理解
多分、ゲームとここの世界は同じではない。と、マリアに教えられただろう。
「あのね、高位の貴族を侍らせたいなら、彼らの地位に沿った礼儀作法は覚えるべきよ。」
チェルシーの進言に不満そうな顔をするものの、端から否定してこないのは、成長と思って良いのか。
「そもそも、男爵家の養女がこの国の公爵程度を味方に付けたくらいじゃ、アイザック様の護衛に問答無用で切り捨てられても文句も言えないのよ。」
「でもー、切り捨てられなかったし。あ!もしかして、護衛の好感度高かった?!」
きゃぴっと効果音が付きそうな態度でマリアが言うので首を振った。
「多分、アイザック様の御前を汚したくなかっただけじゃない?」
「首を切られた姿よりは、生きてる姿の方がマシって事かぁ……。」
「あら、意外に冷静ね。」
普通(?)のマリアなら、酷いっとか、涙目で叫んで、タイミング良く誰かが入室して、チェルシーのせいにされるところだが、大人しくてびっくりする。
「だってさー、首筋に刃物突き付けられるの経験しちゃうし、アイザック、様の威圧?っていうの?モロ浴びすると、ヒロインの皮なんて被っていられないわ。」
「失礼なことお聞きするけど、前世の享年はおいくつ?」
若くして亡くなったから、あのノリだったのかと思っていたが、なんとなくチェルシーが思っていたよりは、大人のような気がする。
「……さっき、全身洗われる羞恥心って言ってたけど、良い年して可愛い子ぶるのも恥ずかしいからね!」
「それは……好きでやってたでしょ?」
素直に勉強したり、人の話を聞いて逆ハーなど狙わなければ、ゲームのような聖女の使命など無いと分かっただろうに。
「だって、リアルじゃあんなスペックが良い人いなくない?居ても庶民だと出会えないでしょ。それを楽しむのって、そんなに悪いことなの?」
分からなくも無いので、頭から否定はしたくはないが、悪役令嬢にされるチェルシーとしては、ちっとも頷けない。
「あのさぁ、マリアは前世で転生系の物語とか読んだこと無い?漫画でも小説でも良いけど。」
「聖女愛され系しか読まないわよ。あぁ、悪役令嬢がざまぁする話があるのは知ってるよ。……まさか、ざまぁ狙ってたの?」
なぜ、そんな呆れた顔をされなきゃいけないのか。
「あなたが正しい事をしているなら、そんなことしないわ。そっかー、愛され系だけかぁ。だからあんなにざまぁされる系の男爵令嬢やってたのね。」
多分ノリとしては愛され系になると思うが、真の愛され聖女様は、人を陥れたりしない。
「くっ!……分かったわよ、攻略対象を一人に決めれば良いんでしょっ。あと、礼儀作法とか分かんないけど、礼儀は弁えるわ。」
ざまぁがどういう物なのかと、自分が不利な状況にいる事は分かってはいるようで、マリアは悔しそうに吐き捨てた。




