カチコミだそうです。2
「くそっ!餓鬼を追い返すだけの楽な仕事じゃなかったのかよ!」
そう悪態をつきながら、カールは走る。
名前が似ていることがきっかけで、長年ペアを組んでいる相棒は既にやられた。
回りを見ればほとんどの奴等が高速で飛来する何かから逃げまとっている。
最初は突っ込む馬鹿もいたが、直ぐに吹き飛ばされるぐらいには威力が高く、尚且つ高速で飛来する何かは数が圧倒的に多い。
結果、傭兵達は何かに当たらないように逃げるしかない。
「ぎゃああああ」
隣で走っていた奴が吹き飛ばされていった。
思わず立ち止まる。
俺はこの悪夢のような状況を造り出した少女を見る。
どこまでも無表情にただただ高速で飛来する何かを撃ち出している。
それに薄ら寒いものを感じながら、当たりませんようにと願いまた走り始めるのだった。
一方その頃屋敷では
ふと怒鳴り散らす声が聞こえて、私は目を覚ます。
どうやら気絶していたようだ。
口には猿轡を噛まされており、手には手錠がしてある。
どうやら手錠は奴隷用の物のようで、魔法が上手く使えない。
せっかく覚えた無詠唱も使えない。
周りを見渡すと、どうやら檻にいれられているらしく、近くで太った男が報告しに来たらしい警備兵達に怒鳴り散らしている。
「くそっ!どうなっている。なぜここまで警備が崩れているのだ!?」
「はっ、そっそれがどうやら例の人形族の小娘が妙な武器を使っており、近づけないらしく・・・」
「ええい、本当に使えんな!」
人形族の小娘?
ああ、もしかするとカレンが迎えに来たのかもしれない。
多分彼も一緒だろう。
そう言えばなんで私は誘拐されているのにこんなに冷静にいられるんだろう?
自分でも何故か分からないくらい冷静だった。
男がこちらを見る。
「こいつにそんなに価値があるというのか?くそっ!・・・そうだ。そんなに価値があると言うならこいつを人質にその人形族の小娘とやらも拘束しよう。そうすればもはやあの小僧に為す術はない。」
そう言ってこちらに近づいてくる。
でも、私には焦りが何故かわいてこない。
「フフフ、少し計画と違うがまぁいい。」
そう不気味な笑みをを浮かべながら檻を開けようとてを伸ばそうとしたときーー
「ほう、誰の許嫁を人質にするのか是非ごきかせ願おうか?」
その手を掴む、許嫁である赤茶の髪の少年を見てーーこの人がくると思っていたから自分は冷静だったんだと、そう感じた。