13.アンドロイドは知っている
僕は、人間という生き物を知らない。
人間という生き物の心を知らない。
それは、僕がアンドロイドだからという事ではなく、人間の優しさに触れたことがないからでもない。
人間という仮面の下が見えるからだ。
僕は自分がアンドロイドだという事に少しの疑問もなく、イヤでもない。
それなりに教養もあり知識もあるし、何より僕は人間のような汚さはもっていない。
汚い人間が僕を作ったのに、何故汚い欲望を植え付けなかったのか不思議でたまらない。
人間はよく笑う。
しかし、その笑顔の下で何を思っているか悲しいぐらいによく分かる。直感的に分かるのだ。
笑顔で相手に媚びて、その中でその苦しさ故に泣いている。
何故そこまでするのだろうか?
アンドロイドの僕には分からない。
人間は弱い生き物だと思う。可哀想な生き物だとも思う。
何故そこまで気を張るのか?
何故素直になれないのだろう。
人間は皆、自分の存在を認めてもらいたがっている。それならば、どうして叫ばないのか。“私はここにいる!”と。
もし僕が人間だったなら、これらの事を全て実行したいと思う。
人間は汚い。けれどそれは、相手によるのかも知れない。
人間の心は分からない。
人間という生き物は一体何だろうか。
僕はアンドロイド。
だけど、人間よりかは楽かもしれないアンドロイド。
《END》
《初出》
2002年2月17日発行「アンドロイドは知っている」




