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第一話 給料と夏が消えた日

一学期末。俺は待ちに待った夏休みを堪能すべく友達のいない教室を出た。学校に一人もいないってわけじゃないぞ?


リチウムの最外電子殻の電子数くらいはいる。


家に帰ると真っ先に俺がバイトの給料袋を握り締めて近くの電気屋に向かった。


そこから家に帰って俺が買った7本のゲームソフトと栄一5枚が柴三郎1枚になったことに少し寂しさを覚えながらも早速ゲームを起動させた。


「今日は一本終わらすまで寝ないぞ!」

俺がそう張り切っていると


プルルルルップルルルル


と家の固定電話が一階のリビングで鳴り響いた。俺はその時点で少し嫌な予感がした。俺は今日成績返しの時、自分の成績に落胆した。

まあ全然勉強していなかったからわかっていたことではある。


でもこの電話が担任から出ないことに淡い期待をしつつ俺は一回のリビングへ向かった。


「頼むいっそのこと勧誘とかの電話で頼む!」


「はい竹取です」


「担任の菊亭だ」

もう声を聞いた瞬間、聞き馴染みのある、気の強そうな教師菊亭怜の顔が真っ先に浮かんだ。

もう俺の中でこの先彼女が何を言うか一語一句予想できた。


「あ、お疲れ様です。でご用件は何でしょうか?」

俺は現実を認めたくないからしらを切っていったが、どうせすぐバレるんだろうなと思った。


「もうわかってるんだろ。訳取」


「竹取です」


「・・・すまん竹取」

ほら当たってるだろ?


「俺の成績の件ですよね」

「そうだ。お前らには夏休みみっちり補講を組んだ」


お前、ら?俺以外にもいるのか?うちの学校はよっぽどの成績じゃないと補講がないはずだろ。

俺は2年間で3回補講を受けたが俺以外に受けてるやつを見たことがない。まあそんだけ俺は頭が悪いってことだ。


「返事は!」


「はっはい!」


「それで先生。一つ質問いいですか?」

「ん、なんだ?」

「俺以外にも誰か来るんですか?」


「そうだお前以外に女子が二人いるぞ」


は?女子が二人?おいおいもう勘弁してくれ。ただでさえ俺は中学時代にトラウマができて女子とは高校に入ってから一回も高校入ってから話してないんだ。


「別の教室って空いてま」

「よーしじゃあ明日8時に教室集合だ。もう切るぞ」


プーップー

無慈悲な機械音が流れて俺の別教室での一人補講の夢は消えた。

こうして俺のゲーム三昧からはかけ離れた夏休み生活が始まった。


翌朝7時。俺は自分のゲーム欲を抑えることができず、一睡もせずに学校へ向かうことになった。


一応寝ないためにコンビニでエナジードリンクを買って電車に乗った。どうせ一ミリも話聞かないけど。

そして学校へ着くと普段は家庭科で使われてるG302へ向かった。


女子が二人もいることを気にして中々教室に入れずドアの前で立ちすくんでいると


「おい竹取何してる早く入れ」


俺の夏休みを奪った奴の声が聞こえてきて俺は半ば強引に教室へと入れられた。

そして俺が首根っこ掴まれて教室に入るとおとなしそうな縁の太い黒眼鏡のロングヘアの女子と机の上でよだれ垂らして寝てるミディアムヘアの女子がいた。


「よしじゃあこれで全員だな。これより4時間お前らはみっちりこれから出す課題をやってもらう」


ハッ4時間?俺が前回受けた時は2時間だったぞ。また一つ俺が10時過ぎからゲームすると言う夢が消え去った。


「せんせー!」

よだれ垂らしてたやつが言った。


「んーなんだ?狭衣(さごろも)?」

「今日ダンスのレッスンが一時からあるんで帰ってもいいですか!」


おいダンス習ってるとか一軍女子か?

あとこいつうるせえな。でもこいつクラスの女子と比べると相当可愛い方なのでは?

よだれで口周りびしゃびしゃだけど。


「ダメだ」

「えーーなんでーー」

「お前確かテスト当日休んだんだよな?論外ださっさと教科書出せ!」

狭衣は黙って教科書を出した。


「あっアノ先生」

透き通るような声――そう形容したくなるような綺麗な声だった。だが同時に、そこには生のぬくもりがなく、まるで機械が発した音のようでもあった。


「お前も何か用事があるのか?蜻蛉(かげろう)

「仕事があって4限目でカエりたいんですけど・・・」

「仕事といってもどうせバイトだろ?だーめーだ」


蜻蛉は少し涙目だった。

俺はただでさえ早く帰りたいんだ。もう質問とか余計なことはしないでくれ。


「よしじゃあ最初は自己紹介をまずしろ。これから共同課題とかも出すぞ」

文句を言いたいところだったが時間を無駄にしたくない俺は黙って机を二人の方に合わせた。


「じゃー私からね!私は二年六組狭衣タスキ。普段はバスケ部に入ってるよー。よろしくね!」

タスキって名前のくせしてバスケ部なのかよと思ってると二人の視線が俺に向いていた。


「じゃあ次は俺だな。俺は二年八組竹取久作。普段は帰宅部で家に帰ってゲームしてます」

「長いしめんどいからタッキュウでいーい?」


狭衣それはもう球技だ。絶対に嫌だ。まず初対面でこの態度は何なんだこいつ。

絶対に嫌だって言ってやる。


「あ、全然それで大丈夫です」


言えるわけがなかった。ただでさえ女子と何年も喋ってないんだ。俺は伊達に陰キャやってないんでね。

さて次はこの静かそうな子か。


「あっ私は二年四組蜻蛉ユキサ。私もフダンは家に帰って時間があったらゲームとかしてます。よっよろしく」


俺より陰キャそうで安心した。ごめんユキサ。まあ俺も友達全然いない時点でどんぐりの背比べだけどな。それにしても時間があったらって忙しいんだな。

頑張れよユキサ。


「よし全員自己紹介は終わったな。じゃあ今からさっき話した共同課題を配る。こんなこと出してる側があまり言えないのだが、かなり量が多いから張り切ってやれよ」


「先セイ」

蜻蛉ユキサが10dbくらいで呟いた。


「あの私家が遠くてシゴトもあるので、夏休みの間だけ学校泊まることってできますか?」


ん?ちょっと待て何言ってんだこいつ。


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