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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 第三章 理解は救いにならない
119/122

答え:木を見ることは大事。森もいつかは見てくれれば

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

何も起きていないように見える場所ほど、確認には手間がかかる。

静かすぎる場所ほど、見落としは潜む。


「そうなのかい。じゃあ相談所は今スズ一人?」

「いや。昨日上に上がったら、居座ってる神様はそのまま残ってた。」


昨日の夜のことだ。

作り置きを食べに三階へ上がると、勘右エ門も普通に食べていた。

みんなが出掛けることも伝えていたが、本人は特に問題ないそうなので、そのまま放っておくことにした。


「それはまた、随分なのが残ってるね。」

「そのまま居座ってる。」


今朝、相談所の玄関に時間通りにアンジェラが迎えに来た。

そのまま、交渉人のドアを使用して、青森県の住宅街に出る。

ドアの出口は目的地から少し離れていたため、二人で話しながら、住宅街を歩く。


「そりゃまた大所帯になったものだね。」

「土曜日だけど、山本梓の家に誰もいない可能性もあるから、その場合は黙ってはいる予定。」


「・・・まぁ。そうなるよね。誰か居た場合は?」

「アンジェラが山本梓の同級生って事で、挨拶して。」

「はぁ!?なんで私?」

「私だと若すぎる。生存していた場合、山本梓は30代後半。」


アンジェラが嫌そうな顔をする。

日本人っぽくはないけど、今時なら海外出身の同級生でも問題ないだろう。


「実家に人が居るとしたら、山本梓の父親と息子。私は友達だとでも言って、適当に話を合わせてくれればいい。」

「あー・・・。まぁ空き巣に入るよりは、いてくれた方が良いけど・・・。」


住宅街なので車や自転車、歩行者もちらほら。

久しぶりに、人の生活の中を歩いている感覚があった。

高層ビルのような高い建物は少ないけれど、アパートやマンションも見えるし、人は多そう。


「怪異との境界は大丈夫なのかい?」

「山側からは離れてる。担当にも伝えてある。こっちから動かなければ、まず問題ない。」

「向こうから来る可能性は?」

「ゼロじゃない。けど、父親と息子が無関係なら優先度は低い。魔法の痕跡だけ見ておいて。」


父親と息子の二人も、魔法使いの可能性はある。

その場合は、目的の二人である宗一郎と亜季子とつながりがある場合もある。

この二人に接触できれば、話は進みそうだが、トラブルの可能性は上がる。


「山本梓の現場については、魔法が山本梓本人に対して、直接的な事故に繋がったかどうかは、結局分からなかったよ。」

「そうか。」


魔法の精神介入などで、自殺を促すなどの誘導をした可能性が残るけれど、それは関与した魔法使いにしかもう分からないということになる。


「それにしても、フィフに頼るなんて珍しいじゃないかい?」

「保護環境を維持する上で、条件が高すぎる。」

「じゃあ、あっちはまだマシってことかい。」

「マシなだけだ。安全ではない。」


「…完全じゃない。相談所も同じ。

死神に強い移動制限はないし、アディール・クラーレンも条件さえ合えば通れる。」


精霊の加護で感知はできる。

ただし、アディール・クラーレンの扉だけは別だ。

条件が合えば、感知より先に通される可能性がある。


「なるほどねー。カイルがよくOKしたものだね。フィフと相性合わないんじゃない?」

「初めて会うから、一応伝えた程度。圭もいるから最悪喧嘩になっても、多分大丈夫だろう。」


フィフは本質的な事を言うときはマシだけど、おちょくるときはおちょくるから、圭とも昔喧嘩したりしていた。


「そりゃ、次会うのが楽しみだね。この次の角を曲がれば、目的地の家じゃないかい?」


アパートの角を曲がる。

左側に、三つ並んだ一軒家。

その二つ目が目的の家。


見た限り、多少古びてはいるものの、手入れは行き届いていた。

小さな青色の屋根をした一軒家。


「さてさて、どなたかいらっしゃるかね。」

「言葉遣いに気を付けて。」

「おっと。それもそうだね。」


–ピンポーン


チャイム音が、家の中でも響いている。


しばらくすると、足音が聞こえる。

人がいるようだ。


「はーい。どちら様でしょうか?」

「こんにちは。急にすみません。山本さんのお宅でお間違えないでしょうか?」


