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第23話


 夢じゃない。

 よね……?

 まだ心臓がドキドキしてた。

 今日の出来事を思い出しては、気分が舞い上がる。

 私、クランド様と一緒になれるんだっ!

 と、思い出し、嬉しくてクッションに顔を押し付けて、叫びたい気分。

 だってだってっ!


 やっぱり、嬉しいっ!!!


 クッションを抱きかかえ、ソファーに寝っ転がってゴロゴロしていた時。

 トントン

 と、部屋の扉を軽くノックする音が響いた。

「ハイ?」

 私が何気に声を上げると。

「ユリナ、入っていい?」

「!」


 クランド様っ!


 の、声だった。

 ソファーに寝っ転がっていた私は飛び起きて、扉に駆け寄った。

 胸の鼓動がまた、早くなる。

 そう、だったっ!

 部屋に帰ってきて、アンに流されるようにお風呂も済ませて部屋着に着替えちゃったけど。


 後で部屋に行くからって、言われてた!


 浮かれてて……忘れるなんて。

「すみません。……着替えちゃった」

 扉越しに謝る私に、クランド様が笑う様子が伝わってくる。

 私は扉に両手と額をつけて、自分のパジャマ姿を見て嘆いた。

 見せられる、恰好ではないと。

 だって、バーナード侯爵家に居た時でさえ、パジャマ姿は見せなかったのに。

「俺は気にしないけど。むしろ、見たいかも……家では見せてもらえなかったし」

 興味深そうな声がして、私は焦る。

「な、なにをおっしゃって……っ!」

「ダメかな?」

「ダメです!」

「どうしても?」

「どうしても……!」

 私がもたれていた扉が急に開いた。

「あ……」

 支えを失った私の体が、扉を開けたクランド様の胸にぶつかる。

「……捕まえた」

「……」

 嬉しそうな声がして、クランド様は私をぎゅ~っと、抱きしめた。

「あの……っ! クランド様?」

「あ、ああ」

 我に返ったクランド様は、そのまま部屋の扉を後ろで閉めた。

「可愛いね。……もうお風呂に入ったんだ?」

 パジャマ姿の私の髪をすくい上げ、クランド様は髪にキスをする。

「……ダメだって言ったのに。今日はいろいろあったので、早く休めってアンが」

 頬をふくらます私に、クランド様は頬をかいた。

「もう、入ってしまったし。それに、後で行くって伝えたよ?」

「……」

 そうですけど。と、訴える上目遣いの私に、クランド様は再び近づくと。

「今日は、君と俺の結婚が正式に決まった日だから、このまま帰りたくないな。今日も一緒に過ごせたらいいのに」

 と、優しく抱きしめる。

「……あの」

「もう少しだけ、このまま」

 耳元で囁かれる声が、ゾクゾクする。

「ユリナを抱きしめる感触がいつもと違う……パジャマだからかな」

「っ!」

 薄着ってこと……っ?!

 焦る私の耳元に、再び扉をノックする音が聞こえた。


「ユリナ様、ロキ様とリアム様が先ほどお戻りになりましたので、ライアン様のお部屋に来るようにとのことですが……」


 扉の向こうで、アンの声がする。

 返事をしなければ、この扉を開けられることはないだろうけど、

 扉1枚挟んだ向こう側にアンがいるかと思うと、ますます恥ずかしくなって焦る私。

 そんな私の耳を、クランド様はペロッとなめた。


「……ひゃっ!」


 ぞくぞくとした全身をめぐる身震いと、私の変な声が上がる。


「お嬢様?!」


 耳をクランド様になめられ上がった私の小さな悲鳴に、驚くアンの慌てる声がした。

「あっ……、なんでもないの。す、すぐ行くって、お、お兄様に伝えて」

 クランド様の腕に抱きしめられたまま、扉を開けられるんじゃないかと思ってドキドキしながらも平静を装いつつ、返事をする。

「はい、……かしこまりました。あ、もし、クランド様がご一緒でしたら二人で来るように。とのことです」

「え……?」

「先に、ライアン様にお伝えしときますね」

 扉の向こうでアンが、すべてお見通しです。と、笑っているのではないかと思って恥ずかしくなる。

「……」

 アンの去って行く足音を静かに聞いていた。

 ホッとする私の耳元で、クランド様の押し殺した笑い声がする。

「ユリナ、本当に耳、弱いね」

「……意地悪ですよ」

「反応が可愛くって、つい」

 と、クランド様は微笑むと、ため息をつく。

「はあ、でも、ライアンに俺がユリナの部屋に居ることバレバレだね」

 と、クランド様は苦笑する。

「もう少し、ユリナと二人で居たかったけど、仕方ない」

「……」

 見上げる私に、クランド様は考え込むと。

「ん~……、でも、行く前に少しだけ」

 くるっとクランド様は私を扉の方に移動させた。

 私の背中が、扉に当たる。

「……っ」

 驚く私にクランド様はにこっと笑うと、クランド様の両腕が私の頭を挟むように扉に押し当てられた。

「あ……っ」

 ドキッとした。

 周りの視界が遮られ、クランド様しか見えない。

 逃げられない状況が、胸をさらにドキドキさせる。

 見上げる私に覆いかぶさるようにクランド様は近づくと、キスをした。

 これ、壁ドンだ……。

 視界を塞がれて、お互いの顔しか見えなくて、逃げ場がない感じが、ドキドキする。

 いつものキスと、なんか違う……。

「は……ぁ…」

 離れた私の口から、吐息がこぼれる。

 クランド様はさらに私の額にキスをする。

「……」

 恥ずかしくて俯く私に、クランド様は、

「行こうか」

 と、優しく声をかけ手を差し伸べた。

「……はい」

 私はその上に自分の手を重ねる。

「もう少しの我慢だね。結婚したらもっとたくさん、しかも堂々とユリナを愛してあげられる……」

「あぃ……っ?」

 にこっと、いたずらっぽく笑うクランド様に、私は胸、打たれた。

 その笑顔……し、心臓がもたない……です。

 クランド様と並んで歩きながらライアンお兄様の部屋へ向かうその手は、しっかり恋人つなぎで握られている。

 どうやら、クランド様はこの手のつなぎ方が気に入ったみたい。

「……」

 私はちらっと、クランド様の横顔を覗き見る。

 相変わらず、綺麗なお顔……

「そういえば、ロキとリアムの二人も、皇太子妃のお披露目パーティーに?」

 クランド様は思い出したように尋ねる。

 盗み見てたのがバレたかと思って、思わずドキリとしてしまう。

「あ、ハイ。ロキお兄様は騎士として地方に派遣中ですが、身内の、私たちのお披露目でもあるので、国王陛下から特別許可をいただけたそうです。リアムも、学校に休暇申請して、しばらく家に居るみたいですよ」 

 さっきアンから教えてもらった内容を、そのままクランド様に告げる。

 私には、三人の兄弟がいる。

 クランド様と同級の長男、ライアン・ウィリアムズ。

 私の五歳上で、今は地方に派遣されている騎士の次男、ロキ・ウィリアムズ。

 そして、私の三個下。今は寄宿学校にいる弟、三男、リアム・ウィリアムズ。

 久々に、兄弟全員の再会に、みんな喜んでいることだろう。

「……」

 みんなが集まったのは、いつが最後だったっけ……?

 そんなことを考えながら、私はクランド様と共にライアンお兄様の部屋に向かって歩いて行った。


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