事か?」
「時間がかかる事を無理だとすぐに紐づけるのは良くない。今の話だけではもちろん情報も少ないし、確認のしようがない。
確実にその男が居ると確認する為には実際の現場の確認もするべきだと思われるし、和が依頼している警察側の状況証拠も確認する必要がある。
それにもしも複数類似した事件があるって事は、これはまだ何とも言えないがもしもの可能性としてこっちの事件とも関連しているかもしれない。」
「・・・・わかんねぇよ。俺バカだから・・・」
焦りもあるだろうし、何よりアイザック君は恐らく感情的な部分からも日向達よりもまだ子供に近いのかもしれない。
それを手順が必要だとか、証拠集めとか言われても困るのは分かるけど説明も難しいよね。
「お前の話を聞いて『はい。そうですか』とはならない。
和は別の人間からの情報を集めてみるし、私も現場を確認したい。
そうしたちゃんとした結果や内容が分からないと、お前も納得できないと思うぞ?
多分、どっかに逃げたんだろ?って言われても何の答えにもならんだろ?」
「・・・そうだな。」
「だから調べるだけでも時間が必要だ。そして、お前の事件を最優先にするわけじゃないからそれも考慮してもらいたい。
それが無理だと思うなら、昨日と答えは同じだ。
自分でやれるだけやってみればいい。ただし奴隷になるなんて馬鹿な事はやめとけ。」
やっぱ基本的には、ちゃんと相手に合わせた説明を怠らないのは凄いなぁ。
「・・・・・・絶対だぞ」
「受けた相談を無碍にすることはあんまりはしてない」
「たまにするってことじゃねぇか。」
「調べないと結果が分からない。こちらは犯人がいる前提で調べるが、本当にお前が犯人の可能性もあるだろ。」
「・・・・・・」
「お前が途中でも納得いかなかったら、その時にやめてもいい。好きにしろ。」
「・・・・・・金はかかるのか」
「かからない。が、どうせ暇だろ?こっちは今手が足りてないんだ、調べている間は手伝ってくれて構わない。犯人の事で調べる場合もどうせ手伝ってもらうかもしれないしな。」
だけども、スズって…
いい意味で誠実なんだろうか?
余計な飾りを削ぎ落としすぎて、骨組みだけがそのまま突き出てる…
調べるまで結果は分からないって、意味だとはわかるけども…
ある意味、偉い人とか子供とか関係なくすべての人に平等なんだろうなぁ
まぁこういった部分が和さんがよく言う『言い方に気を付けて』の部分なのだろうけど…
「アイザック。行く場所がないなら、一先ずここに居てくれないかな?調べてみるだけ調べるから、何もできない状況よりは多少はアイザックの探す答えに近づくと思うんだ。」
そう。
そういう言い方だよね。
厳しい面とサポートする面はどちらも必要要素だと思うから、ある意味二人合わせてバランスが良い。
「・・・こいつ。同居人なんだろ?本当に魔法世界の犯人を捜せるのか?」
「スズはある意味、その辺の魔法使いより魔法世界の事に詳しいよ。俺よりも」
「・・・まじか・・・意味わかんねぇ」
そうなのか・・・。
朝の話といい、もしかして知識量が凄い多いのかな?
確かに大抵の事は把握してるみたいな感じはする。
「・・・分かったよ。頼む。お前のやり方でいい。」
「分かった。じゃあ先ずは状況確認になるな、和は引き続き報告書を見せてもらえないか確認。で、家自体も直接見たいからそれは家の人に頼めるか?アイザック。」
「・・・・分かんねぇ。でもまだ多分結界に入れるみたいだから、すげぇ嫌な顔はされるかもしれねぇけど頼んでみる。」
「1回で良い。現場を見ないと分からない事もあるからな。そういえば親父さんは出血ショック死って事でいいのか?」
「・・・・・・わかんねぇ・・・。ナイフには血がついてたし、親父の腹からも血が流れてた。」
「和。その辺も一応確認してくれ。遺体はどうなった?火葬して墓に入ったのか?」
「叔母さんはそう言ってた。」
「なんだ、お前墓参りもできてないのか。」
「犯人を見つけてからじゃないと、親父に顔見せできねぇよ・・・」
「ふーん。まぁいい。ヒナヒデ改めて昨日使った部屋の準備頼む。」
「「わーい!!アイザックも一緒に住むの?よろしくー!!」」
私に説明する時もそうだったけど、要件主義というか効率的というか・・・。
今回は上手く落ち着いたけど、これは人によっては確かにトラブルになりそう。
和さんの苦労が感じられる。
いずれにしても暫く一緒に暮らすんだし、私も仲良くできるように頑張ろう。
「お母さまにはそのまま伝えていいのかしら?」
「いいよ。もしコネがいるんなら報告書やら、私が別に頼んでいることやらで滞っているから良いとこにお願いしてくれてもいい。」
「私は別に顔は広くはわないわよ。」
私と同じこっちの世界の人なのに、魔法世界にも顔が広いスズな感じ。
知れば知るほど、霧の向こうに輪郭だけが増えていく気がした。
もしもお時間があるようでしたら
一文二文、はたまた評価頂けたら
ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。




