転生者同士で
不貞腐れた顔で目の前に座るマリアに、チェルシーは口元を扇で隠し、小さくため息を吐く。
「アイザック様に、随分無礼なもの言いをしたようで……よく、ご無事でしたわね。」
嫌味半分、本心半分で言えばキッと睨まれ、立ち上がりかけたマリアだが、ハッとしてすぐに座る。
「産まれた時から公爵令嬢のあなたと違って、私は孤児院にいたの。礼儀作法とか比べられたら敵わないのは当然じゃない。」
気持ちしおらしくなっている。
でも、八年も男爵家に居て教育を受けているのに、必要最低限も出来ないのはどうかと思う。
「それ、孤児院の子たちや庶民を馬鹿にしているよね。むしろあの人たちの方が礼儀をわきまえているわ。」
庶民は身分差を良く分かっている。
少なくとも、マリアのように臆面もなく貴族へ突進したりしない。
「でも!セカキミのヒロインって、こんな感じだったじゃない。そもそも、あなたがちゃんと悪役令嬢にならないから、私が責められるのよ。」
「えぇぇ……。セカキミの記憶があるのに、わざわざ悪役令嬢を演じるって、酔狂にも程があるわよ?」
マリアの礼儀知らずは確かにゲームをなぞらえているが。
「私だって、一生懸命ヒロインに成りきってるのよ。あなただけ自由にするとか、不公平でしょ。」
「はぁ……、あのね断罪されて国外追放される私と、好きな人と幸せになって、皆から祝福される役のあなたと。同列に考えるなんてそれこそ『あたおか』だと思うわ。」
これが本当にゲームの中ならまだ良い。
ゲームファンが書いた二次創作を元にした世界とかだと、普通に処刑とかえげつない報復がお互いあるのを知らないのだろうか。
「でも、原作崩壊させるってファンとして最低だと思う。」
ぶすくれるマリアに、原作崩壊とかより自分の人生が大事だと言いたい。
「そう、つまりそれは私に死ねって事よね。」
「は?酷くても国外追放だけでしょ。大げさ!」
ゲームの中なら、と先程思ったが、そもそも国外追放された後のチェルシーがどうなったかは語られていない。
「そう。ところで、ゲームのようにこの世界は、聖女が必要じゃない事は理解したわよね。」
「うっ……そうね。でも、いつ必要になるか分からないじゃない?」
「絶対無いとは言えないけれど、でもその場合はもっと相応しい人がいると思うわ。」
逆ハーのことしか考えていないマリアは、ただゲームの中だけの聖女だ。
この世界で暮らす人々の事を、考えたりはしないような聖女は必要ない。
「そんなの……誰がいるって言うの。」
「――私としては、アイザック様が良いと思うの!」
思わず力んでチェルシーが主張すれば、マリアはぽかんと口を開けた。




