2. 寮までの道のり
このお話は、第二章の生徒会の顔合わせの後、リリアを寮まで送って行った時のお話です。
私、リリア・バーグマンは、何故こうなったのか分からないまま、寮までの道のりを歩いていた。
先ほど生徒会の顔合わせが終わり、寮に戻ろうとしたら、エミリー様が、
「リリアさん、寮まで送って行くわ」
と、言い出した。
私は驚いて、
「寮まではそんなに遠くないので大丈夫です」
と言ったのだが、
「寮ってどんなところか見てみたいのよ。ね、いいでしょ?」
と言うので、エミリー様とシルフィアナ様が一緒に来るだけならまあいいか、と思ったのだが、シルフィアナ様がエドワード様に確認すると、何とエドワード様も行くから、待っていてくれと言う。
そうなると、他の方々も一緒に来ることになり、エミリー様とシルフィアナ様の他、1年の生徒会役員であるカール様とルーク様、そしてエドワード様とその側近であるレイモンド様とオスカー様。結局お昼をご一緒した錚々たるメンバーになってしまったのだった。
寮は学園の同じ敷地の木立を挟んだ隣にある。
それほど遠いわけではないし、迷うような場所でもない。
もちろん道中に危険があるわけでもない。
なのに、私1人を送るのに、このメンバーは豪華すぎるだろう。
(まあ、私を送るのがメインではなくて、寮の見学がメインなのだろうから、そう思えば気は楽か……)
そう考えたが、周りはそうは思わないようで、寮の誰かが気が付いて、寮の窓には王子殿下はじめ、錚々たるメンバーを見ようと、沢山の人が顔を出している。
そして私のことを見て、
「何故あの子があのメンバーの中に入っているの? 信じられない! 全くもって不釣り合いだわ」
などと言っているのだ。
また夕食の時には、他のご令嬢からイヤミを言われるのかと、憂鬱になったが、
「何か嫌がらせとかイジワルされたら言ってね。私が守ってあげるから」
そう言ってくれたのはエミリー様だ。
「昔は私やシルフィもいろいろ嫌がらせとかされたのよ。シルフィはおとなしかったから、私が守ってあげてたの。私、口喧嘩では誰にも負けないから、任せておいて!」
と、言ってくれる。
今まで私にそんな事を言ってくれる人はいなかった。
私はその言葉だけで嬉しくて、涙が出そうだった。
「そうそう、私もよくエミリーに守ってもらったわ。エミリーは頼りになるわよ」
「もし危害を加えられそうなら、私に言ってね。何とかしてあげるから」
そう言うのはシルフィアナ様だ。
おふたりの言葉に胸が熱くなる。
私は人見知りだし、この学園に知り合いもいないので、3年間1人で居ることを覚悟していた。
でも、おふたりにこんな風に言ってもらえた事が、本当に嬉しくて、おふたりと共に居られるように、精一杯努力しようと心に強く誓うのだった。
お読み頂きありがとうございます。