やり直す?
何の含みも無い、純粋な声がマリアの心を抉る。
「だって!セカキミのヒロインなのよ!攻略対象が皆イケメンで、地位もあるし優しいから、逆ハー狙うの普通じゃん!」
この際だからと、願望を吐露する。
別に納得して貰おうとは思っていない。
「まぁ、一夫多妻も一妻多夫も認められてはいるから、普通ではないなんて言うつもりは無いよ。でも、それを達成してその後はどうするの?」
「は、その後……。」
意味が分からない。その後とは?と聞きたいがまた怒られたら嫌なので、復唱するに止める。
「えーと、ゲーム?だと君の卒業が世界の終わりで、また最初からやり直しをして、違うお話を楽しむって聞いた。それは、つまり何度も何度も。同じ時を繰り返すって事だよね。」
アイザックがにっこりと笑う。
「やり、なお……しなんて、しないわ。出来ないもの……。」
「そうなの?それならば、ぎゃくはーを達成したら、卒業後に君はあの子たちと結婚式して、子どもを産む義務が発生するよ。大丈夫?ちゃんと順番を決めておかなきゃ、駄目だよ。」
何を言われているか、分からない。
順番?子ども?結婚?みんなと?なんで?
「ああ、あと貴族の子息たちと結婚するのだから、その礼儀作法も改善するように。今でさえ恥なのに、そのまま社交界に出るなんて、この国の品位が地に落ちる。」
「アイザック様には関係ないじゃん……。」
セイリオス帝国のアイザックが、この国がどうなろうと、影響は無い筈だ。
「姉の嫁ぎ先だし、可愛い甥姪が居るのに関係無しでは居られないよ。」
「それでも!関係無いわ!何よっ、同じ年のナイジェルに可愛い甥とか言って。そっちの方が気持ちわ…」
「リチャード。待て、だ。」
護衛がいきなり現れた男の襟首を掴んでいる。
アイザックの言葉に、(推定)リチャードはぴたりと動きを止めた。
「やはり躾不足だったな……。ねぇ、君。感情的に言葉を綴るのは、身を滅ぼすよ。」
「な、何なの、この人!」
「何って、リチャードだよ。よろしくね。此方の護衛より過激派だから表には出さないようにしていたけれど、出てきちゃったね。」
アイザックが困ったね、と笑って手を振れば、リチャードは姿を消す。
「君がね、身分制度を余りにも軽く見ているから、少し体験して貰ったけれど、リチャードは想定外だったよ。でも、ナイジェルやチェルシー嬢にも、他にも護衛は居るし、主人を侮辱されたら容赦の無い子もいるなら、気を付けて。」
「そ、そんなの……おうぼう。」
今更ながらに、マリアは最初に突き付けられた剣の冷たさを思い出し、首筋を拭って小さく呟いた。




