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エピソード4 兄と勉強


 ところで、このエッセイ(もはやエッセイというよりも日記に近い)がどこまで続くのか不安に思われる方もいると思う

 これは私が敬愛する佐久間一行さんという芸人さんが、「このネタはあと二分くらい続きます~、時間わかるほうがいいと思って」とネタ中に言うというネタがある


 それと同じで私のこのエッセイ(だからもはやエッセイではないけれど)もどんな流れになっていくのかわかったほうがいいかと思う


 ちなみに芸人さんは好きだしお笑いも好きだ

 テレビに出ていない芸人さんが好きだ、ここ10年ずっとLLRさんが好きだ


 お笑いは良い、疲れてるときも悲しいときも死にたいとたとえ思っても座席に座って幕が上がれば勝手に笑わせてくれる

 努力のいらない趣味の一つだと私は思っている




閑話休題


 今の所まだ人物紹介も終わっていない状況なのであとどのくらいで終わるかはお伝えできないけれど


 これから私が小学校に毎日泣きながら言った話や

 心臓と目の疾患で頭の中の理想の自分と現実が違うことに幼いながら気がついたり

 罵詈雑言の中で受験勉強をしていた話や


 その途中で母が倒れて商売が立ち行かなくなりかける話や

 中学に入ってすぐ家が飲食店をやっていたからという理由で担任教師にいじめられ不登校となり

 一時は最終学歴中学卒業だった話や


 母が父と同じ空間に過ごすと発作を起こすようになったり

 そのため所持している家とは全く別の場所に家を借りたり


 姉が家財道具一式盗んで家から夜逃げ(この場合家出というか夜逃げだった)したり

 そのまま音信不通となっていた姉から引っ越しの金がなくて生活できないから金を貸してくれという連絡が来たり

 貸した金くを使い込んで結局姉が生活保護を受けたり


 兄の入る会社入る会社何故か倒産(正しくは倒産はしていないがそれに近い状態)になったり

 母が腰を痛め歩けなくなり、病気の関係で目が殆ど見えなくなりと介護が必要となったり


 殆ど連絡をとっていなかった父が心臓の手術をしてペースメーカーを入れたかと思ったらバイク事故起こしてまた入院したり

 そのことを当時お付き合いしていた相手に全く信じてもらえなかったり

 そもそも母の介護があるので夕方6時には解散しないといけなく、お付き合いや結婚どころではなかったり


 そうして、気がつけば駅のホームで電車を眺める最終話へと繋がる


 まあおそらくそのあたりのなんてことのない話をぐだぐだと続けていくだけなので、よければお付き合いいただけると幸いです



 というわけで今回の話

 本当は姉の話をしようかと思ったけれど前置きが長くなってしまったので次回に回そうと思う

 そのかわりとして兄の話をしよう

 家に帰ってこなかった父に変わり、兄は私の父親代わりとしてずっと育ててくれた

 なにせ商売をやっていたので母親もつきっきりで面倒を見られるわけでもなく

 私は兄にミルクを飲ませてもらい育った


 そのせいか未だに兄の言葉に言い返すことができずにいる

 威圧ではなく、なんとなく言い返し辛いのだ


 兄は、私から見ても努力の人であり、

 「努力することの出来る才能」を持っている人であり

 「驚くほどの秀才」であり「決して天才ではない」人だった


 我が家は兄弟3人とも小学校から私立に入っていたといったが、中高も付属でついてはいたが家の方針として当たり前に中学で外部受験をすることが決まっていた


 そのため小学校も3年生になると塾に通い、そも幼稚園の頃から中学受験に向けて塾ではないけれど

 勉強をする子供の集まる場(それを塾と呼ぶのか)に通っていた




 ところで少し話はズレるが、よく小学生が塾の鞄を背負って電車に乗る図を見る

 みなさんも一度は見たことがあるだろう

 そして聞いたことがあるんじゃないだろうか

「あんなに小さいのに勉強漬けで可哀想に」という言葉


 私も、背負う側の人間だったのでわかるが、そこまで言われるほど可哀想なことはなかった

 というよりまず学校でも塾でも家でもそれが「当たり前」だったしみんながやっていたし

 

