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教育開始


ぜんぶ。全部、全部、上手く行くと思ったのに。

最初はちっともゲーム通りに行かなかったけれど、結局は皆が傍に来てくれたから。


アイザックが額に手を当てて、ふーっと長いため息を吐いた。

「ねぇ、質問したのは私だよ。」

「っ、えっ……。」

失望したような目がマリアを射る。


いつの間にかアイザックの背後に戻っていた護衛が、蔑むようにマリアを見た。


「あ、あ…あぁぁ、わ、私っ、その……前世の記憶があるから、しょっ初等教育なんて受ける必要なくて……。」

くだらない、と思っていたから、少しも聞いていなかったと答えれば、へぇ、と雑な相槌をされる。


「男爵家に入るなら、貴族としての教育もされた筈だけど、君は全然身に付いていないよね。」

「それは!皆、貴族のしがらみとかで疲れているから。無邪気なヒロインに惹かれて癒されると思って。」


ほかの貴族令嬢と違って、遠慮の無い態度のヒロインを皆好きになっていた。

だから、下手に知識を入れずにありのままで居ただけだ。


「あぁ、チェルシー嬢から聞いたよ。えぇと、おもしれー女?って言うの。」

「え?ってか、あの女もやっぱり異世界転生者なのっ!」

「知らないよね。セイリオスの建国した女性も異世界転生者だよ。そのせいか、時々異世界転生とか前世の記憶を持つ人間が生まれているの。」

庶民でも知っている事だと続けられて、驚愕する。


「はぁぁ?普通、そういうのは秘めるものじゃないの?!だって、前世の記憶があるとか、あたおか案件じゃん!」

「そう?でも、身分社会で遠慮なく誰彼構わずに突進する君ほどじゃないよ。」


マリアが声を上げれば、アイザックが手を背後に立つ護衛の腹辺りに当てる。


「あと、余り私の護衛を刺激しないでね。待ては出来るけれど、 制止が間に合うかは別だから。」

間に合うかはと言うより、間に合わせる気があるかは、じゃないのか。

命の危険を感じて、身体の震えが止まらない。


「本当は正直どうでも良かったよ。ナイジェル以外の誰を誑かそうと。でも、聖女だなんて自称する人間に何人も男性を囲われたらねぇ。」

「何でダメなの?側室とか普通でしょ。男が良くて、女性がダメなんて可笑しいわ。」


せめて声を荒げることが無いよう、声を押さえて訴えれば、アイザックはコンッとテーブルを叩く。


「聖女を自称するだけでなく、そこの教育も聞いていなかったと。」

「そう、だけど……。」

ソファに寄りかかり直したアイザックが、腕を組んで指をとんとんとさせている。


「貴族は……魔力を持つ者は、子どもを産む義務がある。例えば女性が多くの貴族男性を夫として迎えると、最低でもその男性たちの子どもを一人づつ産まなきゃいけない。」

「そ、そんなの……横暴じゃない?」


跡取りという意味で、貴族がそういうのは少しは理解しているつもりだけれど、皆の子どもだなんてと思えば、流石に無理だろうと思った。


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