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世界は誰の夢か  作者: 光幽 擬名
第一部 境界に立つ者たち
10/38

疑問:どこへ帰ろう?

大まかに進めながら細かいことで追加していったりと

後からあれもこれもとなる事もありそうで

実際そんな事もないかもしれない。

そんな感じでただただ妄想・空想を書いてみてますので

あ。これ無理だわと思った場合には無理せず止めておきましょう。

体にあった小説をお選び下さい。

「ん・・・」


 夢を見ることなく、目が覚める。

見慣れない天井と部屋の景色が、じわじわと現実を引き戻してくる。

この数日で起きた目まぐるしい事が、夢であれば良いといまだに期待してる。往生際が悪い。

綺麗なシーツ、新しい寝巻、寒さを感じない丁度いい部屋の温度。

それらはとても心地よい環境のはずなのにテンションが上がらない。


 昨日はどうしたっけ?

夕方、薫さんという女性に採寸してもらった後の事を思い返す。

その後すぐに双子の男の子と女の子が私をこの部屋に案内してくれて、そのまま悶々としていたところにイザベルが入ってきた。

そういえば?部屋を見渡すとイザベルは室内に用意されていたクッションの上で寝ている。

途中で、部屋に案内してくれた双子の女の子の方、確か日向という子だったかな?夕食のお誘いに来てくれたけど、「部屋で食べたい」と言ったら持ってきてくれて、

「食器はそのまま廊下に置いてくださいー」

と言ってくれたので、一人と一匹で部屋の明かりもつけずに月の明かりだけで夕食を済まして、食器を廊下に出した後すぐに寝てしまった。


 スマホを確認すると7時12分。どんなに凹んでいてもいつも通りの時間に体も進む。

今日は多分日曜日だけど、朝食とかの時間は決まっていたりするのかな?流石に何度も部屋に食事を運んで貰うのも、ずっと人の家?で引きこもり続けるのも気が引ける。

よし。

布団から、重たい体を引き剥がすように抜け出した。

足をフローリングにつけると、床から冬特有の冷たさは感じず暖かい。

イザベルはこちらに気が付いたようで顔を上げたが、暫くしてまた寝始めた。一応猫の姿をしている魔法使いと言っていたけど、そのしぐさは普通の猫みたい。

まずは着替えよう。

クローゼットを開ける。昨日は適当に寝巻を取り出したが、暖かく入ってくる太陽の光で初めてちゃんとクローゼットの中を確認してみる。

服はまるで、私の生活がそのまま複製されたみたいに、必要な物が揃っていた。

簡単に着られるTシャツやショートパンツなどとセーターやワイドパンツのような綺麗目な服、そして今着ているような寝巻等、まさかトレーニングウェアまで。

最後には下着や靴下までもが一式揃っているようだ。


 改めて、ベッドでのシーツの清潔さも思い出し、ここまで用意してくれている事に驚く。

明るい部屋を見渡せばイザベルが寝ているクッションもそう。

他にも昨日寝る前に使った。歯ブラシやタオルといった日常生活する上で、何一つ困らないぐらいの物が全て一通りに揃っている。


 スズは最初、私を家に帰してくれた。

つまりその時はこうなる事は全く予想していなかったんだとすると、本当に急いで準備してくれたのかもしれない。

なんとなくいつも着ている服に似ているVネックセーターと裏に起毛のある暖かそうなでもあまり分厚くないストレートパンツを手にした。

和さんはご飯を用意してくれて、色々な事を丁寧に説明してくれた。

ここで過ごして嫌なことなど一つもなかった。

彼女達がとても良くしてくれている事は分かっている、それにスズも結局は私の為に大事な事だと思って伝えたのだろう。

内容自体はとてもショックが大きな事だけど、じゃあ後回しにしていい事だともとても思えない、きっと私でも早めに伝えるべきだと思う気がする。

着替えが終わり、部屋の中にある洗面台で一通りの身だしなみを整えて部屋を出た。


 部屋がいくつもある事は案内された時にも見たけど、ゆっくりと観察する余裕も無かったので改めて見回すと、私の部屋を含め隣にはあと二部屋と中央の階段を挟んで反対側にも同じようにドアが三つあるようだ。

