入学式
淡い栗毛の髪が光を受けて、キラキラと煌めいて金色に見える。
「ねぇ!ジェイダ、楽しみね!」
「あまりはしゃぐなマリア。」
ヘンウィック家の馬車から降りてきた二人に、チェルシーは足を止めた。
「そっかー、今回の聖女サマはピンクブロンドじゃないのねー。」
「お嬢様?」
共に学園へ入学した護衛が心配そうに声をかけてくる。
「良いの。ただの現実逃避しただけだから。」
チェルシーは結局、虫除けとして第一王子の婚約者になってしまった。
万が一にナイジェルがやらかした時の為に、候補のままが良かったのだが、王妃さまの一言が怖かった。
「その時はいくらでも代わりはいるわ。」
にっこりと、それは素晴らしい笑顔で言われて、逆らえる者などいるのだろうか。
「私がやらかす場合もあります、とは申し上げたのに。」
婚約者に纏わりつく聖女に嫉妬して、暴漢に襲わせたり、階段から突き落としたりするかも、と言ったチェルシーに、王妃はこてんと可愛らしく首を傾げた。
「生爪を剥いだり?」
「耳を削ぎ落としたり!」
とある有名な一節を続けて、それを知らない一部の護衛が引いていたが、知ったことではない。
「まぁ、まぁ!大丈夫よ。聖女様は治癒魔法がお得意なのでしょう?すぐに治せるわ。」
「…………やっべぇな。」
つい、転生前の口調が溢れて、にこりと微笑まれる。
「それは、私がやらかしても宜しいということですか。」
「だって、第二妃候補でも無い女性が、王族を誑かすなら、それなりの酬いは必要だと思うのよ。」
王妃との会話を思い出していたチェルシーは、ふるふると頭を振る。
「チェルシー様?」
「ごめんなさい、なんでもないわ。第一王子殿下にご挨拶に行かないとね。」
今のところ、婚約者はまともだ。今のところは。
「失礼だな、相変わらず。」
「あー、心の声が漏れてましたか?」
なんだか、きゃあきゃあ騒ぐ気配が近付いてくるなぁ、とは思っていたので、一応小声で言った筈。
「まぁ、過去の事を参考にするならば、無理もない。……魅了を持つ者なら、どこまで抵抗出来るかも未知数だしな。」
ため息を吐いた婚約者ナイジェルに、少女が突進してくるのが見える。
進路をこちらに変えて突進された挙げ句、突き飛ばされたと言われたらかなわないので、すっと護衛の影に隠れた。
「初めまして!皆が集まってるから私も来ちゃいました!有名な方なんですか!」
わざとらしくナイジェルの目の前で転ばなかっただけ、評価しようか。




