第十話 【vs序列九位】
建物の輪郭すら曖昧な白い神殿の中を、一人の男子と二人の女子が歩いている。
もちろんただ歩いているのではなく、周囲を必要以上に警戒しているのが、その動きから見て取れる。
組合員などの経験者が見れば、彼らが戦いの初心者であることは看破できるだろうが、初心者なりに最大限の警戒を払っているのも、また理解できる。
「気を付けてね。どこから敵が現れるかわからないから」
その警告を投げたのは一番後ろにいる女子――谷口梨乃だ。
女子の中でも低めの150㎝という小柄な身長を持ち、その小ささを利用した機動力で敵を翻弄する。
気遣いができて世話好きという性格上、このグループの基本指揮を行うリーダーのような存在だ。
身長から考えると向いていないと言われやすいバスケットボール部に所属しており、そこでも司令塔の役割を担っているから、この配役は万全と言える。
得物は機動力を重視するための軽い短刀で、装備も革で作られた、動きを阻害しない軽いものだ。
「おっけーい」
「了解」
梨乃の警告に返事したのは、この世界に召喚されてからずっとともに鍛錬を重ねてきた塚本夏希と土井駿介だ。
戦場にいるとは思えないくらい軽く返事を返したのは夏希だ。
170㎝と女子にしては高い身長とスレンダーな肢体を持ち、長い手足を最大限利用した戦い方を得意とする召喚者の一人だ。
小学生のころからやっていたバレエを組み込んだ戦い方をするため、召喚者の中でも動きは洗練されている。
両手に握る得物は、短刀というには長く長刀というには短い、絶妙な長さの二刀。
刀の長さにだけ捉われている相手は、夏希の長い手足から繰り出される間合いを読み切れずに初撃を食らうという嫌な組み合わせだ。
その二人の一歩後ろを遠慮がちに歩き、梨乃の警告に緊張の混じった声で返事したのが駿介だ。
夏希と同じくらいの身長で、幼少期から野球を続けてきた野球児で、今はすっかり髪が伸びているが、元は昔ながらの野球児スタイルを貫いた坊主頭だ。
身体能力的な面で言えば、肉体の完成度から考えてもこの三人の中で一番高いが、魔術の適性が翔や日菜子と同じレベルで高い。
特に駿介は、それを特化して鍛え続けた結果、攻撃魔術の威力、精度は召喚者の中で一番高い。
装備は動きやすさ重視で、魔術師と言えばと言ったローブ姿に杖を持っている。
この世界だと原始的と言える杖だが、これを持っているのにもちゃんとした理由がある。
一見すると関係性が薄く、元の世界で特別親しかったわけでもないが、連携という面ではかなりレベルが高い。
その理由は、三人に共通の趣味があったからだ。
「その角の右、五十メートルに反応。魔人だと思う」
駿介の“魔力感知”による索敵により、三人の敵を視認するより前に捉えられた。
その言葉によって、僅かな緊張が走る。
「わかった。陣形はいつも通りで」
「うん」
「了解」
梨乃の言葉に二人が強張った顔で頷き、しかし言われたとおり、夏希を先頭に、後ろに梨乃、更に後ろに駿介と、ドラクエ方式の陣形を組む。
音をなるべく消して、曲がり角の近くまで行き、駿介にアイコンタクトで索敵をお願いする。
戦闘を行く夏希の意図を理解し、駿介は大丈夫と杖を持たない左手で丸を作る。
駿介のサインを受け、深呼吸を一つ挟み、夏希はゆっくりと角から顔を覗かせる。
その視線の先、白い神殿の中だとかなり目立つ真っ黒な服を着た魔人が立っていた。
フードを深々と被っているから男女の区別はつかないが、少なくとも感じる気配というか、雰囲気は今まで出会ってきた強者と同じものがあった。
