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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第一章 境界に立つ者たち
2/79

疑問:あれは夢?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「現実は小説より奇なり」

 確か、イギリスの有名人の言葉が元になっている言葉だったとテレビで見た気がする。

そんな語源のことは今はどうでもいい筈なのに、目の前の出来事に対して考えることを放棄したい気持ちが、とっさに頭に浮かんだ言葉の語源についてまで考え続ける事の方へ逃げてしまった。

それでも適切な言葉を思いつくあたりには目の前の出来事に現実性が感じられず、常識ではありえないと現実逃避に逃げているとみせつつ、今目の前で起こっている事を受け止めてはいるらしい。


 もはや思考の中でも私は逃げ場を見失っている。


 小説や映画等でしか起こらないと思っている事の中でも分かりやすい物だと、魔法や妖怪や幽霊といった一般的な大人からは「まずありえない」とされるSFやファンタジー的な事だと思う。

そんな事を実際に目にした時、一般的な大人の思考は私の様に現実逃避に走るんじゃないかな。

まだ現実逃避に走りたい気持ちからか関係無いことに考えを進め続けて、だらだらと何が言いたいかというと、目の前で起こっている事が全く理解出来ない時、私の場合はその出来事について、解決や対応を考えるのを放棄して全く関係ないどうでもいい事を考えてしまうらしい。


私って本当にもう…


 あぁ、大学卒業したばかりで社会人になりたての頃を思い出す。

最初は挨拶の仕方や会社の先輩・上司の名前を覚える事から始まり、電話対応の方法、資料の場所、お客様情報の管理方法などなどなど

そんな一気に詰め込まれる情報を前に私は窓の外を眺め「今日はいい天気だなぁ」と考える事が多々。

まぁそれでも?何年も社会人として働いてきた私にも取得できた社会人スキルと呼ばれるものを一つご紹介しよう。

相手が上司でも部下でもどちらでも、もし相手に質問をする場合は「短く。簡単に。分かりやすく。」するべし。


--そして、そのスキルが今まさに光る。


「家に帰っていいですか?」


 しかし何故かスキルの行き先が、偶然にも会社の部下?らしい人。

でも残念ながら、ここは会社ではないのだけども、偶然そこに部下にあたいする人がいたのだから仕方ない。

だがそんなことはどうでもいい!

これこそが私が今この場で出来る!

私の最重要事項!


その質問する相手が例え、私が今働いている会社の部下だとしても、家で家族が待ってる私にとっては、とにもかくにもそれだけは確認したかった。


「そうだね。口止め料で一先ず500万ぐらい用意するのに、少し時間がかかるからもう少しだけ待ってて。もし家族の迎えを呼んだりするんなら、ここでは電話が使えないからこのスマホから連絡して。」

「え?!わっ!おっとぉ!」


 部下らしき人は特に大きな反応もなく「え?もしかしてこんなに焦ってる私の方が変?」と思うほど、普通に何事もなく淡々と返事を返してくれた。

そして急に投げられたスマホをキャッチ!

落としたらどうするの。危ないなぁ。

あ。

でも、帰れるんだ。それは一安心。

ん?安心も束の間、再度言われた言葉を頭の中で繰り返してみる。

最初の方で何かすごい事言ってなかった?


「ありがとう。は?え?ちょっま・・・」


 投げられたスマホをとっさにキャッチする為に、スマホに集中して視線をすぐに部下らしい人の方に戻す。

が、部下らしいその人は今にも部屋から出ていこうとしていた。

引き止めるにしても、はて?

引き留めたところでその後は何と言えば良いのか、続きが行き詰まる。

そうして大変遺憾ながら、無事に部屋のドアが閉まった事を確認した。


 一人静かになった部屋で、改めて部下らしい人(多分、恐らくきっと部下だからもう部下って事にしておこう。)の言っていた言葉を繰り返す。

口止め料?金額も凄くなかった?

私はもしや闇金業者にでも手を出したの?

