1話無能力者
はじめまして、けんとです。
ダークヒーロー×異世界×最強主人公の物語になります。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
この世界では、“力があること”がすべてだった。
生まれながらにして人は異能力を持ち、やがて“覚醒”する。
それが当たり前で、それが常識。
――だからこそ。
「なんでお前は、まだ何も出ないんだよ」
俺の目の前で、父親が舌打ちをした。
冷たい目だった。
そこにあるのは、怒りでも期待でもない。
ただの“失望”。
「気味が悪い……本当に俺の子か?」
母親は俺を見ようともしない。
兄は笑っていた。
「こいつマジで無能力者じゃね? 終わってるじゃん」
――無能力者。
その言葉は、この世界では“人間未満”を意味する。
力がなければ価値がない。
価値がなければ、生きる意味もない。
だから俺は、捨てられた。
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気づけば俺は、薄暗い路地裏にいた。
食べ物はない。
金もない。
頼れる人間もいない。
あるのは、空っぽの体と、空っぽの人生だけ。
「……はは」
笑いがこぼれた。
なんだこれ。
生まれてきた意味、あったのか?
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何日経ったのかも分からない。
腹は限界だった。
視界もぼやけてきている。
そんな時だった。
「おい、いたぞ」
複数の足音。
振り向くと、武装した男たちがこちらを見ていた。
「無能力者のガキだな」
「処分対象だ。連れていくぞ」
――処分。
ああ、そうか。
最後はそうなるのか。
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逃げる気力もなかった。
腕を掴まれ、地面に引きずられる。
殴られ、蹴られ、血が滲む。
それでも、何も感じなかった。
どうでもよかった。
どうせ終わる。
⸻
「最後に何か言うことはあるか?」
男が剣を構える。
冷たい刃が、俺の首元に触れた。
……終わりか。
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――その瞬間。
「……なんだ、これ」
頭の奥で、何かが“弾けた”。
視界が歪む。
いや、違う。
世界の見え方が変わった。
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目の前の男の体から、何かが“流れている”。
見えないはずの“力”。
それが、分かる。
理解できる。
そして――
「……使える」
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ドンッ!!
次の瞬間、男の体が吹き飛んだ。
何が起きたのか、誰も理解できていない。
当然だ。
俺自身も、分かっていない。
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ただ一つ、確かなことがある。
「今の……こいつの能力、か」
視線を落とす。
倒れた男。
その力が、“俺の中にある”。
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「は……はは」
笑いがこみ上げる。
さっきまで何もなかったはずの俺に、
今、確かに“力”がある。
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「化け物だ……!」
誰かが叫んだ。
だが、その言葉は間違っていない。
むしろ――
しっくりきた。
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「そうかよ」
立ち上がる。
体はボロボロのはずなのに、軽い。
いや、それすらもどうでもいい。
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「……だったら、もう人間やめるか」
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逃げ出す兵士たち。
その背中を見ながら、俺は手を伸ばした。
理解してしまった。
“どう使えばいいのか”。
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――次の瞬間。
全員が、地面に叩きつけられていた。
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静寂。
血の匂い。
そして、倒れた人間たち。
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「これが……俺の力」
胸の奥が、妙に静かだった。
嬉しくもない。
悲しくもない。
ただ――納得した。
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「遅すぎたな」
もしこれが、もっと早くあれば。
違う人生があったかもしれない。
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……いや。
そんなことはどうでもいい。
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「もう期待しない」
「もう信じない」
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なら――
どうする?
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少し考えて、すぐに答えは出た。
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「壊せばいい」
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この世界は、力がすべてだ。
なら――
そのルールごと、壊す。
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その時だった。
頭の奥で、誰かの声がした。
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『――遅いな、やっとか』
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「……誰だ」
⸻
『お前だよ』
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知らないはずの声。
なのに、理解できる。
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『俺たちは、お前だ』
『何度も繰り返した、“過去のお前”だ』
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――その瞬間。
大量の記憶が流れ込んできた。
戦い。
死。
裏切り。
絶望。
そして――
何度も、何度も繰り返された人生。
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「……は?」
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理解が追いつかない。
だが、一つだけ分かった。
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「俺は……初めてじゃない?」
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『ああ。お前は何度もここにいる』
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笑いがこぼれた。
さっきとは違う。
もっと、歪んだ笑い。
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「……マジかよ」
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なら、もう遠慮はいらない。
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「全部、壊してやる」
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それが、2000年転生した化け物の――
最初の一歩だった。
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