一日一回
正直、どうすれば良いか分からない。
確かに異性に纏わりつくのは、はしたないし、婚約者として牽制するのが正しのだが。
「本当にどうでも良いのよ……。」
愛情どころか、情すらないかもしれない婚約者を助けるのは、少し面倒くさい。
「チェルシー様、王妃さまから一日一度は、牽制行動をしましょうと言われているでしょう?」
侍女見習いのタチアナに囁かれ、視線を向ける。
少し離れたところで、マリアが見目と実家の地位がよろしい男性に囲まれてきゃあきゃあはしゃいでいた。
「そうですけど!あの方たちは、どうして彼女と親しくしているのかしら?」
『聖女』を名乗る女性と関わると、場合によっては爵位剥奪もあり得ると歴史に学んでいる筈だが。
「後腐れがない可愛らしい女の子は中々いませんから。」
「彼らの婚約者だって、凄く可愛いじゃない!」
悪役令嬢チェルシーと違って、他の令嬢たちは可愛らしい女の子だ。
「チェルシー様が一番可愛らしいですよ。」
「私は顔がキツイのよ。分かっているわ。……でも、ありがとう。ジョージ。」
護衛の慰めにチェルシーは苦笑しながらも、言われたことは素直に嬉しい。
「チェルシー。」
あちらの会話は聞こえていたので、聞く気があるなら、当然こちらの会話も聞こえただろう。
「ナイジェル様どうかされました?」
そっぽを向きたいが、貴族令嬢としての矜持で学園では必要最低限で言いとされる礼をとる。
「うん、君の護衛に対抗しに。」
「対抗、とは……?」
ちらりとジョージを見てから、チェルシーを真っ直ぐにみるナイジェルに顎を引く。
「私の婚約者は可愛い。それだけではなく、美しさも備えている。そう伝えたくて。」
手を取られて指先に口付けられた。
聖女にデレデレしてもそこは王子様だった。
「ひゃぁっ……。」
いくら貴族令嬢として育ったとはいえ、現代日本で育った記憶が強いチェルシーは、取られた手を引っ込むことも出来ずに、顔を赤く染める。
「ちょっ!ナイジェル!学園の中でそんなことしなくても良いのに!」
マリアが慌てたようにナイジェルの腕を引いて、チェルシーと距離を取らせた。
「マリア、気安く殿下の身に触れるな。」
「やだ、ジェイダそんな風に言わないでよ。それに、私のことはお姉ちゃんって呼んで!」
ぷくりと頬を膨らませる姿に、男性陣はへらりと笑ったように見えるが、微妙な違和感を感じる。
「……まぁ、仮にも貴族令嬢を名乗るならば、頬を膨らませるなんて、はしたない事はお止め下さい。」
やっばっ!と顔に出しそうになるのを扇子で隠して、悪役令嬢を演じるようにマリアを睨んだ。




