真の聖女は
全話の誤字報告ありがとうございます!
何を言っているの?という顔のマリアに、チェルシーはここぞとばかりに畳み掛ける為に、ずいっと近付く。
「だって、あの美しさに高い魔力、人を惹き付ける魅力。それに建国の聖女の末裔なんて、本来あるべき姿の聖女に相応しいと思うわ。」
「でも、あの人は男でしょ。聖女は変。」
逆ハーなんて非常識な事を目指す人間に、性別程度でどうこう言われたくは無い。
「聖人?聖者?それなら良いでしょう?」
「でも聖女って柄じゃないよ。どちらかと言うと、支配者。」
人を従わせる事に躊躇いの無い人間に、聖女の称号は似合わない。
マリアの主張を聞いたチェルシーは、うぐっと言葉に詰まった。
「それこそ、魔王の方が似合いそう。あっ!別に悪しき者って意味じゃないわよ!」
マリアが慌てて付け加えるので、チェルシーはほっとする。
いくらそばにアイザックが居ないからと言っても、アイザック魔王説が出たときの、護衛からの殺気は思い出したく無い。
「そういえば、あの方のことラスボスって言ってたらしいわね。」
「ん?あぁ、セイリオス帝国の皇子様なんでしょ。IIの高難易度攻略対象者!知らないの?」
「それ、別の方だから。ゲーム設定では第一皇子のフランク・マクヴェイ様。でも、狙うのは止めた方が良いわ。」
ゲーム上とはいえ魔王になる人だし、何より叔父であるアイザックは許さないだろう。
「えー、でもアイザック…様の血縁ならゲームと同じ顔でしょ?なら、イケメンじゃん。」
「お会いしたことは無いから、存じ上げないわよ。例えばここがゲームの中だとしても、死ぬのは嫌でしょう。」
むしろゲームの中ならば、マリアは一度死んで時戻りをしなければフランクを攻略出来ない。
「そこは、転生チートってやつで?」
「一人も攻略出来ていないのに。」
こんな甘い考えだから、勉強すら真面目にしないのだろうが。
「……ねぇ、孤児院って待遇悪かった?食糧が充分に供給されないとか、隙間風入るとか……子どもたちの識字率低いとか。」
「えー?ご飯はいまいちだったけど、普通じゃない?よくある院長が支援金を横領しているとか無いし。どちらかと言うと学校の寮みたいだったかな。」
男爵家での生活と比べられたら、レベルは下がるがあの人数なら、一般家庭の大家族よりは良い生活だったろう。
「そう……。」
「なぁに、自分は公爵令嬢だから贅沢してたわよって自慢したいの?」
ふんっと鼻を鳴らすマリアに、うんざりする。
「あなたが逃げ回る礼儀作法も、幼いうちから覚えさせられるし、街だって一人歩き出来ないのは当たり前。異世界の記憶がある状態で、未だにお風呂は全身洗われる羞恥心、分かる?」
庶民からすれば、贅沢だと批判されるだろうが、貴族令嬢に自由は無い。
「結婚だって親に決められて当たり前。成人したら当然のように嫁ぐのでしょうね。」
「えぇ、人権ー。」
「魔力が高い人の義務よ。贅沢と言われる生活の代償ね。」
魔力を持つ人間を増やす義務。
とはいえ、不妊だからと言って責められたりはしない所は、建国の聖女が徹底したお陰か。
「ふーん……それこそ、聖女を担ぎ上げて、結界維持を任せれば良いとか無いんだ?」
「今の規模の結界を、聖女だけに任せるとか、無理でしょ。それともやりたいの?」
アトラス王国規模ならば、マリアの全魔力を使えばギリギリ結界を維持できる…かもしれない。
「結界維持を?私が?……それ、魔力を根こそぎ持っていかれるやつ?」
「この結界、ゲームより優秀だから。魔物の侵入を防ぐとかだけじゃないわよ。」
一度くらいなら可能だが、マリアの魔力が戻る前に結界は壊れるだろう。
明日の朝は連載じゃなくて、短編アップ予定です。




