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聖女さま

「よっしゃー!イケメン逆ハーレム達成するわよー!」

入学式前夜マリアは拳を振り上げ、部屋の外には聞こえない程度に叫ぶ。

記憶を取り戻してから、引き取られるまでの数年間は良い子アピールと光魔法が使えますアピールをしたお陰で、ゲームより二年早く引き取られた。


「でもなー、なんか父親のテンション低いのよねー。母親もついてきたからかしら。」

そう、マリアが男爵である父親に引き取られる時に、母親も何故か来た。

顔を見た瞬間、マリアは思わず死んでなかったの!と叫んだけど、私は悪くない。


「まぁ、それを受け入れる優しい娘を演じた方が都合は良いのよね!」

その代わり父の正妻には睨まれたが、腹違いの弟妹たちの反応はそれほど悪くない。


「やっぱり私が可愛いから、無碍に出来ないのよね!」

それに聖女だしね、と鏡を見ながらくるりと回って、ふふふっと満足そうに笑った。



「また何か叫んでるよ……。」

兄であるジェイダのひそりとした呟きに、アネットは眉を寄せた。

「お兄さま、本当にマリアと入学式に行くの?」

「仕方ないだろう、何台も馬車を使える余裕はないんだぞ。」


腹違いとはいえ、一応は血の繋がった姉だ(推定)。

馬車の中で2人でも問題にはされない。残念なことに。

「娼婦の娘なんて、」

「アネット、それはいけない。それに、くだらない真実の愛とか言い出さないだけマシだ。」


マリアはジェイダより半年ほど生まれが早い。

本当に父の子どもなのかは怪しいが、強い魔力が発現している以上、どこかの貴族で保護する必要はある。


「でも聖女だなんて、普通に学習していれば言わないわよ?」

「平民でも最低限の教育は義務だし、うちに来てからも勉強はさせている筈だがな……。」

顔を見合せて、深くため息を吐き出す。


「つまりは、彼女は間違いなく聖女サマということか。」

「やだなぁ……。うちに聖女サマがいるって、他の貴族には周知させているんでしょう?」

「あんなのが家族かもしれない、というのは我が家の恥だが、義務ははたさねばならない。」


礼儀作法も基礎学力の底上げも、マリアはいまいちやる気がなく、挙げ句のはどんな貴族の子息が入学してくるのかと興味を向けている。


「あんな子に、古の書なんて読ませられないものね……。」

「見せたところで、自分は関係ないと言いそうだしな。」

『古の書』いわゆる、聖女と呼ばれた人間のやらかしが教訓として書かれた物だが、『聖女』が生かしたためしがない。


「聖女さまが聖女だったのなんて、最初の何代かだけなんて、笑うしかないってやつかしら?」

「笑えるか?あれと暮らしてきて、本当に笑えるか??」

これから共に学園へ通わなければならないジェイダの嘆きに、アネットは視線を外してごめんと謝罪した。



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