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傭兵と魔女と異世界  作者: 鉄紺
7/8

違う魔女と傭兵

窓辺の木に止まっている小鳥の囀りで目が覚めた。

のそりと起き上がって窓の外を見れば、森ということもあって水分が多いのか。

幹を隠すようにしてゆらゆらと揺らめく朝霧が見える。

ゴキリと骨を鳴らすと意識がだんだんと覚醒する。

二度寝したいくらい冷えてるが、とりあえず朝飯作らねぇとな。

味のない飯は勘弁だ。


「結局エルフリーデは帰ってこなかったのか」


昨日片付けたまんまの釜の部屋を通り過ぎてドアを開ければ、一層冷気を感じた。


「おぉ、さみぃさみぃ。日が差し込まねぇうちはどこもさみぃなぁ……ん?」


あんな家あったか?

俺が今出てきた家と同じような家が隣に建っている。


「いつの間に……」


中に入ってみるか。

食材は見当たんなかったし、こっちにあるかもしれないしな。

扉を開けて入ってみれば、食材や調理道具一式がキッチンに置いてあるのが見える。

おいおい、悪くなってないだろうな。

匂いを嗅いでみれば、うん。大丈夫そうだ。味も悪くない。

さて、じゃ起きる前に作るかと包丁を握った瞬間。

背後からの殺気。


「ッ!?」


咄嗟に横に転がりながら後ろを確認すると、さっきまで俺が居た場所に木材の欠片が叩き込まれていた。


「……木?」

「誰かしら……?乙女の寝室に勝手に入り込んだのは……」


声のした方向を見れば、ベッドが二つあり、毛布がこんもりとしているのが見える。

片方の毛布から片手で出ており、手のひらをこちらにつき出しているのが見えた。

聞こえた声はエルフリーデのそれとは違うものだ。


「誰だ……?」


そう問うと、むくりとベッドから上半身を起こしてこちらに姿を見せた。

エルフリーデとは違った形の美がそこには存在していた。

寝癖など無縁であるかのような流れる金髪。

眠たげに細められた緑の眼には色気が感じられる。

どの角度から見ても美人であると確信できるほどの造形の美女がそこにはいた。


「ほんとに誰だよ……」

「あら……先見の魔女、未来視、このジュリアの名前を知らないのかしら」

「先見の魔女……?魔女にも種類があるのか」


その言葉にジュリアと名乗った女性は眉を顰めた。


「そんなことも知らないで寝込みを襲いに………」


そこまで言って唐突に言葉を区切る。

まるで何かを思い出したかのような……。


「………」

「そういえばエルフリーデのところに泊まりに来たんだったわ。失礼したわね。貴方が噂の傭兵さん?」

「あぁ、多分そうだが……」

「ごめんなさいね、つい自分の部屋だと勘違いしてたわ」


それで木材ぶつけてくんのかよ……恐ろしい女だな…。


「あぁ、寝ていることに気付かなかった俺にも落ち度はある。気にしないでくれ。怪我もなかったしな」

「そう言ってくれると私も気が楽になるわ。それにしても素晴しい反応速度ね。殺す気はなかったとはいえ完全に奇襲したつもりだったのに。さぞや名のある傭兵なのかしら?」

嘘つけ。当たれば首元直撃のコースだったぞ。

チラと木材が直撃した場所を見れば、石だというのに完全にえぐれている。

「まぁ、それなりに名は売れていた。何でも屋のフィアーと言えば仲間内なら通じないことはなかったな」

「……ごめんなさい。聞いたことはないわ」


この大陸には来たことがなかったから知らないのも無理はない。


「逆にここら辺だと有名な傭兵や剣士は誰がいるんだ?」

「そうねぇ……その話は朝食の時にしましょう。エルフリーデもそろそろ起きるでしょうし。それでなんだけど、女性の朝はちょっと準備があるのよね。わかるかしら?」

「……あぁ、わかった。外に出て待ってるよ」

「朝食が遅れても文句は言わないから、よろしく頼むわね」


俺は一言返事を返すと扉を開けて外に出た。


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