ドラマ等でしか聞かない、聞きなれない単語にさっきまでの混乱とは違う、変な焦りが出てる。

いや、なんにせよ貰える物は貰っておくべき?

でもそれにしてもその金額は急に頂くには大きすぎませんか?

ややや、やっぱりお断りしよう!うん!

右往左往と悲しい事に低所得者の私はお金に一瞬つられてしまったが、天秤にかけた結果。

恐怖の方がどうしたって大きかった。

もし、後から内臓を売られたりするような事になったら怖すぎるし!

はっ!もしや部下は893さんだったの?!ここはヤク〇さんのアジト?!

いや、まてまて私。勝手に膨らんでいく妄想を一先ず押しとどめる。


「ふぅ・・・はぁ・・」


 深呼吸。


 分からなければここで何を考えていてもしょうがない。

そう。まずはやれることをやろう。

まずは自分のスマホを確認する。

なるほど、さっき部下が言っていた通り何故か圏外で連絡出来ない様子。


 ここはどこなんだろ?日本で圏外になる場所は限られていると思うのだけど・・・。

疑問は一旦置いておきたいのに、やはり気になる事が出てきてしまう。

さて、次にさっき投げられた部下のスマホを確認させて頂く。

スマホには画面ロックの鍵はかかっていないようで、すぐに映った画面の右上を見ると何故か電波が繋がっている!?

いやいや落ち着け、私…


再度深呼吸。

「ふぅぅ・・・」

深呼吸をしながら、ふとスマホを借りた目的を考えてみた。

家族に電話するの?電話をかけるべきだろうか?

私の家庭は子供が二人と夫の4名暮らしといたって普通の家庭構成だ。

現在は「12月11日(木)18時16分」のようだ。


 もしも普段の平日に私が残業していた場合は、まだ会社にいる事もありえる時間内。

一番心配の対象となる子供は、一番上の子である姉は現在高校生で二番目の弟は中学生なので、どちらも既に私生活ではそれなりに親離れしていて、多少ほうっておいても家にある物を適当に食べたり、無ければないで自分で作ったりとしているし、もし夫が私よりも先に帰っていた場合はちゃんと夕飯の準備をしてくれるので、普段からあまり残業の度に連絡をすること自体が少ない。

普段はしないのに連絡すると逆に変に思われるだろう。

となると、今わざわざ連絡する必要ないと思う。

やっぱり焦って行動する前に、ちゃんと落ち着かないとね。


 一先ず、落ち着いた所でさっき置いておいていた疑問が思い浮かぶ。

さて、ここはどこだろう?

私のスマホが圏外ということなので、お借りしている部下のスマホでマップを開いてみる。


 おや?

どうやら東京都内にいるようで、近くにある駅は東京駅のようだ。

変な場所でない事が確認出来た事は安心なのですけども、やっぱり疑問が残ってしまった。

東京都内で圏外になるのは私生活からしても地下鉄ぐらいしか思いつかないけど、部屋の曇り一つない大きな窓からは既に時間的に真っ暗だからあまり様子は分からないけど、たしかに地上のように見える。じっくり見てみても地下っぽくはないんだけどなぁ。


 そもそも、何でここにいるんだろう?ここに来る前は何してたんだっけ?

時間や場所がだいたいでも確認できたからなのか、多少余裕が出てきた思考の中で徐々に整理してみる。


落ち着いて考えてみよう。


 今日は一週間の半分を過ぎた木曜日でど平日。

いつも通り会社に出社して、午前中はメール整理と部署内のミーティング。

あーあの爺のせいで仕事が余計増えた事をついでに思い出してしまった。


 ええとそうじゃなくて戻して、その後の午後はお客様との打ち合わせが2件。

どちらも長い付き合いのお客様だったから、いつもの世間話や進捗確認やらなんやらで短めに終わった。

その後、デスクに戻ってから議事録とか資料とかをまとめて、えーっと確か全体の作業を確認して残りは「明日で大丈夫だな」と思ったから、17時過ぎに爺が居なくなったタイミングで退社した。


うん。いつも通りだった。


 そして、いつも通りの電車で帰ろうと駅に向かった。

途中で猫を見かけたっけ?まぁ、そんな感じでいつもの駅に着いた。

いつもの改札口

いつものプラットフォーム

帰宅時間なので私と同じく電車を待つ人がそれなりに立って居て

いつもの電車、に乗ろうとした。

いつもの電車?あれ?


