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Episode9. 美少女エルフと新たな仲間

街を出てから半日ほど歩いた頃、誠の足はもう限界だった。


「リベル、もう歩けない...休憩しよう」


「誠、まだ昼過ぎだよ?このペースじゃ隣の国まで1週間かかっちゃうよ」


「だって、転生前はデスクワークだったんだから体力ないんだよ!」


誠は道端の木陰に座り込んで、水筒の水を飲んだ。


「それにしても、のどかな風景だなあ。草原が続いてて、街にいた時とは全然違う」


「そうだね。でも油断は禁物だよ。この辺りは魔物も出るから」


「え?聞いてないよ、そんなこと!」


その時、風に乗って微かに誰かの声が聞こえてきた。


「今、誰か声しなかった?」


「うん、僕も聞こえた。あっちの方からだね」


リベルが指差した方向を見ると、少し離れた草原に人影が見えた。


「誰かいる!行ってみよう」


二人が駆け寄ると、そこには美しい銀髪の少女が倒れていた。長い耳の形からエルフだと分かる。


「大丈夫!?しっかりして!」


誠は慌てて少女を起こそうとしたが、少女は意識を失っているようだった。


「リベル、どうしよう!」


「とりあえず水を飲ませてあげよう。それと、体温が下がってるみたいだから温めてあげないと」


誠は自分の上着を脱いで少女にかけ、少しずつ水を口に含ませた。しばらくすると、少女の瞼がゆっくりと開いた。


「あ...ありがとう、ございます...」


「良かった!気がついた!大丈夫?何があったの?」


少女は起き上がろうとしたが、まだ体に力が入らないようだった。


「私は...アテナと申します。魔物に襲われて...気がついたらここに...」


「アテナか。オレは誠、こっちはリベルだよ。とりあえず安全な場所に移動しよう」


誠はアテナを支えて、近くにあった小さな洞窟まで運んだ。


「ここなら雨風もしのげるし、焚き火もできそうだ」


「誠、君って意外と頼りになるじゃない」


「え?そ、そうかな?」


アテナは洞窟の奥で休んでいたが、歩けるほどに回復もしたのか一言つぶやいた。


「あの...私、逃げること必死で汚れてしまって...こんなに汚い姿でいるのも申し訳ないので近くの湖で身を清めたいのですが」


「あ、そうだね。オレたちが見張りをしてるから、安心して行ってきて!何かあれば、いつでも助けに行くから」


アテナは感謝の表情を浮かべて洞窟を出て行った。


30分ほどしても帰ってこないこともあり、誠は心配になってリベルに言った。


「アテナちゃん、大丈夫かな?様子を見に行ってみようか」


「うーん、そうだね。でも気をつけてよ」


誠は湖の方へ向かったが、茂みを抜けた瞬間、目に飛び込んできた光景に固まった。


服を身につけず無防備なアテナがぼんやりだがわかった。

夕日に照らされた彼女の美しいシルエットが水面に映り、まるで絵画のようだった。


「うわあああああ!」


誠は慌てて後ろを向いた。


「きゃっ!」


アテナの驚く声が聞こえ、水しぶきの音がした。


「だ、大丈夫ですか?誠さん?」


「だ、大丈夫!オレは何も見てない!絶対に何も見てない!」


「あの...はい...すいません」


恐る恐る振り返ると、アテナは服を着て、髪は濡れたままだった。顔は真っ赤になっている。


「本当にごめん!心配になって様子を見に来ただけなんだ」


「い、いえ...心配していただいて、ありがとうございます」


二人とも顔を赤らめたまま洞窟へ戻る道中では、気まずい沈黙が続いた。


洞窟に戻ると、リベルがニヤニヤしながら言った。


「誠、顔真っ赤だよ?何があったの?」


「な、何もないよ!」


「ふーん、そうなんだ」


夜になり、焚き火を囲んで三人は話をしていた。


「アテナちゃんは一人旅だったの?」


「はい...実は故郷の村で問題があって、解決方法を探すために旅に出たんです」


「そうなんだ。オレたちも色々あって国を出たところなんだよ」


アテナは安心したような表情を浮かべた。


「もしよろしければ...私も一緒に旅をさせていただけませんか?一人では不安で...」


誠とリベルは顔を見合わせた。


「リベル、どう思う?」


「僕は構わないよ。人数が多い方が楽しいし」


「じゃあ、決まりだね!アテナちゃん、よろしく!」


「ありがとうございます!よろしくお願いします!」


アテナは嬉しそうに微笑んだ。その笑顔を見て、誠は胸がドキドキした。


(なんだこの感じ...転生前にもこんなことあったっけ?)


「誠、また顔赤いよ?」


「う、うるさい!」


こうして誠の旅に新たな仲間が加わった。逃避行のはずだった旅が、思わぬ出会いによって冒険らしくなってきた。


翌朝、三人は南の町を目指して出発した。


「アテナちゃん、昨日は大変だったけど、今日は大丈夫?」


「はい!おかげさまで元気になりました。誠さんとリベルさんには感謝してもしきれません」


「そんなに堅くならなくても大丈夫だよ。これからよろしくね」


朝日に照らされた草原を歩きながら、誠は思った。


(国王から逃げてきたはずなのに、なんだか異世界転生っぽくなってきたな)

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