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1-1

 背丈の三倍はあろう高さの入り口をくぐって抱く感想は一言、「荘厳」に尽きた。


 百貨店ボン・リシェスの門扉は、今日も華やかに開け放たれている。床に乳白の大理石を敷き詰めた館内は、樹木めいてうねる彫り装飾を天井から壁から通路まで華美に行き渡らせ、千客を王侯の如く歓待していた。


 その、ばっと広がった空間につい我慢が効かなくなったらしいルウィヒは小走りに駆けて、エントランスの中央まで吸い寄せられる。そこからきょろきょろとあちらこちらへ目をやり、体が流れていきそうになるのを、追いついたレームが止める。


「こら、動き回るな」


「……えび」


 兄からの指示に、少女はうるさそうにつんと顔を背ける。


「はぐれちゃうから。ね?」


 やり取りをしている横からアンリエッタがそう言うと、ルウィヒは『ごめんなさい』と謝罪のカードを示してみせる。自分だけ言うことを聞いてもらえなかったレームは不満げに唇を持ち上げたが、けれども妹の手を取って、繋いでやった。


「ほら、離すなよ」


「みみずく」


「良い子にしててね」


 小さい抗議が混じりこそすれど振り払いまではしなかったので、アンリエッタは微笑んで頭を撫でてやった。


 そんな三人に遅れて、ロランとアニーも近くまでやって来る。


「おーおー。お兄ちゃんだねえ」


 愉快そうにレームを囃したのは、普段よりも他所行きの格好をしたアニーだ。


「まま、しっかり掴まえててやんなよ。ここは女に取っちゃ、中へ入れる宝石箱みたいなもんなんだから」


 したり顔で口にする。藤色のドレスの肩に薄手の黄色いショールを羽織ったその姿は招待されたなりに着飾ったものだが、態度まではまだ他所行きにはしていないらしく、堂々と腕を組んで館内を見渡してみせた。


「ちょっと油断した隙にうっかり店まで吸い寄せられてるなんてこと、珍しくも――ウッソ何聞いてない、マダム・ナナの新作があるって」


「お前が吸い寄せられてどうするんだ」


 瞳を瞬時に輝かせたアニーを嗜めたのは、我らが公書士事務所の局長ロランだ。誘き寄せられる事務員の肩に手を置き、捕まえる。


「いや、ちょっと。見るだけ。ちょっと見るだけだって。試着とかもしないし」


「子どもの世話役を買って出たのはお前だろう」


 そう言われて、繋がれた犬のようにぐいぐいと進みかけていたアニーが、はたとそちらへ目を向ける。以前にもらったグレーの一張羅の上着を省き、シャツとブラウスを半袖にという格好の兄妹を、軽く値踏みする目付きで見つめた。


 指で差し、一言。


「超良い子! 大丈夫!」


「真面目にやれ」


「真面目にしてください」


 宣ったアニーに、ロランとアンリエッタは口を揃えて苦情を飛ばす。

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