 17時に出た会社。

そこから今に至る約1時間。

何かあった筈。”何が”あった?いつもの電車に乗ろうとした筈。

何故かそこからが曖昧になってしまう記憶を巡る。

さっきまでの会社での出来事を思い出した時に比べて、急にゆっくり時間が進む記憶の映像。

そうだ。さっきの部下を電車に乗る前に見かけた気がする。

お互いに帰り道だったし、わざわざ話しかけるほどの話もなかったから、声をかけようとはしなかったんだと・・・思う?


 はっきり思い出せない記憶に対して言葉が曖昧。音。電車が来る音。聞こえてきたアナウンスの声…

–コンコン


「あ。はい」


 考え込んでいたところでの急なノックの音に思考が止まった。

つい反射的に返事をしてしまった。あるある。


「失礼します」


 てっきり、先程部屋を出ていった部下がやっと戻ってきたのかと思っていたけど、違う人が入ってきた。

20代後半〜30代前半ぐらいの年齢がかなり分かりづらい感じの男性だった。

パッと見は若い感じなのに大人っぽい雰囲気もあって、服装もシルエットが細めのシャツにジャケットとカジュアル気味なのに、身だしなみが整っているから清潔感があるちゃんとした感じの人だ。

特に第一印象で嫌な感じはしない。でも、全く見覚えがない人だったのでつい凝視。


「急にすみません。出来ればご挨拶をしておきたかったので、初めまして僕はかずといいます。」

「は、初めまして。山本梓やまもと あずさといいます。」


 まずは挨拶には挨拶で返す。

というか気がつけば10分ぐらい経っているようで、だいぶ考え込んでいたらしい。

あの部下はいつ頃戻ってくるのだろう?


「ああ、スズはもうちょっとしたら戻ってきますので、ご安心してください。本当なら既に普段の帰宅時間を過ぎてますよね。待たせてしまって申し訳ありません。」

「あぁいえ、まだそこまでは遅くないので、今から帰れれば大丈夫です。」


スズ?話の流れ的にはあの部下のことだと思うけど、何故かしっくりこない。

部下の下の名前?なんだっけ?


「こちらのご用意ができ次第、ちゃんと車でお送りしますね。」

「あ。送ってくださるんですか?助かります。あ。すみません。ありがとうございます。」


 良かった。車で送ってくれるということは恐らくは無事帰れるという事だろう。

太平洋の海に沈みませんように。

私にとって一番大事な事が改めて確認できた。


 そんなこんなとしていると、足音とともにスズ?部下が戻ってきたようで、その建物を出て案内して頂いた、大きめの車に乗った--


--ところまでははっきりと覚えているのだけど…


一部残っている恐怖や不安と同時にやっと良く分からない場所を出て、帰れることへの安心感がまざり合いながら、常に緊張していることもできない私は急に襲ってくる疲れを感じているうちに、気が付けば私の家のマンションの前で一人で立っていた。

そして最後に部下は”500万円”と記載された小切手とともに

「今日のことは家族・友人・知り合い誰にも言わずにそのまま忘れてください。それでは明日、また会社で会いましょう。先輩」


 最後に耳に残った言葉と確実に手にある500万円の小切手。

そして、反対の手にはほぼ忘れかけていた会社の鞄を手にしていた。

マンションの前で暫くボーっとしていたが、頬を掠る風が冷たく感じたことをきっかけに急にマンションのフロントの明かりが眩しく映り、それとは逆に立っている道が一層暗く感じる。

その対照的な暗さを自覚するとさっきまで気になっていなかった筈の寒さで急に身がすくむ。

 

「帰ろう」


 社会人あるあるだと思うけど、仕事をしていると大抵のことはひとまず忘れられる。

もちろん、それは一旦記憶の引き出しに閉まっているだけで、完全に忘れてしまえる訳じゃないけども。

だから、ふとした瞬間に引き出しは開いてしまうのだ。


しかも、タイミングも条件も悪かったと思う。


仕事が数日と続けば、引き出しの記憶は徐々に押し込まれて過去になっていき、本当に忘れてしまう事もあったかもしれないのだけれど

金曜日の次は仕事のない土曜日がきてしまうし、更には金曜日に出社した時には居るのだ。

あの部下が!


