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魔鋼騎戦記 外伝 蒼空の魔砲使い   作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記 外伝 蒼空の魔砲使い 後編

空から忍び寄る敵飛行化機械兵に、成す術も無く沈められるのか?


空の魔鋼騎士たる魔砲師ホマレの戦いを観よ!

黒い機体はグングンと近付いて来る。

周りに居た乗客達は皆、怯えてパニックに陥った。


「少尉のお姉さん・・・僕達・・・死んじゃうの?」


僕は黒い機体から眼を離さずに尋ねた。


「それはどーかな?あの飛行機に沈められると想う?この船が・・・?」


銀髪のお姉さんも空を見上げたまま答えてくれる。

僕はその時、震えていたのかもしれない。

口から出た声は、普段とは違って擦れていたと思う。


「だって・・・この船には護る方法がないんだもの。

 飛行機に対抗する方法なんて・・・ないんだもの」


僕の答えた声には、力が無かった。

僕の瞳には、抗う力が無かった。


「そーかな?君には光は無いん?

 君の生きる力は無くなってはいないんやよ?」


緑色の瞳がそこにあった・・・

銀髪を風に靡かせた少女の顔が、そこにあった。


「お姉さん・・・?」


僕が少尉さんの顔を振り仰ぐと。


「お姉さん・・・ちゃう。

 私は、海軍3等空尉中嶋 ほまれ・・・魔法使いの端くれ。

 蒼空の魔砲師・・・緑のほまれ

 他人ひとはそう呼んで居やはるわ・・・」


微笑む顔の前に指を立てて、名乗ってくれた。


「蒼空の・・・魔砲師?

 中嶋・・・ホマレ?」


聞き返した僕に向かって頷いたホマレ少尉が、


「君は?

 何処の男の子なん?」


僕の名を訊ねて来る。


「僕は・・・横須賀の省吾。浜野 省吾っていいます」


「省吾君ね・・・善い名やね・・・」


にっこり微笑んだホマレさんが、僕にこう言った。


「君にも見せたげる。私が観たように・・・

 私が魔砲師を目指す事になったあの日のように。

 省吾君にも・・・希望を見せてあげるわ」


僕はホマレさんが言った事の意味を判ろうとはしなかった。


    その時は・・・


挿絵(By みてみん)




ホマレ少尉さんが船室を走り出てブリッヂに向かって叫んだ。


「対空戦闘!魔鋼騎戦用意っ!」


僕にはホマレ少尉が何を言ったのか判らなかった。


「航空戦準備!私が出ますっ!」


甲板を走る少尉が命じた・・・船の指揮者に向かって。


船橋に居る船長が直ぐに命令を了承して、


「頼みます蒼空の魔法使い!これより対空戦闘の指揮を執ってください!」


年嵩の船長がまだ幼さの残る少尉に復唱した。


船首まで駆けて行ったホマレ少尉が、船員に命じる。


「武装装着!機銃を!」


銀髪を風に靡かせた少尉の元へ、2人の船員が重そうに機関銃を運んでくる。


「少尉殿!魔鋼銃7ミリ7ですっ!」


船員が手渡した機銃を片手で受け取った少尉が軽々と持ち上げる。


<うわぁ・・・船員さんが2人掛りで運んできたのに・・・あんなに軽々と>


僕には信じ難かった・・・けど。


「了解!離れてください。これより飛空化しますっ!」


右手を伸ばしたホマレ少尉の髪の色が蒼く染まり始める。

そして・・・


  ((ドンッ))


()()が始まった。


髪の色が蒼く染まると、少尉の服が金色の光の中で変化した。

白い魔法衣へと。

緑の襟と緑の蝶ネクタイ・・・金の絞りが各所を護る。


  ((フォォンッ))


靴の下に緑色の魔法陣が描かれる。


「発進準備完了!これより敵、闇の飛行機械を迎え討ちます・・・


      発進っ!   」


ホマレ少尉の足下から緑の魔法陣が羽根を羽ばたかせた。


  ((ギュワーーーンッ))


挿絵(By みてみん)



猛烈な加速で上空へと跳びたつ。

あっという間に3機の黒い飛行機械目掛けて駆け上っていった。


「あれが・・・緑の誉。

 かの有名な、蒼の魔砲師・・・緑の誉。

 海軍少尉、ホマレ少尉さんだったのね」


僕の横にいつの間にか人だかりが出来ていた。


「あのお姉さんが?ホマレお姉さんはそんなに有名なの?」


軍事情報に疎い僕に、叔母さんが教えてくれた。


「そうよ・・・蒼の魔砲師。中嶋少尉といえば、撃墜王なんだから」


叔母さんは我が事の様に自慢する。


「そうなんだ・・・知らなかったよ。凄い人なんだね?」


「そうよ。凄い人なの!」


叔母さんは僕に向かってウインクしてみせた。


上空では、ホマレ少尉が3機を相手に空戦に入った。


黒い機体がホマレ少尉目掛けて回り込もうとしていたが・・・



「そう簡単に後を取れると思わんといてや!」


逆にホマレ少尉が捻り込みを掛け、


「ほいな・・・先ずは!」


銃身を敵の側面に向けて引鉄を引く。


 ((ドパパパパッ))


