エピローグ
「解決したんだね」
お会計のときに、リリィのママがそっと言ってくれた。チーンと音が鳴る古臭いレジスターに向けられた目元の、目尻の方がすこし緩んでいた気がした。
半地下の飲食店街を出て、#name#とわかれてアッキちゃんとあたしは手を繋いで新宿の街を歩く。
日が落ちるのが少し早くなった空は淡紫色になっている。
「……オノレはママがしばらく面倒見るんだってね」
言葉を探したけど見つからなくて、そんなことを言った。
「あたしも最初、家を出てからはババアに世話になってたんだ。ああ見えていい人だから、大丈夫だよ」
「うん。……あのさ」
そう言いかけたところで、正面から小さな葉が飛んできて、あたしの目の横をかすめる。
反射で目をつぶる。痛みを恐れる小さな小さな震えが、体のなかを一瞬通り過ぎていく。
どんな小さな痛みも、怖くて当たり前なんだ。
「あのさ、オノレは【怠惰】なんかじゃないよね。逃げて当たり前の状況だもん」
言葉を繋げながら、アッキちゃんの手を強く握る。アッキちゃんがそれを握り返す。
「そうだね。でも七つの大罪の担当は仮面でもあるから。【怠惰】の仮面はきっとこれからのオノレを助けてくれるよ。『命の使い道』なんて肩の力入りすぎだもん」
「うん……」
あたし達は静かな会話をつづけながら歩く。
ただ、歩く。
「あ!」
アッキちゃんが声を上げる。
「ね、二人で写真撮ろうよ。それを毒虫ちゃんのアカウントで上げるの。新しいSin-sを作っていこうよ。居場所は、あたし達で作る」
アッキちゃんの緋色の瞳に、泣きそうなあたしの顔が映ってる。せっかくあたし史上一番に盛れるメイクをしてもらったのに、崩れそう。
なんでもない道端でツーショットを撮って、その場でツイートをする。
これはあたしが、自分自身の力でこれから羽ばたいていくっていう宣言。
毒虫@dokuhakiuzimushi
新生Sin-sは全部をぶっ飛ばしてくよ
傲慢なアッキちゃんと憤怒を抱えた毒虫が最高にアガる世界を見せてあげる
だから早く、推しておきな
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