2話適応
第2話です。
バルカの“もう一つの力”が見え始めます。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
血の匂いが、まだ残っている。
地面には、さっきまで俺を“処分”しようとしていた連中が転がっていた。
全員、動かない。
静かすぎる。
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「……これが、俺の力か」
手を見つめる。
震えていない。
恐怖も、罪悪感もない。
あるのはただ――理解だけだった。
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「模倣……」
さっきの男の能力。
“衝撃を叩きつける力”。
それを、俺は使った。
見ただけで。
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普通じゃない。
そんなことは分かっている。
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「だが……それだけじゃないな」
頭の奥。
まだ何かがある。
さっき聞こえた“声”。
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『気づいたか』
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「……またお前か」
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『お前であり、俺たちだ』
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頭の中に、複数の気配。
ざわつくような感覚。
だが、不思議と嫌じゃない。
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「俺たちは……何なんだ」
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『適応者だ』
『世界に選ばれた存在』
『そして、何度も繰り返してきた“失敗作”だ』
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「失敗……?」
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次の瞬間、映像が流れ込んできた。
戦場。
焼けた街。
倒れる人々。
その中心にいるのは――
“俺”。
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「……は?」
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違う人生。
違う選択。
だが結末は同じ。
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――死。
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『何度もやり直した』
『救おうとして、失敗した』
『守ろうとして、奪われた』
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頭が痛い。
情報が多すぎる。
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「……じゃあ、今回は何回目だ」
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『数えるのをやめた』
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思わず笑った。
くだらなすぎて。
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「そうかよ」
「じゃあ――もういいな」
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助ける?
守る?
そんなこと、全部やってきた結果がこれだ。
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「なら、やり方を変える」
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その時だった。
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ドゴォン!!
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突如、背後の壁が吹き飛んだ。
瓦礫が舞い上がる。
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「見つけたぞ、化け物」
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現れたのは、一人の男。
全身から異様な圧を放っている。
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「……まだいたのか」
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「当然だ。お前のような存在を放置できるか」
男は手を掲げる。
その瞬間、空気が歪んだ。
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重い。
体が、押し潰される。
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「重力操作……か」
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地面が軋む。
膝が沈む。
骨がきしむ音が聞こえた。
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「終わりだ」
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男が手を振り下ろす。
圧力が一気に増す。
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「ぐっ……!」
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体が潰れる。
血が滲む。
視界が歪む。
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――だが。
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「……なるほど」
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分かる。
この力の“仕組み”。
どうやって発動しているのか。
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『来るぞ』
『適応だ』
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頭の奥で、声が重なる。
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「……遅いな」
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次の瞬間。
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ミシッ――
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体の内側で、何かが変わった。
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圧力が、軽くなる。
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「……は?」
男の表情が歪む。
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「効かない……?」
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違う。
効いている。
だが――
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「慣れた」
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立ち上がる。
さっきまで潰されていたはずの重力が、もう“普通”に感じる。
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「な、何をした……!」
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「別に」
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一歩、踏み出す。
重力はもう、足枷にならない。
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「適応しただけだ」
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その瞬間、男の顔が凍りついた。
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「あり得ない……!」
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あり得る。
俺だから。
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手を伸ばす。
そして――
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「その力、借りるぞ」
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重力が、俺の中に流れ込む。
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「なっ――!」
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ドンッ!!!
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次の瞬間、男の体が地面に叩きつけられた。
さっきまでとは比べ物にならない圧力で。
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「が……は……っ」
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動けない。
当然だ。
“上位互換”で再現した。
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「化け物……」
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またその言葉。
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「だから言っただろ」
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見下ろす。
冷たい視線で。
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「そうだって」
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男の意識が途切れる。
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静寂。
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「模倣……そして適応」
「なるほどな」
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これが、俺の力。
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「悪くない」
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いや――
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「最高だ」
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空を見上げる。
濁った世界。
腐ったルール。
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「決めた」
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もう迷わない。
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「この世界、全部壊す」
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それが、何度も失敗してきた俺の――
たった一つの“答え”だった。
読んでいただきありがとうございます!
バルカの能力が本格的に見えてきました。
この先さらに強くなっていくので、気になる方はブックマーク・評価いただけると嬉しいです!
次回もぜひよろしくお願いします!




