表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

ハロウィンの話 上







 ハロウィン。

 それは俺があの子に会える、1年にたった1度の日だ。





「とりっくおあとりーと!」


 そう言ってあの子が俺の家の玄関で笑ったのは、もう十年も前の話だ。

 きらきらと輝く金髪の上に大きな黒い帽子を被って、緑の眼を煌かせていた。


「……あ、えーっと。ちょっと待ってて」


 正直なところ、ハロウィンなんて忘れていた。大体ここは日本で、そんな文化が浸透しているとは言えないのだ。

 慌ててリビングのテーブル上に放置されていたお徳用のチョコレートを引っ掴んで舞い戻る。何故だか気分が高揚するのを、抑えられない気がした。


「わーっ、おっきいの! やったあ!」


 そう言って浮かべた嬉しげな笑顔に、落ちた、と思った。



 それから毎年、ハロウィンが近づくとスーパーでお徳用のお菓子を買い込む。まあ、ルマンドとか、アルフォートとか、エリーゼとか……ロアールとかアルチュールとか、要するにブル●ン製品ばっかりだが。よく特売で売ってて安い。

 あとホワイトロリータを渡した時には密かにどきどきした。あの少女を現しているような名前だ。


 10年。8歳の彼女が越してきて、ようやく18歳。今年は来るだろうか、と期待しながらも。





 ハロウィン、それは彼女に会える日だ。

 ……最近はそうでもない。時々挨拶も会話もする。でもやはり、ハロウィンは特別な日だ。


「Trick or Treat!」


 年齢故に舌足らずだった彼女のその台詞も、この年になると流暢だ。


「……おにーさん?」


 暫く黙っていた俺を、怪訝そうに見る。3つ上の俺は、お兄さんと呼ばれていた。しかし。


「今年は、無いんだ。お菓子」

「へ」


 今年からは、是非とも名前で呼んで頂きたい。



「で、イタズラはしてくれるわけ?」


「……っふきゃああ!?」



 よりによって猫娘の格好で理性をトばせてくれた彼女を、ぐいっと家に引き込んだ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