1. 学園の昼食会 レイモンドの場合
これは第二章でシルフィ達が学園に入学して、エディ達と食堂でお昼を食べている時の、レイモンドとエミリーのお話です。
シルフィ、エミリー、カールが学園に入学してきた。今日は初日だ。
エディはシルフィと一緒に学園に通えると、大層喜んでいるが、実は俺、レイモンド・ウィンスターも密かに喜んでいるのだ。
なんと言っても、俺の婚約者のエミリーも入学したからだ。
しかもエディは昼食をシルフィと一緒に食べるという。
そうなると、ほぼエミリーとカールも一緒にという事になるだろう。
エディとオスカーと三人で、1年A組に行く と、シルフィが廊下に出て来て、その後からエミリーも出て来た。
案の定、エディはカールとエミリーも一緒にと誘ってくれた。
(ヨッしゃー!)
と心の中で俺は叫んだ。
だが顔には出さない。
エディとシルフィが前を並んで歩く後ろを、俺はエミリーと並んで歩くのだった。
俺は割と愛情表現はおおらかな方だと思う。
だが2人きりの時以外は、あまりイチャイチャしないようにしている。
それは、去年の春までは、エディとシルフィが、あまりうまくいっていないと思っていたからだ。
そんな2人の前で、俺たちがイチャイチャするのもどうかと思うので、2人きりの時以外は普通に接していたのだ。
だが今は、エディとシルフィもとても仲が良いので、それほど気を使わなくてもいいのだろうが、やはり妹が婚約者とはいえ、男とイチャイチャするのは見たくないもので、つい人前でイチャイチャするなと言ってしまう。
だが、俺がそう思うという事は、俺とエミリーを見て、オスカーとカールもきっと同じ事を思うのだろう。
そう思うと、やはり人前ではあまりイチャイチャするのは良くないなと思うのだった。
食事が終わり、お茶を飲みながらみんなで話している時、
「今日は初めての学園だから疲れただろう? 大丈夫かい?」
隣に座るエミリーにそう聞くと、
「ええ、シルフィとカールが居るから全然平気よ」
そう、楽しげに微笑む顔が、とても可愛い。
「そうか、それならいいが……」
と、言いながら、テーブルの下で膝の上に置かれたエミリーの手を、チョンチョンと突ついてみた。
そうすると、俺の方を見たエミリーが、その掌を上に向ける。俺はその手に自分の手を重ね、指を絡めるのだった。
周りは誰も気づいていない。
エミリーはほんのり頬を染めるが、俺はいつものポーカーフェイスだ。
だが手を繋ぐ、たったそれだけのことがとても嬉しい。
エディが教室に戻ろう、そう言い出すまで、ずっと手を繋いでいたのだった。
そうして、毎日一緒に昼食を食べる事になったが、俺とエミリーの食後のふれあいも、誰にも気付かれることなく、ずっと続いているのだった。
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