大魔王だって平和的に地上を侵略したい!
魔界。
そこは、遥か昔に魔法を極めた人間のとある一族が地上を追い出されてしまい、地底世界に築き上げた世界である。
そして、人間は太陽無しで地底で生きられるように自分たちの体を魔法で改造して魔族になった。
これは魔界に伝わる伝説だ。
魔界でも信じている者は少ない。
だが、伝説を信じる私には目標がある。
今日、私は魔界の王に就任した。
そして、魔王となったからには魔族が再び地上に戻れるよう頑張りたい。
でも、魔界と人間界で戦争をするのは嫌だ。
どうすれば戦わずに地上に戻れるかを考えた。
考えた結果、答えは出た。
簡単なことだ、地上の人間に魔族を認めさせればいい。
どうやって?
実は魔界には地上には無い技術が沢山ある。
そういう技術で作ったものを地上の人間に渡せば魔族を認めざるを得ないだろう。
特に人間は武器や防具を欲しがるそうだ。
ミスリル、精霊銀、黒曜石、……。
そういった人間界にはない素材の装備を人間に見せつければ、魔界の力の誇示にもなって一石二鳥である。
問題は、親切に配ったところで人間が怪しんで受け取らない事だ。
魔王である私は人間を研究した。
そして、ある事に気が付く。
人間はダンジョンを探索して宝を手に入れるが好きなようだ。
私はひらめいた。
ダンジョンを作って、人間に配りたい武器や防具を隠せばいいのだと。
そうすれば冒険好きな人間が勝手にダンジョンに入り、嬉々として魔界の技術で作られた装備を持ち帰る事だろう。
私はダンジョン建設を魔王として命令した。
魔王の名の元に集まった者たちはダンジョンを作り始める。
そして、地上世界に幾つかのダンジョンが完成したのだ。
次は中に隠す武器や防具。
ダンジョンの奥に行けば行くほど強力なものが出るように上手く配置をする。
そうする事で人間のダンジョン探索欲が刺激されるわけだ。
最後にトラップやモンスターを仕掛ける。
アイテムを手に入れる過程で困難を乗り越えると、人間が怪しむ余裕をそぎ落とすのが目的。
しかし、難易度が高すぎると誰にも武器や防具を配れないのでバランスが重要だ。
こうして、人間界に魔界のアイテムを広める事で魔界無しでは生きられないように骨抜きにして、最後にネタばらしをすれば、人間は魔界無しでは生きられなくなり、地上を侵略できるという訳だ。