無知ではない
何故かアイザックに呼び出されて王宮にいる。
今まで散々無視をしてきたのに、今さら何だろう。
「さて、呼び出した理由は分かるかな。」
にこり、と微笑むが目が笑っていない。それなのに、目が離せなくなるのは卑怯だと思う。
「うーん、私なにかしたっけ?あ、分かった!アイザックが私と二人きりで会いたかったんでしょ。」
うふっと笑って言うと、首筋がヒヤリとする。
嫌な予感がして視線だけで確認すれば、刃が喉元に押し付けられていた。
「気安くアイザック様の名を呼ぶな。」
「こういう娘だって分かっていただろう。その程度で怒るな。」
呆れたようなアイザックの声に、少しだけ間があって、刃が離れた。
「っ、ちょっっ!何それ!そんなことされなきゃいけないようなこと、私した?!」
立ち上がって抗議すれば、アイザックが指で座れと指示をしてくるので、不満に思いつつ腰を下ろす。
「良かったね。二度と口が開けなくなっていたかもしれないのに。」
やっぱりにこり、と微笑む。
さっきは目が笑っていないなぁとしか思わなかったのに、今度はしっかり笑っていても、どうしてだか怖い。
「えぇとニホンだっけ、君の前世。身分制度は一応無いって聞いているが、皇室があると聞いたよ。同じこと出来るかな?」
何を、とは言われなかったが、アイザックは皇子だと聞いているので、言っていることは分かる。
「……しないわ。」
「この世界はね、身分制度があるんだよ。どこかの物語みたいに、庶民が貴族に不敬をしたら、切り捨てるなんて言うのは許していないけれどね。」
許されていない、ではなく許していない。
同じようでいて、違うのだ。
この人は許す許さないを決定出来る立場にある。
「まぁ、学園のことはね。君みたいなのは、歴史の中にそこそこ居たから、猶予を与えてあげている。」
自分みたいなの、と言うのは、異世界転生者という事だろうか。
アイザックの立場を理解したとたん、どう喋って良いのか分からなくなった。
それにここは、学園じゃないから。
「わ、私は……。」
「聖女についても。きちんと初等から教育している筈だけれど、覚えていないのかな?」
聖女。自分が聖女だとは、まだ誰にでも言っていなかったのに。それに、異世界転生者であることだって。
「どうして、知ってるの……?」
全て、筒抜けなのだろうか。
最近はナイジェルも他の男の子も、とても優しくて上手くいっていると思っていたのに。