「おはようございまーす!先輩!」


 昨日の最後に見た部下が、同じ恰好のままで

(スーツだったから正確には違うと思うけど)

記憶を引き出しの奥に押し込める隙は残念ながら無かった。

しかし、金曜日に会った彼女はいつもの会社で見る”いつもの部下”で、昨日会った時とでは雰囲気も印象もかなり違う。

昨日とはうって変わって、まるで別人のように明るく挨拶をしてくる部下に対して、正直私はかなりぎこちなかったと思う。


 仕事中も視界の隅にあの部下が時々入ってくるものの、彼女はとくに変わった様子もなく昨日の事は本当に夢だったんじゃないかとすら疑ってしまう。


 そんなこんなと一人悶々としながらも、いつも通りの仕事を無事終えられた。

(昨日のミーティングで爺が追加してきた作業の為の仕様書作成を提出してみれば、あれもこれもと追加が重なりそのせいで今日は本当に残業する羽目になった事はさておき。爺ぃぃぃ)

そしていつも通りに家に帰り、いつも通りに夕飯を作り、日常会話をちらほら。

おい。息子よ体操着は他の洗濯物と分けなさい。


 と、途中忘れる事も出来たのだけど、結局は翌日に休日が来てしまったのだ。

更に不運?な事に子供達は気が付けば出かけてしまっているし、夫も買い物に行くとかで子供達に朝ごはんを用意して早々に出かけてしまったので、私は一人広いベッドの上で二度寝に逃げようか悩んでいるのが今です。


ちゃんと通話が通じていることを、なんとなく確認してスマホを見る。

現在土曜日8時24分。

いつまでも布団の中にいるわけにもいかないけど、特に急いでやらないといけないことも思いつかない。

忙しければそれに集中できるのに…

何もしていないよりはと、だらだらスマホをいじり始めてみる。


–異世界に行ってみたら~

–実はあった妖怪の~

–魔法使いになった~


忘れる為に見ているのにアニメや映画の広告が嫌でも目につく。

異世界。

妖怪。

魔法。

そんな楽しそうな広告は普段の私なら明るい印象をもった筈なのに、今は全く反対の印象が膨れ上がり


閉じかけた引き出しを開けてしまった。


”あの電車”に乗っていたのは多分、人間じゃなかったと思う。

あやふやなままでわき上がってくる記憶

昔の映画のような解像度の低い映像

そして一緒に流れる音声


聞きなれないものだった。

明らかにいつもと違うアナウンスの声。なんて言ってる?


–「まもなく、2番線に京橋区行きが到着いたします。白線の内側でお待ちください」


京橋区?聞いたことない地名なのか駅名なのか。

目の前のスマホの検索画面に入力してみる。

「東京都中央区の南部、現在の中央区の一部」

「現在の中央区の一部」?今は中央区?

つまり「京橋区」は昔の地名という事かな?


 検索画面に映る茶色い地図の写真を眺めながら、引き続き、記憶の映像と音声を再生。

そのアナウンスが流れ、電車が来る時の風によってスーツはバタバタと体にあたる。

スーツがたなびく事に意識が向き

そしてそれが徐々に収まっていく様子を眺めている

それは電車が到着したことを意味する。


 電車?映像には黒い靄がかかっている。

あの部下がまさに今来た電車に乗ろうとしたのを見た気がする。

あ。私も乗らなきゃと思って、電車に足を乗せようとした。


--その時。


急に視界が夜から朝になった様に晴れた。


それが急に眩しく感じ、瞬きをしたのかもしれない。


目を開いた。そこには乗り込もうとした電車は・・・・なかった?