「まだバレてないと思う」
「じゃあ夏希が先行して、相手が気付いた瞬間に駿介は魔術で牽制して」
「わかった」
「了解」
梨乃の指示に頷いて、夏希は再び深呼吸を挟む。
腰に帯びた二刀を両手に持ち、グッと脚に力を溜める。
どうせなら、この一撃で終わらせるくらいの気持ちを込めて。
「――ん?」
夏希が初撃の準備をしているほんの僅かな時間に、駿介は違和感を感じ、小さく声にもなっていない声を出し、背後に振り向いた。
振り向いた視線の先にあったのは、今まで歩いてきた真っ直ぐな一本道。
そして、その上に生成された十を超える岩弾だ。
「風破ッ!」
岩弾が射出された瞬間に、その威力を軽減させようと風の魔術で対抗する。
物理的な質量を持つ岩弾は駿介の風波を受けて速度を失い、神殿に重たい音を立てながら落ちていく。
それに安堵し、同時にその魔術を放った相手の特定へと急ぐ。
尤も、その特定はするまでもなくわかっていた。
「まだ戦いなれていないな。わかりやすい」
その声は、角の向こうから発せられた。
幼少期の男の子の声にも聞こえる、性別を断定できない曖昧な高い声だ。
「バレてた!」
「作戦変更。この角を起点に立ち回る。陣形はさっきのままで」
「うん!」
「了解!」
梨乃の指示で夏希がいち早く飛び出し、魔人へと真っ直ぐ駆け出す。
“身体強化”込みで百メートルを七秒台で走れる夏希の速度を乗せた一撃が、魔人へと突き放たれる。
しかしそれは、胸の前でいつの間にか取り出していた幅の広い一本の剣によって止められていた。
「危なっ。これは想像以上だ。けど、わかりやすい」
「まだまだ!」
語りの多い魔人を無視して、夏希はバレエを取り込んだ器用な動きを攻撃に当て嵌め、受ける側を困惑させる連撃を見舞う。
手に持つ二刀だけでなく、長い脚による一撃も警戒しなければならず、魔人は堪らず跳び退いた。
「手足が長いな。おかげで間合いが読み辛い。これも想像以上」
ほんの十秒未満の今の斬り合いで、目の前の魔人は夏希の特性に気が付いた。
戦っていればいずれ気づかれると割り切った初見殺しだったのだが、見抜かれるのが早い。
ただ、割り切っていただけあって切り替えは早く済ませられた。
取り合えず夏希も一度引き、梨乃と駿介の元へと戻ってくる。
「魔術あり。剣術あり。おそらく体術も齧ってる」
梨乃は今の戦いから推測できる相手の情報を言葉にし、情報として共有する。
「うん。ただ主体は魔術じゃない。剣術か体術がメインだと思う」
「じゃあ駿介は援護じゃなくて自分の身を守るの優先で。私と夏希がメイン」
「わかった」
「了解」
相手を少しだけ理解した上で、作戦や陣形を適宜変更していく。
これがこの三人が鍛え続けた連携の一つだ。
「反応と判断が早いね。想像以上だ」
これは本腰入れなきゃなぁと隙だらけの格好で伸びをする魔人に、夏希と梨乃は互いの得物を手に持ったまま静止する。
機を窺うかのように動かない。
「ん? 攻めてこないのかな?」
「そんなわざと用意した隙に飛び込むほど馬鹿じゃない」
「さすがにバレるか」
浅はかだったと肩を竦める魔人を見ても、二人は動かない。
さっきと同じでこれも罠だと勘付き、警戒を高めていつでもどんな動きにでも反応できるように構える。
それを見て、魔人はまぁそうだよなと呟く。
「じゃ、始めようか」
その言葉が始まりの合図だったかのように――否、事実始まりの合図だったのだろう。
途端、魔人の気配が引き締まる。
引き摺り込まれるような、異様な雰囲気に、三人の表情がより強張る。