階段の正面には昨日食事や話をしたリビングとはデザインが異なるソファとテーブルが用意されていて、多分談話室みたいな感じだろうか。

階段の反対側にはお手洗いやシャワー室などもあり、4階はフロア全体が、個室と共用スペースで分かれた寮のような造り。


–チリン


 部屋を出るときに一緒に出てきたらしいイザベルが足元に寄り添う。

なんとなく階段を上ってみると、次のフロアも4階と同じ感じに部屋や談話室があるようだ。

流石に自分の部屋があるフロアとは違うフロアを散策する事もないので、ちょっと見回してすぐに階段を上る。

7階は昨日お風呂にも入った場所だからなんとなく覚えているけど、6階は全く見ていなかったようで、書庫なのか図書館のように本棚がいくつも並んで、かなり多くの数の本がある事が目に見える。

階段の反対側に回ってみるとそこは壁があり、ドアがいくつか付いていることからもフロアの半分が図書室になっていて、反対側は何か部屋?があるようだ。

なんだか内覧をしているようで何となくテンションが上がってしまう。

本棚は本当に図書館のようで棚の上の方にはジャンル等が書いてある。

歴史・ビジネス・小説、一つ一つ歩きながら棚のジャンルを眺め、医学のジャンルに進んだ時、その棚の間に人が居るのに気が付いた。


「!」


びっくりした。気が付かなかった。

立っていた男の人もこちらに気が付いたようで顔を上げる。


「おはようございます。」

「お、おはようございます。すみません、お邪魔をしてしまって」

「いえいえ、何となく漁っていただけなので気にしないでください。梓さんでしたね。」

「はい、山本梓といいます。あなたは?」

「初めまして、僕は篠原尚弥しのはら なおやと言います。」

「私はイザベル」


驚きながらもお互いに挨拶していると、イザベルも私の足元から前に出てきて挨拶する。


「おや、あなたは初めましてですね。」

「ええ、昨日ここに初めて来たばかりよ。暫くはこの子の側にいる予定。」


そうなの?知らなかった。ここへ初めてきた事も、暫く私の側にいる事にも驚きだ。


「そうなんですね。僕はだいたい土日にここに来て、皆の診察とか様子を見にきてますので、たまに会うときはよろしくお願いします。」

「お医者さんなんですか?」

「はい、今は〇〇大学医学部附属病院に居ますが、色々なところを転々としている感じです。外科が主ですが、内科や整形外科等でもお手伝いさせて頂いているので、もしご心配な事があればいつでもご相談ください。」


 尚弥さんは白いシャツに、薄い水色のカーディガン。ベージュのパンツ。

まさにお医者さんっぽい感じがする。雰囲気も柔らかく、声のトーンからも安心する気がする。若干、お医者さんといわれてイメージに引っ張られている気もするけれど。


「ありがとうございます。」

「今日は是非梓さんともお話出来るお時間がとれればと思っていますが、一先ず朝ごはんを見てみましょうか。」

「あ、そうでした。朝ごはんは何時頃とか決まっているんですか?」


そういえば最初は朝ごはんの確認に部屋を出たはずなのに、何故か上に上がってきてしまった。


「平日はだいたい7時~8時ぐらいの間にって言ってましたが、土日はその時々で違う事もありますね。でも予定があれば合わせてくれますし、7時以降であればだいたいは作り始めている事も多いですよ。」


 フロアの感じといい寮っぽいイメージとつながって、勝手に和さんが寮母っぽいポジションに見えてきた。

流石にご飯を作るとかは私も手伝う事が出来るし、聞いてみた方がいいかな。

本当に暫くここに住むことになれば、流石に全部やってもらうだけというのは申し訳ない。

あ。でも仕事を手伝って欲しいって言ってたんだった。


「そうなんですね、じゃあ」


尚弥さんは手に取っていた本を本棚に戻し、2人と1匹で階段を降りていく。


「ここへ来たばかりだと、どこに何があるかも分からないですよね。僕もここに住んでいるメンバーよりは新入りですが、だいたいの場所は分かっていると思うのでいつでも聞いてください。」

