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第12話


 騎士の方々の取り調べ? は、あっけなく終わった。

「……」

 ライアンお兄様の無言の圧力が要因のひとつではあるけれど……。

 思い出して、頭を抱える。

 明らかに騎士の方は怖がっていた……ような。

 思えば、家を出た時からライアンお兄様は珍しく不機嫌だった。

 いつも怖い顔してるけど。

 私には、甘い人。

 しかし、キールやリナをあんな風に見たのには驚いた。

 あからさまな敵意に驚いて、二人は慌てて帰ってたけど……。

「……」

 キールはともかく、リナにはフォローしないとな……。

 私は今、王宮の皇太子殿下の元に向かっている。

 プライベートな事、だからと、皇太子殿下の自室に招かれた。

 もちろん、ライアンお兄様と一緒に。

 そして、その自室には、すでに皇太子殿下とアイリスがいた。

「……」

 主人公二人は絵になるなぁ……

 入った瞬間に目を奪われてしまったが。

 私の横でライアンお兄様が先に跪き、慌てて私も右手を胸に当て頭を下げる。

「皇太子殿下に、お目にかかります」

 皇太子殿下は私の姿を確認すると、

「昨日は、迷惑をかけたな」

 と、笑う。

「……」

 昨日はラフな平服だったけど、今日はしっかり皇太子殿下だ。

 アイリスも、それなりのドレスに身を包んでいる。

 あ、ダンスの練習でもしてたのかな?

「お前が居なければ、怪我ではすまなかったかもしれん。礼を言う」

「!」

「殿下……っ!」

 頭を下げる皇太子殿下に慌てる私とライアンお兄様に、問題ないと、皇太子殿下は言い放った。

 そして。

「ああ、来たな」

 私たちに遅れて、誰かが部屋に入ってきた。

 それは……。

 クランド様っ!

 だった。

 驚く私と目が合うと、クランド様は嬉しそうに微笑んでくれる。

「……」

 つい、昨日のことを思い出して、私は赤くなった顔を隠すように俯いた。

 首筋や、頬が熱い。

 隣から、ライアンお兄様の小さなため息が聞こえた気がする。

「お目にかかります」

 と、クランド様は私の隣で皇太子殿下に跪いた。

「まだ勤務の時間ではないのに呼び出して悪かったな」

「いえ。お呼びとあれば、いつでも……」

「……ユリナ・ウィリアムズ公爵令嬢」

「は、はい……」

「お前の婚約者はバーナード侯爵家の三男だと聞いたが……? ……お前たち二人の恋愛は、周りには内緒なのか?」

 皇太子殿下が何か含み笑いをする。 

「え?」

 嫌な予感……?

「クランドが勤務日の休憩中にも、二人で王宮の庭を堂々と散策デートできるよう、たまにお前を王宮に招待してやろう。ユリナ・ウィリアムズ公爵令嬢」

「……はい?」

 いちいち名前を連呼しなくても……。

 唖然とする私に、皇太子殿下は楽しそうに笑っている。

「秘密の恋は、燃えると言うしな」

「……殿下っ!」

 呆然としている私の隣で、ライアンお兄様が声を上げていた。

「ライアン、妹もいつまでも子どもではない。諦めるんだな」

「~~~」

「そうそう、俺たちに出くわしても、挨拶はするなよ」

 と、皇太子殿下はアイリスを連れて部屋を後にする。

 去り際に。

「この王宮の庭でも、どこでも好きに使え。俺からの褒美だ」

 と、言い残して。

「……」

「改めて聞くと、本当に妙な気分だ……」

 去って行った皇太子殿下の言葉を受けて、ライアンお兄様は頭を抱える。

「……クランド、午後は?」

「あー、仕事だね」

「……そうか。じゃぁ、適当に迎えをよこす」

「ライアンは、休み?」

「ああ、俺はこれから、用事がある」

 と、ライアンお兄様は私たちに手を振って部屋を出ていく。

 そうだ、今日はわざわざお休みを取っていた、お兄様にとって特別な日……。

「……こんな機会なかなかないし、王宮の庭でも散歩しようか? 案内するよ」

 二人残されたクランド様は、私を見て微笑んだ。

「はい!」

 素直に答えた私に、クランド様も嬉しそうだ。

 王宮のお庭なんて、確かにそうそう来れるところではない。

 それに、クランド様と過ごせる時間は、とっても嬉しい。

「手でも、繋ぐ? 殿下の言った様に、外ではできないしね。俺は気にしないけど」

 と、差し伸べる。

「……」

 私はその手を、素直に受け入れた。

「ああ、せっかくなら、恋人つなぎを」

「? 恋人つなぎ?」

「そう、こうやって、交互に指を挟んで繋ぐんです」

 と、私はクランド様の手と自分の手を絡めた。

「……うん、いいね」

 照れたように微笑むクランド様が新鮮で、ドキッと胸が跳びはねた。

「はい……」

 なんだか私も恥ずかしくなって、俯いてしまった。


 王宮のお庭は、広かった……。

「……」

 これは、もう一人では戻れない。

 と、来た道を振り返る。

「……ちょっと、奥まで来すぎたかな」

 クランド様も苦笑する。

「ここまでくると、なかなか人とも会わないから、二人っきりにはなれるよ」

 と、私を見る。

「……」

 え? その言葉の意味は……?

 ハッ。

 私ってば、何か期待してるの???

 急に恥ずかしくなって、目を伏せた。

「少し座ろうか?」

 と、クランド様に声をかけられて、私は頷く。

 ほんのり日が当たる木陰の芝に、クランド様は上衣を脱ぐと、芝の上に広げる。

「ここに座って」

「……」

 わぁ……そんなことしてもらえるなんて。

「制服は着替えがあるから大丈夫だよ」

「……、ありがとうございます」

「あ、膝の上でもいいけど?」

「……こっちで、いいです」

「あは、残念」

 と、クランド様は声を出して笑った。

「今日はずいぶんとお堅い感じだね」

 クランド様は、隣に座った私を眺めている。

「……?」

「可愛いけど」

 と、スカートを触った。

 ああ、服装のことかな。

 今日のドレスは友理奈の世界で言う、ゴスロリに近い。

 襟に黒の絹のリボンが通され、首元で大きなちょうちょ結びができる。

 そのリボンが気に入っているのだけど。

 友理奈なら、絶対着れない……。

「……ライアンお兄様が、騎士の皆様に会うからって」

「ああ、そっか。さすがライアン」

「……?」

「でも、ユリナは肩や首筋が出るドレスも良く似合うよ」

「……どっちかというと、その手のドレスのが少ないかと思うのですが」

「そうだっけ?」

「はい、あまり好みではないので……」

「でも、まあ、脱がせがいがあるかな」

「え……?」

「人前で。外でイチャイチャするのは、まだハードル高い?」

「……」

 ぼんっと沸騰した私の顔を見て、クランド様は苦笑する。

「……だよね。では、今日はここで我慢」

 ぱくっ

「ひゃんっ!」

 クランド様が私の耳を甘噛みする。

 ゾクゾクと全身が震える。

「……」

 はぁ、と、息をつく音が聞こえたかと思うと。

「やっぱ無理」

「え……」

 クランド様の手が私の頭に回り、キスをした。

 甘い刺激がまた、全身を巡る。。

 お互いの吐息が漏れる中で、クランド様を受け入れながら私はハッと気が付いてしまった。


 え……っ!

 なんで、首元のリボン解いてるの?!


 溢れ出る吐息の中で、クランド様の手が首元のリボンを絡みとっていた。


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