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月曜日

婚約した祐一とレナ。2人の結婚はまだまだ遠い? アラサー伊達眼鏡男子(忍者)と天然受付嬢(半分女神)の恋模様?!


「「おはよう御座います」」



 受付嬢達の朝の挨拶が聞こえる。



 ――月曜日の会社は憂鬱だ。



 そう思いながら、財務課の桜田は、目の前の自動ドアが開くのを待ってから会社のロビーに入った。



 ――これから週末まで数字とにらめっこが始まるんだよな〜



 そう思うと彼は、肩と胃が重くなった。


 正面から見て左側にある受付に目をやると今時にしては珍しい位の、真っ黒い艶のあるストレートヘアの女の子が座っている。



 ――へえ~新人の受付嬢かな美人じゃないか?



 周りの男共も遠巻きにチラチラ気にしているのが分かる。



「おはよう御座います」



 丁寧に頭を下げる新人の女の子と、隣にいつもの受付嬢。



 ――あっちは確か社内に彼氏がいた筈だよな。



「おはよーう」


「お早うございます桜田さん」



 いつもの受付嬢が笑顔で答える。



「そっちの彼女、新人さんかい?」


「はい。先週末からこちらに配属になりました。宜しくお願いします」



 正面から見るとかなり可愛い・・・ていうか凄い美人だよ!?



「あれ? 君、目の色?」


「あ、この子ね、ハーフなんだって~。お母さんが金髪美人らしいわよ〜」



 キャッキャと笑う、もうひとりの受付嬢。



「へえぇ〜英会話とか得意なの?」


「いえ。殆ど日本に住んでいたのでそれ程は喋れません」



 そう言いながら微笑む笑顔にドキリとしたが・・・


 左の薬指に、キラキラ輝く石の付いた指輪がチラリと見えて桜田はちょっとだけがっかりした。



「彼氏がいるんだ〜」


「あ、いえ、彼氏ではなくて・・・あ」


 

 目の前の新人受付嬢が急に出入り口に向かって小さく手を振ったので何となく振り返ると、同期の神谷祐一が入って来た所だった。


 ――うわ、生意気に新人の受付嬢に手を振ってやがる。

 俺より先に既に知り合いかよ?



「「おはよう御座います」」



 受付嬢2人が同時に神谷に頭を下げて挨拶をする。



 ――まあコイツ、俺と同い年の癖に役職付だからな〜



 彼は一直線に受付にやって来て、



「おはよう」



 と、いつものイケメンボイスで受付に声をかけた。



 ――神谷祐一。コイツは()()()()()()()()()()が、女子社員に隠れ人気がメチャクチャある。


 いや、俺も人気が無いわけじゃないが・・・どっちかっていうと俺は結構モテる男だ。

 ただな〜コイツあんま喋んねえから皆んな気がついてないが、眼鏡外すとアイドルみたいな男前なんだよな~〜って、今、お前、眼鏡どこやったーーーー!!



「神谷、眼鏡!」


「ん? おう。桜田おはよう」


「眼鏡どこ行った?」


「え? ああ。ポケットだ。元々PC用だから別にかけなくても不便じゃないが?」



 ――お前! 俺が不便する! ほら見ろ受付嬢が、2人共お前に見惚れてるじゃないか〜ヤメロ〜! いや、やめるな、掛けろっ!



 1人ワタワタする桜田を他所に何やら白い封筒を新人の受付嬢に渡す祐一。


 以前からいる受付嬢が顔を赤くして、



「うわ、うっそお。神谷課長ってめっちゃイケメンじゃん・・・」



 そう呟いているのを聞いて、



 ――お前彼氏いるだろ〜! 



 と、胡乱な目になる桜田だった。







 

「じゃあ、お昼休みに」



 桜田が呆然としている間に2人で何か会話をしていたようだが、気が付くと新人受付嬢にそう言い残して、エレベーターの方へと長い脚でどんどん歩いていく祐一。


 エレベーターの扉の前で振り返り、



「おい、桜田、遅刻してもいいのか? 先に行くぞ?」



 と声を掛けられてハッとした。



「あー 待て待て! 俺も一緒に行く」



 小走りになり開いていたエレベーターに飛び乗ると、ドアの開閉ボタンを押して待っていた祐一が受付に向かって手を振ったのに気がついた。


 彼女がどういう反応だったのかは背中を向けていたので桜田は分からない。



「なあ、お前さっきの受付嬢に何か渡してただろ?」


「うん? ああ、頼まれてたから」



 入社したばっかりの美人社員に何を頼まれたんだよと言いたげに、周りの男共も一緒に祐一の顔をチラチラ覗く。



「ひょっとして、知り合いなのか?」



 ちょっとだけ考える様な仕草をする祐一。


 柔らかそうな猫毛がさらりと落ちてきて額にかかる。



 ――コイツ、眼鏡外すと無駄に色気があるんだよな・・・



 思わずジト目になる桜田である。




「知り合いっていうか、婚約者だな」


「「「「「は?」」」」」



 エレベーターの中にいた社員全員が祐一の言葉で目が点になる。



「な、なんだお前、婚約者とかがいたのかよ〜。いい()がいるからって呑みに誘っても断る筈だよな〜ちゃんと教えとけよ、水くさいなぁ」



 動揺を隠しながら、桜田は祐一の背中をバシバシ叩く。



「まあ、あんな美人が彼女だったんじゃなあ、隠すのも仕方ないかぁ。心配だもんな」



 ハハハ、と白い歯を見せて笑う桜田。


 周りの社員もウンウンと隠れて頷いている。



「いや? 彼女と婚約したの一昨日だぞ」



 エッ、とその場にいる全員が祐一の顔を2度見した。



「なんだ、じゃあ長いこと付き合ってたのか~、益々水くさいなぁ、お前ってヤツは・・・」



 天井を見上げながら何かを考えている祐一に向かって思わずジト目になる桜田。



「いや? 麗奈さんとは出会って今日で4日目だな。その間お前と会う事もなかったんだから、知らなくて当然だろう・・・」



 こっちを向いて爽やかな笑顔を見せるイケメン。



「・・・結婚式は多分、夏頃になる。その頃なら会社の休みも取れるだろうからな。場所次第では招待できるからさ」



 その時丁度、エレベーターのランプが3Fで点滅して扉が開き、



「お、着いたな」



 そう言うと、祐一は廊下に出て行った。



 一瞬、エレベーター内が無音になり、



「「「「「「えええええええ〜」」」」」」



 エレベーターが大いに揺れたのは地震のせいでは無かった筈である。







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