父親かもしれない。

年配の男性が扉を開いた。

アンジェラが敬語で、挨拶をする。


「はい?そうですけど、どちら様ですか?」

「失礼いたしました。私はアンジェラと申しまして、学生時代に梓と友達だったんです。」

「おや。友達の方なんですね。初めまして、梓の父、弘和といいます。」


「あ!お父様なんですね。初めまして。

・・・私、久しぶりに実家に戻ったら、なんだか梓の事を思い出してしまって・・・。

なんとなく、近くまで来てみたら家もそのままだったので、ついお呼びしてしまいました。

申し訳ありません。こっちは私の友達です。」

「初めまして、亜希といいます。」


山本亜季子の名前を、一部借りた。


「あぁ。そうだったんですね。折角いらっしゃったのですから、中でお茶でもいかがですか?」


嫌そうな顔はなく、柔らかい雰囲気で迎えてくれた。


「急な訪問の上、ありがとうございます。こちら良かったら、念の為にご用意したものですが、是非お受け取り下さい。」


アンジェラが、念の為に用意しておいた和菓子を手渡した。


「これは、わざわざありがとうございます。一緒に頂きましょう。」


二人で玄関へ入る。

玄関の正面には廊下と二階へ上がる階段。

奥はリビングのようで、奥へと案内される。


リビングは、二人掛けのソファとテーブルを中心に整えられていた。

床にはカーペットとクッション。

生活は続いているが、散らかった印象はない。


「お茶を入れてきますので、くつろいでいて下さい。」

「すみません。お手伝いしましょうか?」

「いえいえ。大丈夫ですよ。」


そういうと弘和はリビングを出ていった。


座る前に、全体を見渡す。

テレビが置いてある大きな棚には、写真立てがいくつかあるので、その写真を一枚ずつ目で追っていく。

梓も宗一郎も亜季子も亡くなって、時間が経っている。

最近の写真が右側で、左側が昔の写真で分けられているようだ。


高校時代の写真資料で見た、山本梓の姿。

その隣に、亜季子。


兄弟で映る写真には幼稚園。小学校。中学校・・・と並んでいる。

その時々に、一緒に映っている母親の姿。

そして、中学時代のおそらく運動会の家族写真に、宗一郎が映っている。


どちらの姿も、資料同様に違和感はない。

笑顔で映っている写真は、どれもしっかり写真立てに収められており、埃も被っていない。

どの写真も、時間から切り離されたみたいに綺麗に保たれていた。


–コンコン


「失礼しますよ。」

「あ。ありがとうございます!お持ちしますね!」


立っていたので、弘和から飲み物と和菓子が乗ったお盆を受け取る。


「ありがとうございます。亜希さんでしたね。私の妻と似てますね。」

「え?そうなんですか?」


飲み物を受け取り、配っていく。

弘和は、定位置の様にソファの右側へ座ったので、その正面にお茶と和菓子を置く。


「はい。亜季子といって、かなり前に事故で亡くなってしまったのですが・・・」

「あ・・そうなんですね。それは失礼いたしました。」

「いえいえ、もうかなり前の事ですから、気にしないでください。」


「…梓さんの事も、アンジェラからよく聞いていたので、二人とも本当に残念です。」


少し目を伏せる。


「そうですね。梓に続いて、亜季子も急に亡くなってしまって、当時は私も大変でした。」


重い声ではあるものの、言葉はしっかりしている。


「そうですよね。少し失礼してアンジェラと一緒に、棚の写真を見せて頂いていたんですが、お母さんと仲良く映る姿も多くて、とても仲良しだったんですね。」

「この写真は、家族みんな映ってていいですね。」


最後に確認していた、宗一郎も映った写真をアンジェラが指す。


「あぁ。はい。亜季子の両親の方ですが、父と母も一緒に運動会の応援に、来てくださった時の写真ですね。」

「そうなんですね。じゃあ梓さんの祖父と祖母の方なんですね。」

「えぇ。古い写真ですが、良く撮れているので、ずっと飾ったままですね。」


「本当に、素敵な写真です。亜季子さんの実家は、ここから近いんですか?」

「はい。ですが、二人とも亡くなっているので、実家はもうないんです。」


確認のためとはいえ、亡くなった話ばかりになるのは仕方がない。


「そうなんですね。二人とも優しそうな方です。梓さんはお爺さんの事が、大好きだったとアンジェラからも聞いてました。」


そんなことは知らないと、アンジェラの表情に少し出るが、弘和が見ていないので無視。

梓の中学時代の家族についての作文では、宗一郎の話が作文の半分を占めていた。