そんな心の機微を察したかのように、魔人が足に力を入れた途端、その姿が掻き消えた。
「消えた!?」
「左!」
夏希が驚きの声を上げた直後、駿介の切羽詰まった声が発せられた。
その声に従い、左へと視線を向ければ、いつの間にか手に握っていた剣を振り下ろしている最中だった。
視認こそできたが反応はできず、その剣が頭へと吸い込まれていく。
「夏希!」
「――おっと」
あわや頭を斬り裂かれそうになった夏希を、反応に成功した梨乃が庇った。
剣を弾き、返す刃で攻撃を仕掛ける。
戦闘経験が一年未満だとは思えないほどに洗練されたその流れに、魔人が思わず跳び退く。
そこへ、夏希の体勢を整えるための余裕を作るために、駿介が魔術で追い打ちをかける。
尤も、殺す為の攻撃ではなく時間を作るための攻撃なので、牽制のようなものだ。
とはいえ、受ければ怪我は免れない一撃であることに変わりはない。
「――ふむ。一筋縄ではいかないね」
「夏希さん。大丈夫?」
「う、うん。ごめん、駿介君」
「無事ならよかった」
「うん。にしてもあいつ、反応が早い。あの体勢から避けられた」
夏希の無事を確認し、駿介の思惑通り体勢を整えられたのを確認した梨乃は、状況整理の為に呟いた。
魔人が攻撃を仕掛け、それに対してのカウンターをしたつもりだったのだが、それはいとも容易く躱された。
梨乃は“身体強化”込みでそれなりの反応速度を誇っているのだが、目の前の魔人はそれ以上の反応速度を持っているだろう。
「夏希、戦える?」
「うん。行けるよ」
「じゃあ、二人でやるよ」
「うん!」
夏希が完全に立ち直り、言葉でその確認が取れた梨乃は、今まで通りの陣形を組む。
夏希が前を張り、その背後にぴったりくっつくようにして梨乃が付く。
「ふむ。動きで翻弄する君が前で、カバーの上手い君がその後ろか。いい形だ」
魔人の呟きで、こちらの意図が透けているのがわかったが、これが一番安定する陣形であることに変わりはないので、変えるつもりはない。
再び、見合うだけの時間が生まれた。
「行くよ」
「いいよ、合わせる」
夏希が小さく呟き、それに梨乃が頷く。
それを確認した夏希はグッと脚に力を溜めて、魔人へと飛び出した。
何の仕掛けも絡繰りもなく、ただ真っ直ぐに魔人へ。
そのシンプルさが、魔人をほんの少しだけ困惑させる。
一瞬の困惑を利用して距離を詰め切った夏希は、右を順手、左を逆手に持った二刀で連続して斬りつける。
さっきの魔人の一撃は虚を突かれて反応できなかった夏希だが、本来の実力が発揮できれば梨乃よりも高い戦闘能力を持っている。
その実力を遺憾なく発揮して放たれる連撃は、魔人を防戦一方へと追いやった。
しかも――
「――ナイス!」
「……」
魔人がほんの一瞬の隙をついて夏希へと剣を向けても、梨乃が完璧にカバーする。
逆に、剣を弾かれたことで隙が作られ、夏希の猛攻を受けるのがさらに辛くなる。
それ以降、攻勢に出ることはできず、ただひたすらに防衛に徹している。
しかし、それでも魔人は、ギリギリのところで夏希の攻撃を凌ぎ続けている。
たとえ梨乃に剣を弾かれ隙が生まれても、体術と魔術を使い分け、全てを綺麗に防ぎきっている。
いくら反応速度が速くても、これだけの攻撃を受けて掠り傷すら負わないなんて、いくらなんでも不自然だ。
「引いて!」
「おっ」
梨乃が違和感を感じ始めたころ、後衛にいる駿介から声がかけられ、魔人へ魔術が飛来する。
魔人がそれを認識して通路の奥へと跳び退き、それに応じて夏希と梨乃の二人も退く。
駿介の元まで戻り横並びになった。
