どタイプさん
私は転生者だ。
物心ついた時から、気づいていた。
二次創作で腐るほど見てきた、前世持ちってやつだ。別に前世の記憶があるからといって、無双できたわけではない。だからといって、流石に精神的には大人なので、気味悪がられるようなヘマはしなかった。
もう一つ、言わなければいけないことがある。
それは、この世界が、男だけ美醜逆転世界だと言うことだ。それはまぁ良しとしよう。だがこの世界では、不細工が差別されていた。それは、街中で平然と行われていて、見るのも辛かった。
そんな、価値観の違いで苦労していた私は現在18歳。
この江戸時代のような世界では、そろそろ結婚するという年齢。私の親は謎に大金持ちだし、私の容姿もそこそこなので、お見合いが殺到するのだ。でも、私はこの世界のイケメンとは結婚したくない。結婚するなら差別しない人がいい。しかし、そんな人はほんとにごく少数だと言える。
両親には申し訳ないけど、私、一生独身遠貫くかも知れません。
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やばいやばい!
マジで運命の人と出会ったかも知れない!
ほんとにかっこいい!
普段、冷静沈着を装ってる私が、内心こんなに興奮してるのには、訳があった。
私は街へ買い物に来ていた。
この日は季節の変わり目真っ只中。
親に頼み込んで、自分の足で新しい着物を買いに行っていたのだ。
そこで私は見てしまった。
めちゃくちゃに怪我をしながら、手を後ろで縛られ、今まさに、公開処刑されようとしている青年を。
私は内心こう叫んでいた。
どタイプなんですけどー‼︎‼︎
しばらくは大人しく青年をガン見していたが、ほんとに殺されそうになっていたので、助け出す事にした。
「そのお方、私にくれない?お金なら払うわ。」
周りが静まり返る。
だが、すぐさま私が大金持ちの娘だと気づき、へこへこする、野次馬たち。
「詩条千莉様、これはこれは。わざわざ御足労頂き、ありがとうございます。」
青年を処刑しようとしていた人が、私に話しかける。ちなみに、詩条千莉とは私のことだ。
「して、なぜ千莉様は、このような不細工な罪人が欲しいのですか?」
「なぜ、私が理由を言わなければいけないの?いいじゃない、くれても。どうせ処刑するんでしょう?」
「まぁ、、、そうなのですが、、、。わかりました。千莉様に献上品として、差し上げます。」
「ありがと。」
私は、やりとりを見ていた青年を見る。
「貴方の罪はなに?」
「盗み。」
彼はその美声を発した。
「そいつの罪は、一度、通行人から金を盗んだ事です。」
「あら、たかだか盗みで処刑されるの?」
「え?だってこいつ醜いでしょう?」
そうだった。こういう世界だった。
「まぁいいわ。彼、貰っていくわね。」
私は彼を支えて、颯爽と去っていった。