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魔鋼騎戦記 外伝 蒼空の魔砲使い   作者: さば・ノーブ
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魔鋼騎戦記 外伝 蒼空の魔砲使い 前編

蒼い空に儚く咲く桜の様に・・・


散る桜・・・残る桜も散る桜


魔鋼騎戦記 フェアリアの外伝として書きました

僕が彼女と遇ったのは・・・



  ((ビビーッ ビビーッ))


船内放送のブザー音が、けたたましく鳴り響いた。


僕達が乗っている貨客船が警報ブザーと共に大きく傾いた。


「わぁっ!」


突然の進路変更によって、船体が傾いたのだ。

僕達はデッキに叩き付けられる。

僕は同乗者達の中で、一番年下だった。

倒れ込んだ人の中には腰をさすって痛がっている姿も見える。


倒れていない人は周りの人に声をかけて、励ましているようにも見えたのだが。


「なんだって突然こんなに傾けるんだ!船員に怒鳴り込んでやる!」


怒鳴り声をあげた男の人が倒れた人に一瞥を掛け、


「とっとと起きろっ、邪魔なんだよ!」


助けようともせず当り散らす。


<酷いおじさんだな・・・助け起こしてあげればいいのに・・・>


僕は咄嗟にそう思った。


「おらおら!邪魔だ邪魔だっ、そこを開けろ!」


赤ら顔の男の人は倒れている人を足蹴にするかのように威嚇した。


「やめときーな。倒れた人に罪はないんやから」


その時、僕の後ろ・・・ボートデッキの方から声がかけられた。

女の人の声が・・・



振り向くと其処には。


「アンタ、自分が倒れてたらそんな口利けへんかったやろ?

 怒るのは周りの人を助けた後にしーな」


その女の人(ひと)は、赤ら顔のおじさんに向かって堂々と言い放った。


「なんだと?お前・・・海軍さんか・・・」


怒り声だったおじさんの声が徐々に静まっていくのが聞き取れた。


「海軍の士官さんですか・・・お若いですな」


明かにおじさんは、目の前に居る女の人にへつらっているようだった。


「判りはったらええんです。ウチの事より周りの人に気を配ってあげてーな」


女の人は僕の直ぐ後ろまで近寄って来た。


「君、大丈夫かいな?立てるん?」


海軍の士官と呼ばれたその女の人(ひと)が僕に尋ねた、僕の知らない方言で。


挿絵(By みてみん)



「え?・・・あっ、はい!」


答えた僕の頭に手を添えた女性士官さんが。


「そーか?ほなら立とうか」


優しく手を掴んで起こしてくれた。


「あ・・・ありがとう」


思わずお礼を言うと、頷いた士官さんはさっきのおじさんに向かって目配せすると。


「さぁ、皆さんを助けてあげてーな。立っている人は倒れた人を起こしてあげてや」


室内に向かって声をかけた。


僕を起こしてくれた女性士官さんを善く見れば、とても海軍さんの士官とは思えない程・・・


「お嬢さん、士官だというのにお若いのね」


僕の思っていた事を傍に居た叔母さんが訊いた。


「変ですか?私が海軍の少尉だ・・・なんて?」


にこやかに笑って答える少尉のお姉さんに、


「いいえ、その胸に輝く特技章を観れば。

 少尉さんだって納得しましたわ、魔法師少尉殿」


叔母さんの言葉に耳をそばだてていた僕もやっと気が付いた。


鬢髪を海風に靡かせ、海軍士官服に身を包んだお姉さんの左胸には。


<これ・・・空の騎士章だよね・・・魔法使いの証。

 空を飛ぶ事が出来る魔法の力を持っている特別な人・・・なんだよね>


翼下を睨む鷲を模った青い胸章が光っていた。


「おばさん・・・そないな事あらへんわ。ウチは単なる()()使いの端くれやから・・・」


頬に指を添えた少尉のお姉さんが苦笑いを浮かべている。


「空の?空の騎士だって!?こんな若い女の少尉が?」


周りに居た人達も一斉に驚きの声を上げる。


「い・・・いやぁ・・・そやから・・・端くれやから・・・」


益々困った様な顔をして照れるお姉さんを、僕は物珍しげに見ていた。


日の本人にしては珍しく銀髪で、輝く瞳は吸い込まれそうな薄緑に観える。

何処と無く日本人離れした身体つきのその人は・・・


「あはは・・・そないに見んといてーな。恥ずかしいやろ・・・」


頬を紅く染めて掻いていた。



僕が少尉さんを観ていた時、再び船が傾いた。


「きゃあっ!」

「うわっ!」


また、周りの人達がふらつき、よろける。


僕も足元から傾く船室に合わせる事が出来ずに態勢を崩してしまう。

でも、銀髪の少尉さんだけは違った。


「どうやら・・・現われたようやね・・・ヤツラが」


船室外に瞳を向けた少尉のお姉さんが、呟くのを僕は聞き逃さなかった。


「奴等?」


僕の声に気付いたお姉さんが。


「そうや・・・()()()だよ」


僕に向かって優しい瞳で教えてくれた。


「この海域にも出てくるやなんて・・・本当にやっかいやな」


肩を竦めて僕に言った。


「お姉さん、ヤツラって?」


聞き返した僕に、銀髪の少尉さんは指を空に向かって指し示した。

その指先にあったのは・・・


「ああっ!あれはっ・・・闇の機械化飛空兵だ!」


気付いた人達が悲鳴をあげる。


そう・・・


蒼い空を3機の黒い物体が飛んで来ていた。


僕達が乗っているこの貨客船に向かって・・・



銀髪の少女少尉は何を秘めているのか?


次回 後編


君は空に咲いた桜のように可憐だった・・・

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