魔人へと意識を向けたまま、一番端にいる駿介が口を開く。
「気づいた?」
「うん、変だった。動きが読まれてるみたいな」
「遠くから見てた限りだと、魔人が先読みして動いてるように見えた」
「先読み……」
「そう。だから、来てもらった。間違いだったらごめんだけど……」
駿介と夏希の会話を横で聞きつつ、梨乃は思考を巡らせる。
その会話の中、いくら意識を向けているとはいえ普通なら片方へ意識が向きにくくなることもざらにあるはずなのに、魔人は攻めてこない。
ジッと、三人が話し合っているのを見つめている。
「……厄介だな」
その呟きは、三人には届かない。
出会ってから今まで、余裕の色が大半だった声音には、少しの苛立ちと迷いが生じている。
瞳も今は恨みがましく三人を睨みつけるようにして見据えている。
「――じゃあ、それで行こう」
「わかった」
「了解」
梨乃の言葉に頷いて、全員が得物を構え直し、魔人へと立ち向かっていった。
駿介が頭上に展開していた魔術を目晦まし代わりに放ち、魔人がそれに魔術で応対する。
その合間に距離を詰めた夏希が再び連撃で魔人を翻弄し、カバー重視から攻撃重視へと切り替えた梨乃も攻撃に参加する。
魔人にとっては、厄介だったカバー要因がいなくなり立ち回りやすくなった。
しかし、梨乃がカバーから外れるのに、その代わりを用意しないはずがない。
「させない」
「……チッ」
梨乃が攻撃に回ったことで失ったカバーの役割を駿介が担う。
今までよりワンテンポ遅れての援護になるが、攻撃が二人に増えているため、先ほどよりも攻勢に出づらくなっている。
故に、多少カバーが遅れても大した差にはならない。
魔人側もすぐにやられてやるつもりはないらしく、先ほどよりも魔術を多用した防衛を始める。
夏希は死角から迫りくる岩弾を“魔力感知”で捉え片方の刀で斬り裂き、梨乃は器用に躱すことでその全てを無へと還している。
しかし全ての魔術に対してそれができるわけではない。
その足りない部分を、駿介のカバーで補っている。
「本当に厄介だ」
今までの立ち回り上、梨乃は一歩引いた位置から攻撃を仕掛けてくるのだが、それが非常に厄介だった。
先ほどまでは夏希の背後にくっつくようにしていた梨乃が、夏希の反対へ回り魔人の死角から攻撃を仕掛けたりするようになり、その間のカバーには駿介がいるからさっきよりも厄介だ。
ならまずは、カバー要因である駿介を倒そうとするのがセオリーだが、この二人の攻勢から抜け出すことは容易くない。
それに意図しているかどうかは不明だが、駿介の元へ向かおうとしてもその動線上には必ず夏希がいる。
その苛立ちが、微かな呟きに乗せられる。
「炎弾ッ」
「――お前もッ!」
魔人が苛立ち始め、意識の乱れを察知した梨乃が、程よい距離から魔術を放つ。
炎弾を寸前で躱すものの、意図しなかった攻撃を躱したことでバランスを崩した。
その隙を見逃さず、夏希が距離を詰めた。
両手に握った二刀を存分に振り回し、全ての攻撃を器用に躱し続けていた魔人へ初めての一撃を与える。
「――付与付きかッ」
腕に一撃を受けた魔人は、苦悶の表情を浮かべながら吐き捨てるように呟いた。
魔人の言葉通り、夏希が右手に持つ刀は、風による乱雑な切れ味を持っており、斬り裂いた部分の傷をぐちゃぐちゃにする効果を持っている。
それは、たった一回斬り裂かれただけの腕が、何度も何度も小さく斬り裂かれたような傷跡になっていることが証明している。
腕を負傷しながらも体勢を立て直した魔人は、起き上がりざまに夏希へと一撃を放った。