「ありがとうございます。尚弥さんは別の場所に住んでいらっしゃるんですね。ここに住んでいる方はどのぐらいいらっしゃるんですか?」

「和とスズ、日向と秀人。あとは地下に居る圭が住んでいますね。」

「地下もあるんですか?!」

「はい。地下は2階まであるみたいですが、圭やスズの仕事場になっていたり入ってほしくない場所もあるようで、僕自身もあまり立ち寄った事がないんですが」

「結構大きな建物なんですね・・・」


 全体像を改めて知ってびっくり。

一つのフロアも結構広いようだし、露天風呂といい、高いマンションとかホテルのような感じ。

3階に近づくと、暖かい空気と良いにおいがする。既に朝食を作ってくれている最中のようで、鍋をかき回す音が聞こえる。


「お。おはよう。あ。梓さんもおはようございます。」

「おはようー、和。お腹すいちゃった。何か手伝おうか?」

「そうだな、一応オムレツとシチュー。あとサラダだけど、二人ともパンとご飯どっちが良い?」

「んー僕はパンかな。」「私もそれで大丈夫です。」

「じゃあパン焼くから、サラダ盛ってくれ。」

「はーい。」

「あ。私も何か、、」

「ありがとう。梓さんは机を拭いてくれる?」

「分かりました。」


 和さんは温かく濡れた手ぬぐいを渡してくれたので、早速ダイニングテーブルを拭き始める。かなり大きめのテーブルなので端から端まで拭くのも結構大変だ。

私が拭いていった場所に尚弥さんがサラダやシチューを並べていき、準備はどんどん進んでいく。

殆ど料理は終わっていたようで、最後にカトラリーケースとともに和さんもテーブルにつく。


「いただきまーす。」

「いただきます。」

「どーぞー。」


–ニャ!

