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第三話 アイドルとメガネ

「デモ家族いるよね」


これは二人には申し訳ないが少し気まずい返答をすることになる。

「家族はいない」

俺の家に家族は住んでない。父親は大学教授でずっと研究室で寝泊まりして滅多に帰ってこない。

母親は俺が5歳の時に死んだ。


「あっごめんなんかワルイこと聞いちゃったよね・・・」

「いや気にすんな、俺ももう慣れてるから」

まあゲームする俺にとっては家に厳しい父親が帰ってこないことはむしろ好都合だからな。


「じゃあいないってことは借りていいってことね!」

気にしないとは言ったが流石にここまでノンデリだとクソ腹立つな。

まあ夏休みの間だけだったら風呂くらい貸してやるか。


「貸してやる・・・・が!一つだけ条件がある!」


「お前ら使用料1日300円払え!」

「しっ使用料!?タッキュウのド・ケ・チ!」

「ハッハッハ!ドケチでも何とでも言えっ!これが絶対条件だ。それとも真夏の蒸し暑い時に風呂に入れない地獄を選ぶか?」

ああこれほどまでに爽快なことが今まで生きた中で一度でもあっただろうか。


これで一日六百円の不労所得が入ってくる。

これで夏休み期間だったら軽く一万五千は超えるななどと思っていると

「いいよ、私は。何ならモット多く取られると思った」

「蜻蛉も文句言わずに払・・・え?」

「ツカわせてもらうんだから当然でしょ」

世の中にはまだこんな女性がいるんだとまだ若干16歳の俺は感動した。


「蜻蛉。俺と付き合ってくれ」

俺は口に出した瞬間、言ったことを後悔した。


「キッキモ」

ユキサは静そうな雰囲気とのギャップでドン引かれた時のダメージがデカすぎる。

「タッキュウ今のは流石にセクハラだよ。キモ」

「ごっごめんなさい」

帰らせてください神様。


「わかったわかったじゃあ私も払いますー。払えばいいんでしょ払えば!」

「わかったならそれでいい」

狭衣は俺にあっかんべーをした。でも、この臨時収入はかなりでかいぞ!経営者向いてるかもな、俺。

そのあと2時間ほど他愛ない、全く意味のない会話が続き、ようやく俺たちは自分たちを”自己観察”し始めた。


俺たち三人はそこから2時間弱真面目に一言も喋らず書き進めていった。すると


キーンコーンカーンコーン

夏休みに俺たち補講生のためだけに用意されたであろうチャイムが鳴った。


「はー疲れたーー」

狭衣が体を伸ばして言った。


「じゃあ続きはまた明日報告だな」

「私たちは職員室行って先生に宿泊のこと聞かなきゃだね!」

「そうダね」


ーーそして次の日。

狭衣とユキサは大量の荷物と共に教室に入ってきた。

正直荷物が男子よりも何倍も多いんだろうなとは思っていた。

しかし二人とも絶対にいらないものだらけであることは確かだろこれ。


まず狭衣に関しては絶対にいらない座椅子を畳まないで手で担いで持ってきていた。

そして蜻蛉はなんかスーツケース多くないか?ぱっと見四つはあるぞ。

こいつらどうやって電車乗ってきたんだよ。


二日目は俺たちは自分たちが書いた自己観察文(仮)を順番に読み進めていった。もちろん2時間で書いたものだからそこまで字数は多くないが、その日は読むだけで手一杯で意見交換とかは次の日に持ち越された。


そして三日目

「でなんでお前らは布団に入りながら俺の話を聞いているんだ」

「だってここ私たちが今住んでるところだもん!」

「ダもん・・」


「布団の中で俺にスケベなことされたくないんだったら今すぐ出て椅子に座れ」

二人は相対性理論を軽々とねじ伏せる速度で布団を抜け出した。


「よし二人とも座ったな」

俺はこの時点でもうすでに帰りたい。というかトイレに行きたい。

今日もいつものように朝飲んだエナジードリンクの利尿作用で早く話を終わらせてトイレに行きたいんだ俺は。


「で狭衣お前の書いたやつなんだがはっきり言ってひどいな」

「えー!結構自信作なのにーー」

「いやこれお前めちゃくちゃ主観で書いてるだろ。あとここの理想の男性って部分なんだよこれ。この蓮ってやつお前の推しみたいな感じか?」

「それは絶対に必要でしょ!第一私を語るんだったら蓮様は絶対に必要!」

まあ絶対にいらんが、もうめんどくさいからいうのはやめておこう。

この蓮ってやつは結構人気なアイドルらしい、まあ俺は一ミリも知らなかったが。


「で蜻蛉のやつはなんか中身がないな」

「それはなんか私も思った!なんか隠してるみたいな文だよね!」

蜻蛉の顔は長い黒髪と縁の太い眼鏡という障害物があったのでなかなか見えなかったが、

下を向いてるってことは何か隠しているんだろう。


「この際だから隠してることあったら俺らに話せよ。言わないから」

「私もぜーーったいに言わない!」


「ホントに?」

「ああ約束だ」

というか友達が全然いない俺は言う人がいない。


「私たち一夜を共にしたじゃん!もう親友だよ!」

ああスケベな言い方だなあ、ああ俺も一緒に寝たいなとかふざけたことを考えていると、ユキサがメガネを外した。その瞬間思った。


あれこいつめちゃくちゃ可愛くね。


おいおいちょっと待て、狭衣は最初教室に入ってきた時に狭衣も相当可愛いとは思った。

だがこれはメガネをつけてた反動もあってか次元が違うように見える。


「・・・・」

俺と狭衣は正直言葉を失った。これは学校一可愛いとかそういう次元じゃない。


すると狭衣が声を振るわせて

白金(しろがね)リリちゃん?」


「おい狭衣誰だそいつ」

狭衣はいつもの元気な様子からは想像できないくらい呆然とただユキサのことを見ていた。

それにしてもこいつ言葉失いすぎだろ。


「おい狭衣!」

一体蜻蛉ユキサは何者なんだよ。

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