 それに塾は「成績さえ出せば何も言われないし、褒めてもらえる」のだ

 私にはそれが何よりも嬉しかった


 成績さえ良ければ何も言われないどころか優しくしてもらえる

 髪の毛の結び方一つや定期入れの入れ物一つに注意を受けない

 それは、きっと私がその当時は今と違って「褒められる側」だったから思えた感情なんだろうけれど

 (関係ないがじゃあ今はどうなのかといえば、先日2桁の足し算を暗算できなくて焦った)

 

 たとえそうだとしても、私にとって塾は辛い記憶ではなかったし、むしろ楽しい記憶だった


 あと帰り道に隠れて買食いしたり、塾で友人を作ったり


 子供なんてなんだかんだ楽しく遊ぶものだ


 私は、塾の近くにある小さなケーキ屋さんで、3枚入りのクッキーを買うのが好きだった

 アーモンド、チョコレート、マカダミア、時期によって違うけれど基本はその3種類が入っているクッキーだった

 3枚100円のそれを塾帰りに買って隠れて食べるのが好きで、そのために塾に行っていたところがある

 

 ちなみにその隠れた楽しみは母と一緒の塾の面談帰りにそのケーキ屋さんに立ち寄った際

 「いつもありがとうね、今日はお母さんと一緒なのね」と言われて全部バレた

 その言葉を聞いて母は笑っていたし、

 次からは隠れて食べ歩くような行儀の悪いことしないのと言う程度の本当に軽い注意と、

 塾に行く日には必ずクッキー代をくれるようになった


 大見得きってクッキーを変えるようになってからは私はそのお店に立ち寄らなくなってしまって

 多分、というかきっとあの「塾帰りの背徳感」を買っていたんだろうと思う


 とはいえ先日久々にそのお店のクッキーを食べたらやっぱり驚くほど美味しかったので美味しいものはどう食べても美味しいものだ


 先日所要で電車に乗った際、私が通っていたのと同じ塾の鞄を背負った、時間的に塾帰りの男の子がおもむろにおにぎりを取り出して美味しそうに食べていた

 まあ、案外そんなもんなのだ


 再度の閑話休題


 これではいつまでも兄の話にたどり着かない

 しかし兄の話をするに置いて塾の話は切っても切れない話なので許してほしい

 兄は、前述どおり努力をすることの出来る才能を持っている人だった

 今思えばその才能を必死に身に着けたのか、身につけるしかなかったのかもしれない


 我が家は商売をやっていたが兄弟3人共事業を継ぐのを嫌がったためそれぞれにやりたい方向の勉強を優先していた

 その中で兄は大きく言えば研究職に付きたいと言ったのが小学校も低学年の頃だったらしい

 恐らく将来の夢とか、そういうものを学校で書かされたときだろうからもしかしたら小学校1年生のときかもしれない


 それほどに幼い子どもの将来の夢に対して母は、なれると良いわねなどと言わず

 「それなら勉強が必要になる、あなたの進みたい道に行くには学力も学歴も必要になる、そのためには、大変な努力が必要になる」

 と、告げたのだ


 小学生の男の子に

 将来の夢を語る男の子に


 我が母ながら普通ではないと思うが普通ではなかったのは兄も同じで、

 それを聞いた兄は、そうか、と納得しその日から毎日起きているときはずっと勉強をしていた


 学校にいるときや塾にいる時は勿論、行き帰りも家でも

 起きている間中ただ勉強を続けた


 我が兄のことをこう称するのは心苦しいが、兄は決して賢い人ではなかった

 1を聞いて1を理解するためにもう一度1を聞くような、そんな人だった

 子供の頃は私のほうが兄よりも賢いほどだった


 そんな兄が積み重ねた努力がどれほどのものか私は知らない

 私の見える範囲の努力なんて、きっと兄にとっては努力ですらなかったんだろう


 兄が時々、勉強をやめたいとこぼす度、母は必ず「良いよ」と言っていた


 兄は勉強をやめなかった


 そうして、少なくとも皆が知っている国公立へと返済不要の奨学金枠で入学した

 兄は決して天才ではなかった


 けれど決して常人でもなかった

 時々私は兄が怖い時がある

 この人は一体何を考えて、今の私がどう見えているのだろうかと怖い時がある


 けれど決して言わないのだ

 私も兄も、兄と妹として、父代わり子代わりとして、決して何も言わずに過ごしているのだ


 長くなったので次回以降のどこかへと続く

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