「ちょっと!私の分は?」


イザベルが和さんの足元で抗議の声を上げる。


「あ。すみません!そういえばいらしてたんでしたね。ミランダさんの娘さん?」

「どーも初めまして、私はイザベル。」

「失礼しました。イザベルさんですね。僕は和です。よろしくお願いします。ご飯はどういたしますか?一応キャットフードとかもありますが、」

「普通ので良いわ。少し冷ましたシチューを頂けるかしら?」

「はーい、あ。二人は気にせずどーぞー。食べてください。」


 和さんは席を立つが、尚弥さんは特に気にする様子もなくサラダを食べ始めているのを見て、私もおずおずと食べ始める。

昼食もそうだったが、やっぱり和さんが基本的には料理担当なのだろうか。

昨日の肉じゃがといい夕食は海鮮パスタ、たしかペスカトーレ?とスープ。

朝ごはんもかなりしっかり手が込んでいて、かつどれも凄く美味しい。


 仕事をしながら家に帰って作る夕飯や朝ごはんというのは毎日限られた時間で作る分、どうしても簡単なメニューになってしまいがちだ。

そんな料理ついでについ家の事を思い出してしまい、またちょっと落ち込む。

と、とにかく!和さんにはタイミングを見てちゃんとお礼を言いたいし、なんならお手伝いだってさせてもらおう。


「和ーおかわりある?」

「シチューはあるよ。自分でおかわり行っといで。」

「やったー。和のシチューは本当に美味しいね。今度カレーも作ってよ。」

「じゃあ、来週の土曜日の夕飯はカレーにするか。」

「やったー。夕飯までには絶対来るから、おかわりも入れて多めによろしく。」


「あれぇー?カレーかと思った。」

「来週って言ってたよ。」


私が朝ごはんを美味しく頂き落ち着いたところで、階段から日向と秀人が降りてきた。


「おはよう。今日はシチューだけど、パンとご飯どっちが良い?」

「「ごはんー。」」

「じゃ自分でご飯いれて。」

「「はーい」」


 二人は朝から元気にバタバタ走りながら台所へ向かう。

昨日部屋に案内して貰った時は、和さんが先にフォローしてくれていたのか、二人は本当に簡単な挨拶だけだった。

その後に日向さんが部屋とトイレの場所とかを一通り説明してくれて、そのまま静かにいなくなっていた。

今日の様子を見て、恐らく気をつかわせていたんだと思うと、これもまた申し訳ない気持ちになる。


「梓さんコーヒー飲みます?お茶も紅茶もありますよ。」

「あ。ありがとうございます。コーヒーを頂きます。」


食事を終えた私の様子に気が付いて、和さんが声をかけてくれる。本当に気が利く人だ。


「梓さん。おはようございます!」

「おはようございますー」

「おはようございます。昨日は夕飯とかも色々ありがとうございました。えっと日向さんと秀人さん?」

「日向でいいよぉー」

「僕も秀人でー」

「分かりました。日向と秀人ですね。改めて、宜しくお願い致します。」

「梓さんが元気になって良かったー。」

「はい!是非是非ー」


 日向と秀人は持ってきたご飯を机にのせ、既に用意が出来たメニューが並んでいる窓際の席に二人揃って座る。

日向も秀人も昨日はやっぱり気を使ってくれていたようで、改めての二人の挨拶は昨日とはうって変わって明るくこちらも元気になる。なんかスズ?部下の時みたい。


「そういえば。梓さんは普通の人でふか?」

「もご、和が普通って言ってたよー。」

「あえ?ほうだっけ?」

「二人とも食べながら喋らない。」

「「はーい」」


 興味津々にしている日向とそれに合の手を入れる秀人に和さんから注意の声が入る。

「どうぞ」

「ありがとうございます。」

煙のたった温かそうなコーヒーを気を付けて受け取り、砂糖やミルクは籠でまとめた物をテーブルに置いてくれた。何から何までありがとうございます。


「ねー和。スズも食べるかな?おかわりしてもいい?」

「いいよ。結構多めに作ったんだけどなぁ。」

「僕もついでにご飯も頂きまーす。」

「はいはい。」


 尚弥さん見た目はスマートなのにかなり食べる人なんだ。

メニューとしては朝からかなりボリュームがあったが、それでも3回目のおかわりとさらにご飯も食べるらしい。

和さんは食べている途中だったらしく、再度席について食事を続ける。

イザベルもシチューをゆっくり食べていて、そんな風景を眺めているとまたもや自分の家の朝の風景を思い出してしまう。


 子供達の顔も名前も覚えていないのに、風景としてたしかに記憶が残っている分、やるせない気持ちになる。

そんな子供のイメージと照らし合わせてしまったのか、日向と秀人をなんとなく見ていると二人はお互いに何かコソコソと喋りながら、どんどん食事を進めている。

日向はさっきの挨拶といい非常に明るい性格のようでご飯もがつがつと食べ、二人で合わせたのかショートヘアがより活発的な印象を受ける。

秀人はまだちょっと眠たげな顔をしながら、ゆっくりとご飯を食べすすめ、時々日向の言葉に間延びした返事をしている。

私の子供はどんな感じだっただろうか・・いかんいかん。ちょっと思い出すのは控えよう。


「二人とも食べ終わったら、時間ある?おつかいを頼みたいんだけど。」

「どこいくの?」

「メールまだ見てないから、その後は大丈夫ー」