でも既に踏み出していた足をそのまま踏み込んで


 とすれば私は多分、プラットフォームから・・・落ちたのかも?

でも、落ちた時の記憶は出てこない。

体をどこにもぶつけた様子もない。

あざやケガも見当たらない。


 その後は?

曖昧な記憶を探るように、目を閉じて更に深く深く…

「このまま連れて行くわけにもいかない。」

あ。

そうだ。部下の声。

いつもの会社での元気な感じじゃなかったけど、確かにあの部下の声。

声の抑揚がないけど少し焦った感じの声。


 暫く繰り返しそれ以外の事も探してみようとしてみたけど、なかなか映像は思い浮んでこない。

次に出てくる記憶はあの部屋で目が覚めた時。

ソファの上で寝ていた時の事。


 そのソファは竹か薄い木材を編んで出来ていて、その上にクッションがのったアジアン風なカウチという感じ。

枕替わりのクッションに頭を乗せ、手触りのいいブランケットが体に掛けられていた。

床からは暖かい空気が流れているのか寒気は感じない。

とてもあたたかかったので、緩やかに目覚めた気がする。


ただ一つ

スーツで寝ていたのでそこだけ少し寝苦しかったのだけど。


起きてすぐに目がついた先に、同じデザインの一人掛け用のソファに座ったあの部下


「おはようございます。先輩」

「お、おはよう」


 部下は起きた私に気が付き、スマホから顔を上げ抑々のない挨拶をしてきた。

挨拶を返しながら体を起こし、部屋を見渡すがさっぱり見たことのない部屋だった。

全体的な雰囲気は洋風と和風を足して割ったような感じ。

床はフローリング、壁や窓は和室デザインみたいになっているけれど、アンバランスな感じはなく堅っ苦しくないバランスのとれた私好みの部屋。


「体調は如何?」


部下は普段の会社ではまず見たことがない無表情な顔でこちらの様子を伺う。


「・・・特には・・・」

「そうですか。」


 え?以上?え?

ここはどこ?

私は山本梓。

あなたは部下(そう!たしか池田)?

どうして私はここにいるの?なんで私は寝ていたの?


 特に説明してくれる様子もない部下に、私の中で出てくる

疑問!疑問!疑問!

私から聞かないと教えてくれなさそうだったので、まずこれだけでも確認しておかなければと

私は「短く。簡単に。分かりやすく。」質問。


「家に帰っていいですか?」


 改めて、一昨日の事を再び思い返してみる…

けど、どうしても電車に乗ろうとしたところからの記憶がぼんやりしている。

視界が明るくなったと思ったら

目の前に電車はなかったけれど

一瞬見えた気がするあの電車はなんだったんだろう?

私の記憶違い?

夢?


あ。そうだ。

記憶を思い起こすことになった”きっかけ”から再び流れ出す映像が少し見やすくなった。

乗ろうとする前に見た電車の中には、明らかに人じゃないものが居たように見えた。

目が一つしかない黒い何か。

髪の毛っぽいけどわかめのような頭をして顔の向きが前か後ろか分からない何か。

あ、でも普通の人っぽい人も居た。

座っていたご年配の男性。

女子高校生っぽい子達。

電車から見た窓の外にもキラキラと蝶々のようなものが飛んでいた。


「異世界」そんなきっかけの言葉から、その映像はまるで急に違う世界に来てしまったような。

見ている物が信じられない映像だった。


 だからその時私はびっくりしてとっさに周りを見た。

プラットフォームに居たはずの他の人が見あたらない…

そんな中で唯一あの部下が映り、部下は別の入り口からその電車に乗ろうと…

「あ。」

それを見た私も乗らなければと思い、足を前に出した。


そして消えてしまった電車。


そうして気が付けば知らない部屋にあの部下がいた。


 あの部下。

昨日の会社内ではなんとなく目がついつい向かってしまいがちになり、気が付いた時には常に部下を目で追ってしまっていた。

でも彼女は特に変な様子もなく、あまりにあの部屋での印象が違うので実は別人だった?