軽い射撃音が銃口から流れ出る。


 ((カン カカカカッ))


機体に穴が次々に穿かれ・・・


  ((ドオォンッ))


火を噴くまでもなく爆発して果てた。


「次や!」


一機を失った敵は、連携して挟み撃ちにしようと分れ離れになる。


「見え透いた手を・・・そうくるなら・・・こうや!」


ホマレ少尉の身体が一回転する。


「付いてきな!地獄を見せてやるわ」


もんどり打って海上目掛けて急降下するホマレ少尉の後を二機が追う。

振り返って確認し、ニヤリと笑うホマレ少尉。


「どや?もうそろそろ根をあげるか?引き換えさんと地獄行きやで!」


急降下するホマレ少尉のスピードに追いつけないと覚った二機が相次いで引き起こしをかける。


「かかったなぁ!ほな・・・逝こうか?」


体を急激に捻ったホマレ少尉の銃口が二機目掛けて振り払われる。

腰溜めに構えた銃口から魔鋼弾が放たれた。


 ((ド・・・ドドドドドッ))


最初の一発で弾の流れを確認したホマレ少尉が必中弾を送り込む。


((ダ・・・ダッダーン))


腹下部を射抜かれた二機が相次いで撃墜された。


「ふぅ・・・迎撃戦・・・終了!」


3機の機械化飛空兵は、ホマレ少尉の手によって呆気なく撃滅されてしまった。




「わあぁっ、凄いや!あっと云う間に・・・全滅させるなんて!」


僕が手を叩いて喜んでいたら、傍のおばさんが当然とでも言いたそうに。


「当たり前よ。蒼の魔砲師の手に掛かれば、飛空化兵なんてイチコロなのよ!」


まるで自分の娘の自慢話でもするかのように、おばさんが僕に言った。


「でも・・・もし。もしホマレお姉さんがいてくれなかったら。

 僕達は・・・あの3機に殺されていた筈だよね・・・」


余りに自慢話をするおばさんに、僕は注意を促すつもりでそう言うと。


「なんだい、人が善い気分になっているというのに・・・」


おばさんは嫌そうな顔で僕を睨み付けた。



ホマレ少尉が船首楼に着艦した。


「ありがとうございます、少尉殿」


船員達がホマレ少尉の労を労って迎える。


「いーえ、当然の事をしただけですから。

 それより、この事を司令部に連絡されましたか?

 直ちに最寄の港へ一時避難する事が懸命だと思います」


中嶋少尉が船員を通して船長に具申すると。


「心得ています。

 只今此処より50里のペナンに寄港する事にしました」


船橋から船長の声が返ってきて、ホマレ少尉が頷いた。


ゆっくりと船室に向かってきた少尉に向かって僕が走り寄ると。


「省吾君、目に焼き付けてくれたやろか?」


僕に向かって訊ねて来る。


「はいっ、しっかりと!」


頷いた僕の頭を撫でたホマレお姉さんが、笑いかけてこう言った。


「省吾君、私のような戦闘師にはなっては駄目だからね。

 私のような魔法使いになんて・・・なっちゃ駄目だよ?」


僕はホマレ少尉が言った言葉の意味が飲み込めなかった。


<どうして?>


そう・・・訊こうとしたけど。

真剣な瞳の色に気押されて、僕はホマレ少尉に頷くしかなかった。





それが蒼空の魔砲師と呼ばれた彼女との出逢い。


僕が観た、中島 誉 海空軍3尉の姿だった。


後に”緑の魔砲師 ホマレ”と呼ばれる事となった彼女との最初で最期の邂逅。


彼女が遠く<暗黒の大地>で・・・


    戦死したと知ったのは・・・これより半年後の事だった。







「中嶋少尉、命令を伝える。

 君は航空艦隊に所属し・・・西欧に出陣するのだ。

 我が国と同盟しているフェアリアに向かうのだ・・・善いな」


司令官に呼び出された中島 ホマレ少尉は命令書を受け取って敬礼する。


「中嶋少尉、これより直ちに任地へ向かいます。

 司令官・・・航空艦隊とは・・・何処にあるのでしょうか?」


ホマレ少尉は任地の情報を求める。


「ああ・・・君は知らなかったんだね。

 君の向かうのは此処だ。

 インドラヤーナ・・・ここより北の大地。其処に移動して来る筈だ。

 飛行艦隊が・・・飛行船の艦隊とでも呼ぶべき航空艦隊が・・・な」


司令官はホマレ少尉に笑って応えるのみだった。



魔鋼騎戦記 外伝 2  蒼空の魔法使い  終わり

この外伝は「魔鋼騎戦記フェアリア」第5章に向けてのオマージュとなっております。


出場した日の本海空軍少尉 中嶋 誉<なかじま ほまれ>は、


最後に出てきた航空艦隊と共に、フェアリアへと向かう事になるのですが・・・


さて・・・本編第5章もお楽しみに。

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