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三枚のお札HappyEnd

作者: 和no名

むかしむかし、ある古寺に和尚と小僧が暮らしていました。

もう夕方ですが、小僧は栗拾いに行きたいと言って聞きません。

根負けした和尚さんは小僧に三枚のお札を渡しました。




「よいか、山の中には人食いの山姥やまんばがいる。このお札はお前を護ってくれる護符じゃ。

 もし自分に身に危険が迫ったときに使いなさい」




小僧は栗拾いに出かけますが、案の定、日が暮れて道に迷ってしまいます。




「うわーん!和尚さんの言うことを聞いておけばよかった!

 あ、あそこに民家がある!あそこに助けを求めよう!」




民家には山姥が住んでいました。




「ふん、道に迷ったか。泊めてやるから中に入れ」




山姥は、見た目こそ怖いですが、食事まで振る舞ってくれました。




「朝になって明るくなったら帰れ。今日はもう寝ろ」



『ずーこ。しゃーこ…。』




小僧は安心して眠りについたのですが、真夜中に台所から包丁を研ぐ音が聞こえてきて目を覚ましました。



『ずーこ。しゃーこ…。』



「ヒッヒッヒィ…。小僧の肉なんて久しぶりじゃ。柔らかくてうまいじゃろうな。さて、どう料理してやろうか」



小僧はそれを聞いて震えあがり、逃げ出すことにしました。



「あ、あのぅ…便所に行きたいんですが」


「ふんっ、今の話を聞いておったか。逃がさんぞ。

 腰に縄を括って逃げられないようにしておくから便所ならさっさと済ませてこい」




@便所。




「どどど、どうしよう…。これじゃ大した時間稼ぎにもならないぞ…」


「おい!まだ済まぬか!?」


「まだです!」


「まだ済まぬか!?」


「ついでに大きいほうもしてるからまだです!」


「まだか!?」


「便秘してるので手ごわいです!」




山姥の語気が強まっていきます。




「だめだ、時間稼ぎにならない。そういえば和尚さんにお札を渡されているんだった!これを使って…

 お札よ、ボクの身代わりになれ!」




小僧は腰縄を解いて、寺に向かって逃げ出しました。




「ええい、まだか!」


「もうちょいです!」


「まだか!」


「もうひと踏ん張り!」


「まだか!」


「もう待てぬ!」




山姥が縄を引っ張ると、まるで手ごたえがありません。




「もしや…」



急いで便所まで走っていき、戸を開けるとそこには小僧の姿はなく、

代わりに柱に括りつけられたお札が返事をしていたのでした。



「ぬうっ、小癪な…逃がさんぞ!」







「はぁっ、はぁっ、なんとか逃げ出せたぞ…空も明るくなってきた…寺まで逃げ切ってやる!」





「待てぇぇぇぇ!」



山姥はマッハ20の疾走をして追ってきます。



「速い…!じきに追いつかれる…!お札はあと2枚…!お札よ、大河となって山姥の行く手を阻め!」



すると、ごうごうと流れる大河が出現し、山姥を足止めします。



「ふん!なんのこれしき!」



山姥はごくごくと大河の水を飲みほしてしまいました。



「スゲー!吸引力の変わらないただ一人の山姥…!」



山姥はさらに速度を上げ追ってきます。



「寺まであと三分の一ってとこか…!絶対逃げ切ってやる!

 お札はこれで最後…!お札よ、煉獄の大火となって山姥を焼き尽くせ!」



すると、燃えさかる炎が出現し、山姥を襲います。




「かー   







 〇ー




 


 はー






 めー………









 波ーーーーーっ!!」




山姥は体内で練った気を両の掌から一気に放出し、業火をかき消してしまいました。




「まじか!あのスピードといい底なしの胃袋と言い、もしかしてあいつ、サイヤ人じゃね!?でも寺までもう少し!」




すんでのところで、小僧は寺に辿り着き、中に逃げ込みました。



「和尚さん和尚さん!山姥が追ってくる!」




やれやれ、という顔をしながら和尚さんは言います。




「小僧よ、山姥の対処はわしがするから、お前は奥の部屋の押し入れに隠れていなさい」


「はい!」





バァン!と戸が開き、山姥が飛び入ってきました。




「小僧はここにおるんじゃろ!?小僧のニオイがする!隠すとろくなことがないぞ!」


「ほっほ。まあそうカッカしなさんな。わしと一緒に茶と大福でも食って一服せんか?」


「誤魔化しても無駄だ!はやく小僧を出せ!」


「ところでお前さんは強大な魔力の持ち主だそうだな。体を大きくすることはできるか?まあできんだろなー」


「容易いことよ。それっ!」




山姥が身の丈5mはあろうかという巨体に変身しました。




「おお、すごいすごい。こりゃあわしら人間は到底敵わぬなあ。感服したわい」


「ふふふ。そうじゃろうそうじゃろう。それに比べるとお前たち人間などひ弱なものよ」


「では逆に豆のように小さくはなれるか?質量保存の法則からしてそれはできんだろなー」


「容易いことよ。それっ!」




(ニィッ…)




和尚さんの口元が確信を得たように緩みました。




「では、獣耳しっぽのついた銀髪美少女ロリババアに化けることはできるか?

 まあさすがのお前さんにもこればっかりは無理だろなー」




「容易いことよ。それっ!」


「めっちゃわしの性癖に刺さった!わしの嫁になってくれ!」


「えっ…」






「お前様、小僧よ、夕餉の支度ができたのじゃ!食べようなのじゃ!」




銀髪美少女ロリババアになった山姥は、炊事洗濯家事と万能で、

あれからすっかり丸くなり、小僧もよく懐きました。

3人は家族として仲良く暮らしましたとさ。



めでたしめでたし。







この伝説は現代にも語り継がれ、萌え寺・了法寺(八王子市)として今でもあつく信奉されている。





(終)

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