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捨てないよ

あれから何事もなく生活していた。

本当に、何事もなく。

何事もなさすぎて、正直、怖い。

こんな俺が簡単に受け入れられるはずがない。

怖い。だから、試すことにした。

俺がこの家に害をなす存在だとしったら、おそらく追い出すだろうな。

どうやって試そうか。

そうだ。この際、俺の絶対に叶わないこの想いを伝えようか。

そうしたら、流石の千莉も俺を拒絶するだろう。

_______________________________


「千莉、伝えたいことがある。」

そう怪我がある程度治り、歩けるようになった桜佳から言われて、私と桜佳は、桜佳の部屋に来ていた。

「伝えたいことって何?」

桜佳なんだか楽しそうだ。でも、どこか、なんと言うか、、、。影がある気がする。

「そうだな、、、。いや、俺には小難しいのは無理だな。」

独り言のように呟いて、桜佳は口を開く。

「俺は、千莉が好きだ。」

えっ、、、。

そう言われて、まずは何事か!と思った。だって、彼は私を好きになるはずがないと思っていたから。

次に、強烈な羞恥と嬉しさ。おそらく、今私は顔が真っ赤なのだろう。

だが、彼は何か別の意図があるのかも知れない。

「どうしたの?急に。それ、ほんとに?」

「あぁ。本当だ。」

「そっ、、、、かぁー。」

信じていいのかなぁ、、、。いやでも、この機会、、、逃してはならん!

「ほんとなんだね?」

「あぁ。」

彼は、なんだか諦めのついたような顔をしていた。

「実はね?私も桜佳が、、、好き、、、だよ?」

「、、、は?」

え、、、。ダメだった?えー。クッソ恥ずいじゃん、、、。

羞恥心に心を苛まれていると、桜佳が口を開く。

「俺なんかを、、、好き?」

「うん。ダメだった?」

もういいや!と割り切って話す。

私の精神はもう大人なのだ。

「いやいやいや。あんたのような、なんと言うか、、、たかねのはな?だったか?そんな奴が、俺なんかを好き?」

「高嶺の花は否定させてもらうけど、そうだよ、、、。悪い?」

「悪くはない、、、。、、、悪くはないが、あり得ないだろ、、、!」

「いやいやあり得るよ?全然あり得る。と言うか、人の好きって気持ちを否定しちゃダメだよ?」

「そうか、、、。でも、、、。いや、、、。」

彼はなんだかとても困惑していた。信じられないと言ったように。

「なんでそんなに困惑してるの?桜佳から告白してきたじゃない。」

「、、、、、、。」

沈黙が訪れる。

「、、、怖かった。俺がこんなに受け入れられたのは初めてだったから。試してやろうと思って。」

桜佳は静かに涙をこぼす。

「あんたは本来、俺なんかと関わらなかったはずの高い身分の奴だ。だから、こんな奴に好かれたと思ったら、俺を捨ててくれると思って。、、、捨てて欲しかったわけじゃない。むしろ、これから捨てられるのが怖いぐらいだ。

、、、ごめん。試すなんかして。ほんと、ごめん。俺は多分、相当捻くれてんだ。」

私は無言で彼を抱きしめ、口を開く。

「大丈夫。捨てないよ。」

彼の背中を優しく撫でる。大丈夫大丈夫、と以前言った言葉を繰り返し言う。

彼の涙がおさまった頃、私の背中に回った彼の腕が、縋るように力が強くなった。

「捨てるなよ。」

「捨てないよ。」

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