第13話
絡みつくキスが終わると、クランド様は私の首筋にキスをする。
「……っ!」
ピリッとした痛みが首筋に走って、身体が大きくはねた。
こんな明るい場所で、
周りから丸見えで、
は、恥ずかしすぎる――――――っっっ
「く、くらんどさま……ぁ!?」
いろんなことに耐えかねて、私はクランド様を押し退けた。
「……」
私の声に我に返ったように、クランド様は動きを止める。
「はぁ……っ」
吐き出す息が、熱い……
もう、ゾクゾクしすぎて、
身体に力入りすぎて……
「……」
つかれた……
力尽きてふらつく私を、クランド様は慌てて支えた。
私はまたしても、クランド様の腕の中でぐったりしてしまう。
クランド様は大きなため息をもらした。
「……ごめん、君が可愛くて」
と、私の肩に頭を寄せる。
「……キスマーク、たくさん」
「え゛っ」
クランド様は私のうなじの右側をトントンと軽く指で叩いた。
「……しばらく肩のあいた服、着れないね」
困ったように笑うクランド様に、私も思わず笑ってしまう。
「……ユリナ、大好きだよ」
「……」
私を抱き寄せるクランド様の腕の中で、私はドキドキが止まらなかった。
耳に届くクランド様の優しい声が、言葉が、くすぐったい。
「……早く、結婚したい」
「え?」
「もう、離れたら死んじゃうかも」
「……はい?」
「ユリナにずっと触れていたい……」
「大げさです」
「……残念」
クランド様は私から離れると、
「……。ユリナって、どうしてそんなに可愛いんだろうね」
と、私の横に寝そべった。
ニコニコ笑顔のクランド様を、私は無言で受け流しながら、首元のリボンを結びなおした。
「……」
冗談なのか本気なのか……。
いつもわからないんですけど。
「そういえば、あんまり宝石類身に着けないんだね。今日の服装は首が出ないタイプだったから?」
「いえ。……あんまり、好きじゃないんです。ネックレスは肩凝るし。指輪はドレスとかひっかけちゃうし。身に着けるとしても、ピアスぐらいです」
「……結婚したら、する?」
「?」
「指輪」
「あ、……はい」
赤くなる私に、クランド様は微笑んだ。
「ブレスレットは?」
「え……?」
「ブレスレットなら、してくれる?」
「……」
それは、どうゆう意味……?
「すると、思いますけど?」
「そっか……」
クランド様は微笑んで見せると、
「膝枕、して?」
と、私の太ももに頭を乗せてきた。
「もう少ししたら、勤務時間だから戻らないといけないけど。ちょっとこのままで居てね」
私の太ももの上で、クランド様は目を閉じる。
「……」
あぁ、私、本当にこの顔、好きだな……。
それから少しして、クランド様の勤務時間が近づいてきた。
私たちは再び恋人つなぎで手を繋ぎ、王宮の庭を後にする。
「あ、団長。皇太子殿下が、今日は団長、帰っていいって言ってましたよ?」
クランド様の隣に私がいるのに気が付いて、その騎士は慌ててお辞儀した。
「失礼しました、ウィリアムズ公爵令嬢」
「……私を、ご存じですか?」
「ええ、ライアン副団長の、妹さんですよね?」
「ああ、そうでした……。兄がいつもお世話になっております」
と、私も彼にお辞儀する。
「……殿下も、またいい加減なことを。俺が帰って誰が対応するんだ?」
「あー、それこそ、ライアン副団長じゃないですかね。かなり不機嫌でしたし」
騎士の人は思い出したようにつぶやいた。
「怖すぎて、今は誰も声をかけられないかと」
引き攣る笑顔に、クランド様は驚いた声を上げる。
「ライアンが? まだ居るのか? 用事があるって……」
「……」
私が言葉を失っていると、クランド様の心配する瞳が私の視界に飛び込んできた。
「クランド様……」
きっと、今の私の顔は青ざめていることだろう。
「?」
「ダメです、クランド様!」
「……」
「今日は、ライアンお兄様たちの結婚記念日です! 去年もお義姉さまに素敵なサプライズを用意されていたんで、今年も考えていたはずです……っ! わざわざお休みまでとって……っ!」
涙目の私の言葉に、クランド様はああ、と頭を抱える。
「昨日といい今日といい。ライアンに迷惑かけてばかりだな」
と、クランド様は呟くと、目の前に居る騎士さんと共にライアンお兄様を探し出し、早く帰るように促して、私の馬車に押し込んだ。
「皇太子殿下にはどう説明するつもりだっ!」
と、ごねるライアンお兄様を無視して、私の馬車は帰路に着いた。
多少の変更はあったものの、執事やメイド長、使用人たちの協力もあって、お兄様とお義姉さまの結婚記念日は、多分、成功した。
お義姉さまにとっては、サプライズもなんでもない結婚記念日だけど。知らないふりしてとても喜んでくださっている。ライアンお兄様も、それがわかっているけど、口には出さずに結婚記念日を楽しんでる。本当に仲が良くて、羨ましい夫婦。
「……」
私もいつか、クランド様とそんな日が迎えられるといいな……。
リナの誕生日パーティーの前日。
「……」
鏡でクランド様が付けた首筋の、なかなか消えない痣を見て、顔が赤くなる。
これでは、用意していたドレスは恥ずかしくて着れない。
「……」
まだ着ていない、デコルテから袖がレースのドレスがあったような……
アンに言って探してもらわないとな……
再び鏡のキスマークが見えて、今度はズキッと胸が痛んだ。
クランド様は、私がキスが初めてではないと、疑った。
なら、初夜は……?
婚約破棄がされて、クランド様と成婚できるまで、どのくらいかかるだろう……。
「……」
まだ先が、私にはわからない。
これ以上求められて、受け入れたとして。
「……」
ユリナが初めてだと、また思われなかったら、どうしよう……。
また、疑われたら……。
ゾクッと、悪寒が背中を走った。
思わず、自分の体を抱きしめる。
友理奈の記憶がまた、影響するかもしれない。
クランド様にどう思われるのか……、怖い。