もしかしたら双子だった?

それぐらいいつも通り明るく元気に、ちょっと要領が悪い部分はあるがどんな作業もさくさくとこなしていた彼女。


 彼女は確かだいたい3年ぐらい前に入社してきた。

事務メインということで最初は私が作業を教えることになったが、一通りの作業に慣れてきたあたりで、年末に向けて経理の人が誰か手を貸して欲しいと相談してきたので、彼女は急にそっちに移ることになったんだったっけ?

最近ではたまに営業部に居たり、経理部や違う部署にも行ったり来たりしているみたいで、手が足りない時のお手伝いさんみたいなポジションが多い。

だから、最初の時以降は殆どお互いに話すことも喋る事もなかった。


「映画とか見る?」

「見ますよ。これといったこだわりとかジャンルはないですけど」

「最近どんなの見たの?」

「あー確か知り合いの子と一緒にドラ〇もんを見に行きましたよ!」

「うわぁ、懐かしい。子供の時以来全然みてないけど、最近のどうだった?」

「いろいろな道具を見てると、良いアイディアになりますねー」

「確かに!どこ〇もドアとかあったら良いよね」

「そうですねぇ。でも本当にあるかどうか実は分からないですよ?」

「ん?どういう意味?」

「もしもあったら良いですよねって意味です。」

「??そうだね?」


 確か彼女が入社して一週間ぐらいの時に会話のネタに困って、無難に映画の話を振ってみた時の会話だったかな。

でも、その会話で私の中で彼女の事はちょっと「不思議ちゃん」っぽい感じがして、その後はあんまり仕事以外の話をしなかった。

最近の彼女は他のメンバーの話を耳にしていると、気さくで明るく普通の良い子っていう感じ。

22歳か23歳で身長は低め(たぶん150㎝ぐらい)。

髪は3年間ずっとショートもロングも見たことがない。

いつも肩上ぐらいで常に同じ髪型、化粧も最低限。

スーツはパンツスーツが殆どで黒かダークグレー系しか記憶に出てこない。


「最近の子にしては」

というとやや年寄くさい言い方だけど、彼女は年齢の割には地味な恰好が多いかも。

結局彼女とは最初の頃からそこまでやりとりもしていなかったから、改めてよく考えた所で知らない事の方が多い。


 昨日は途中で部屋に入って来た男性の和さんって人が、車を運転して私を家まで送ってくれた。

その時に私と彼女は後ろの席で隣同士に一緒に座っていたけれど、運転中も何も喋らなかった。

私も緊張やらとすごく疲れていたし、会話する気が起きなかったのだけど…


 そして最後に部下から小切手を渡されて

とっさに断ろうとする時に彼女は真剣な表情で

「誰にも言わず、そのまま忘れてください。」

と言ってすぐに車のドアは閉められてしまった。


 なので結局受け取ってしまった小切手。

口止め料って言ってたけど、具体的には何を口止めされたんだろう?

不思議な電車の事?

不思議な生き物の事?

部下自身の事?

起きた時のあの部屋の事?


 まぁどれだったとしてもこんな事を誰かに言ったところで、私も曖昧な説明で「夢でも見たの?」ぐらいにしか言われない事は目に見える。


疑問「不思議な電車に乗ろうとして、気が付いたら知らない場所に部下といた」

仮説①:極度の疲労、ストレスから記憶が混濁していた、つまり夢だった

仮説②:イベント(ハロウィン的なもの)だった

仮説③:単純に乗る電車を間違えて乗ってしまい、気が付いたら部下と知らない場所に着いた


・・・ダメだ。


どの仮説にしても口止め料を渡されたことに理由がつけられない。

昨日はついついあの部下の事をずっと見てしまってはいたけれど、改めて部下に「あれって夢だったの?」と聞くのは正直無理がある。


「うううう。」


悶々と布団の中で悶えていると…

-ピンポーン

玄関のチャイムの音。布団から出よう。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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