「ちょっと遠いけど、神奈川の方に荷物を届けてほしいんだ。あとで下に持ってくよ。」

「「はーい」」


 度々二人が揃う声は聞いていて、面白い。

暖かい日差しが入ってくる窓際から涼しげな風が入る。

家の中はとても暖かいが、風からは外は結構寒そうな感じがする。

窓の外を見ると木の葉が見えるがその先に風景はなく、最初ここへきて車に乗る時に建物の外に出た時に見た景色を思い出した。

四方を高いビルにかこまれ、どのビルもこちら側に窓が無かった。

建物の周りにはいくつか大きな木や草が生えていて、歩く場所や車が通る場所以外は芝生が綺麗に整い全体が大きな庭みたいな感じだった。

建物の中の揃い具合といい、本当にここはなんなんだろう。

生活の形だけを切り取って並べた、舞台装置みたいだ。


「ごちそうさま。」

「「ごちそうさま。」」


あ。ごちそうさま、言ってなかった。3人の声を聞いて思い出す。


「お粗末様。」


三人とも食器を持って台所へ向かい、順々に水につけた後日向と秀人は階段を降り、尚弥さんは自分でコーヒーを用意しているようだ。


「あ。そうだ。日向!秀人!」


二人は既に下のフロアに下りた頃だろうか。和さんが大声で声をかける。


「「なーにー?」」

「3階の和室側は別の生き物がいるらしいから、暫くは入らないようにね。」

「え!何それ?!見たい!」

「え?そうなんだ?どんなのー?」


二人がドタドタと階段を上ってきて、階段の反対側にあるのであろう、和室の方に走ろうとするのを和さんが引き留める。


「待て待て」

「えー?なんで?挨拶!」

「別の生き物って事は人じゃないのー?」

「昨日、スズが連れてきたらしいんだけど、暫くは僕たちじゃ見れないみたい。」

「「えー!!」」


 別の生き物と聞いて、二人同様に気になって和室があるらしい部屋の方に目を向けてみるが、テーブルや畳といった物がある部屋には何も居ない様子。

見れないんだ。残念。残念?怖い生き物だったらどうしよう。

電車で見た景色を思い出す、黒い何かやわかめみたいな髪の人。確かそんな感じのが居た気がする。

最近の記憶に押されてあんなに衝撃的だった筈なのに、記憶が曖昧になっているようだ。


「とにかく、向こうもこっちは今は見えていないらしいけど、何があるか分からないから暫く近づくな!」

「えー・・・。見たかったのにー。」

「暫く見れないって言ってたから、見えたら挨拶しよ」

「んーーー・・・・・」


二人はかなり残念そうに(日向は凄く残念そうに)また階段を降りて行った。


「騒がしくてごめんね。あの二人は適当に対応して大丈夫だから。」

「いえいえ、明るくていいですね。」

「あの二人は基本的に考えるより行動を先にするタイプで、とにかくうるさいし誰彼構わずに話しかけるから、本当に迷惑な時ははっきり言っても大丈夫。言いづらければ、俺に言ってくれても良いし。」

「あはは、分かりました。」


つい笑ってしまった。和さんが、再び席に戻る。

二人の対応といい、食事がなかなか進まない感じからも、本当に家族のお母さんみたいなポジションの人だなぁ。


「梓さんはこの後、診察?」

「そうだね。応接室をかりようかな。」

「真ん中を使ったらいい。」

「分かった。でも、確か梓さんは魔法にも関係しているんだよね?」

「その辺はだいたい俺も確認したが、ちょっと対処が必要だと思う。念の為イザベルさんにも観察魔法を使ってもらって、見解を教えてもらえないでしょうか?」

「分かったわ。」


 対処が必要?急に私の診察の話になったと思ったら、不安になる言葉が混じった瞬間、胸の奥がひやりと冷えた。

さっき尚弥さんも上の階で言っていたから、診察自体は今日するんだろうなぁ。とは既に分かっていたけど診察といっても、もっと簡単な感じで体温とか血圧とか図るぐらいに思ってたよ?


「大丈夫ですよ。今日の診察は本当に簡単な感じで、問診とか体温を図ったりとかだけにしましょ。

実はこの間、梓さんが寝ている間で申し訳なかったのですが、怪我がないかとかの確認をしないといけなかったので、その時にも一度簡単な診察をさせて頂いているんです。すみません。」


そんな様子が私はやっぱり尚弥さんにも分かりやすいのだろう。

というか、そうだったのか、寝ていた時の事は流石に気が付かなかった。


「いえ、そうだったんですね。ありがとうございます。全然気が付いていませんでした。」

「電車の時にスズが梓さんを勢いよく引っ張ったとかで、腕とか足とか怪我してないか気にしてたんですよ。」

「そうだったんですね。」


 電車の時は正直、乗ったか乗ってないかすら記憶が曖昧なので、引っ張られた事も全く覚えてない。

でもという事はやっぱり、あの時もスズが助けてくれたってことだよね?

彼女は小柄な方だし私の方が身長も高いから、人一人引っ張るのはかなり大変だと思う。

流石に覚えていないとはいえ、昨日もお迎えに来てくれたりとやはり彼女が色々と助けてくれているのは確かだ。

彼女にもちゃんとお礼を言わなくては。

もしもお時間があるようでしたら

一文二文、はたまた評価頂けたら

ちょっと凹んだり、めっちゃ喜んだりします。

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