直上から放たれた剣を左手の剣で受け止めるが、その威力は想像以上のもので、夏希の体がガクンと落とされる。
片膝をつき、両手で支えてどうにか耐え凌いだかと思えば、今度は魔人が前のめりになって倒れた。
バランスを取って立て直し、夏希へと攻撃を仕掛けた魔人が、再びバランスを崩して倒れたのだ。
「は?」
その異常に反応できず、口から洩れたのは素の疑問だけだ。
前に倒れていく最中、動かした視線が魔人の剣を受け止めていた刀へと注がれる。
刀身を包み込むようにして水が纏わりついている。
「そっちもかよ――!」
「梨乃!」
体勢を崩した魔人へ、近くにいた梨乃が迫りくる。
しっかりと引き絞った短刀が、梨乃の最高速を以て魔人へと叩き込まれる。
バランスを崩しながらも可能な限り避けたおかげで心臓から肩口へとズレたその一撃は、しかし追い打ちには問題ないくらいの威力を発揮した。
血が噴き出し、大きく吹き飛ばされた魔人は、辺りへ血を撒き散らしながら廊下を転がっていく。
腕と肩の痛みに耐えながら転がる勢いを利用して立ち上がり、話していなかった剣を握り締める。
そして、少し離れた位置にいる夏希と梨乃を見据え、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべた。
「まずは、一人だ」
脈絡なく呟いたその言葉の意図を、夏希と梨乃は一瞬遅れて理解した。
瞬間、そうはさせないと飛び出すが、一瞬でも遅れた二人は魔人へと追いつけない。
詰められない距離にいる魔人の背を追い、その先――駿介へと攻撃を仕掛ける魔人を見ていることしかできない。
「駿介!」
「駿介君!」
二人の悲痛な叫び声をBGMに、魔人は駿介へと剣を振り下ろす。
相応の速度を以て振り抜かれた一刀は、駿介のどの部位に当たっても致命傷を与えられるだけの威力を秘めている。
魔人の反応速度を以てすれば、躱させずにどこかを斬り裂くことは可能だ。
その確信が、魔人の油断を誘った。
「うっ、ぐ」
魔人は剣を振り下ろし切る前に、嗚咽の声を漏らした。
その原因は、魔人の腹へと突き立てられた魔術の媒体となる杖だ。
両手で握られたそれが、突進してきた魔人の腹に突き立てられている。
速度が上がれば威力が上がる。
それは魔人が与える攻撃に言えることで、同時に魔人に与える攻撃にも言えることだ。
自身の速度が仇となり、必要以上のダメージを受けた魔人は、完全に前進する速度を失い、体がくの字に折れ曲がる。
あまりの痛みに即座に立ち直れず、駿介の動きを視界に捉えてはいるものの対応することができない。
杖を引き戻し、両手を揃えて柄の部分を握り締めた駿介は、体に染みついた動作を実行する。
小気味よい風切り音を放って素振りされた杖は、魔人の胸辺りを芯から少し外れた位置で捉える。
たとえ芯に当たっていなくとも、人生で何度も何度も反復し身に着けられたその素振りの威力は、杖とは思えないくらいの質量も相まって重い一撃となって魔人を襲った。
それだけでは飽き足らず、振り抜く直前に風破を放ち、魔人を吹き飛ばした。
杖の素振りによる物理的な一撃と、風波による魔術的な一撃を貰い、受け身も取れないまま神殿の床に仰向けで倒れた。
口からは血が溢れ、胸は打撃で赤く染まり、風波の影響で切り刻まれた傷口から血が洩れている。
「お前ら――」
満身創痍を体現し、仰向けで倒れたまま、口から血を垂らし、憎たらしさを瞳に宿して集結した三人を睨みつける。
「――絶対に俺が殺す」
そう怨み言を言って、大気に溶けるよう黒い灰となって消えていった。