「えぇ。あの子はお爺ちゃんっ子で、亜季子の実家に行く度に、帰る時泣くので大変でした。」

「あの・・・写真はここにある以外にも、あるのでしょうか?」

「ありますけど、見ますか?」


アンジェラに視線を送る。


「はい。是非。」


そうして弘和が再び部屋を出たので、棚の写真の脇に重ねて置かれていた古いノート類に目を向ける。

その中に、子どもの字で「あずさ」と書かれた絵日記が混ざっていた。

中身を確認する前に、アンジェラに声をかける。


「この家に魔法の痕跡は?」

「ないね。全くない。」


断定はできない。

ただ、少なくとも父親の弘和本人からは、魔法にも怪異にも繋がるものは感じない。

息子については、会えていない以上、保留するしかなかった。


「祖父の山本宗一郎と娘の亜季子が、魔法使いあるいはハーフだった可能性は?」

「亜季子の血縁である息子に会えなかったから、正確には分からないけれども、今のところ古い魔法の痕跡も見当たらない。」

「…ありがとう。」


絵日記の名前の所には「あずさ」と書いてある。

弘和はすぐ戻ってくるはずだから、ざっくりと見通す。


小学校の夏休みの宿題だったようで、7月1日から書いてある。


いくつか目が留まる。


–おじいちゃんは、ときどき空をとんだ時のおはなしをしてくれます。

いつもきもち良さそうだなーと思って、おはなしをきくのがたのしいです。


–おじいちゃんは、おこると、いつもしにがみがむかえにくると言うよ。すごくこわい。


–きょうは、まいごになりました。でもすぐにお母さんがむかえにきてくれました。

かくれてても、お母さんはすぐ見つけてくれる。

どこにいるか、わかるみたいですごい。


一つなら、子どもの空想で済ませられる。

だが三つ並ぶと、偶然としては扱いづらい。


そして死神が迎えに来る、という一文だけは雑に流せなかった。

年寄りの脅し文句としては、ありふれている。

けれど今の私には、ありふれた冗談として流しきれなかった。


足音が耳に入る。

絵日記を棚に戻して、座る。


「少し奥にあったのですみません。お待たせしました。」

「いえいえ。わざわざすみません。」

「ありがとうございます。」


弘和の手には、大きなアルバムが二冊。

アンジェラと一冊ずつ受け取って、アルバムを開く。


棚の写真よりもさらに幼い、幼少期の山本梓。

その隣にいる亜季子の顔立ちを、死亡日に近い書類写真の記憶と比べる。


二十年近い差があるはずなのに、亜季子には年齢相応の変化がほとんど見えなかった。

二十代後半から四十代にかけてなら、基本世界の普通の人間であれば、それなりに年齢の変化が出ていておかしくない。

一方で、同じ写真に映る弘和には年齢相応の変化がはっきり出ていた。

だからこそ、亜季子の変わらなさが余計に浮いて見える。


その明らかな違和感で、考え込んでしまい、気が付けばそれなりの時間が経っていた。


「あ。申し訳ありません!もうこんな時間なんですね。長くなってしまいました。」

「いえいえ。じっくり見て頂いたようで、私も色々と思い出す事も多く楽しかったですよ。」


最初挨拶した時から、弘和の雰囲気は変わらない。

魔法使いであるアンジェラへの対応も、変わらない。


最後まで丁寧に見送ってもらい、山本梓の実家を出る。


もと来た道に戻る。

アパートの角を曲がるとアンジェラが話しかけてきた。


「そんで?」

「父親の弘和本人は、ほぼ無関係で見ていい。ただ、家系までは切れない。息子は未確認。母方の二人には違和感が残る。」


絵日記の内容も、小学生の文章としては判断しづらい。

それでも、宗一郎と亜季子には雑に切れない引っかかりが残った。

逆に、弘和からは最後まで不自然さが見えなかった。

時間経過があるのでかなり落ち着いてはいるが、妻や娘への悲しみが自然に見られた。


死亡後の関与がないのであれば、何か確定情報になりそうなものは、実家にはなさそうだ。


アンジェラが止まる。


「それじゃあ今日は一旦。引き上げかい?」


「…墓に行こう。家は“残された側”の場所だ。なら次は、死んだ側を見に行く。」


ここからそう遠い距離ではない、たしか電車で数駅ほどだった。


「はいはい。じゃあその前にお昼ご飯行くよ。」

「駅の近くに何かあるだろう。」


再び二人で、歩き始める。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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