多分、いろいろ無理
八年、とジェイダが答えて、何故かマリアが得意げにしている。周囲はドン引きしているが。
ある程度成長してからなら、まぁ身に付きにくいが八歳だと、まだ伸び代がある時期だったのではないか。
「まぁ、八年!ヘンウィックさんは、男爵家の為に努力しようとは思わないのね。ちっとも淑女らしさが無いもの。」
チェルシーの呆れたような声に、舌打ちが聞こえた。
「マリアはこのままで充分ですから。貴族に必要な魔力だけでも。……希少な存在です。」
高位貴族の子息に纏わりついたり、何故かいまだに他言はしていないが、自分が聖女だと言ったりと、淑女としては類い稀なる存在だ。
――残念な意味でだが。
「そうだよ、エディソン嬢。彼女は光魔法の魔力量が凄い。……聖女が再来したかのように、明るいじゃないか。」
ナイジェルの絞りだしたフォローに、チェルシーが扇を口元まで持っていって、ぱっと広げる。
「……光魔法、ねぇ。嫌だわ、ナイジェル様。確かに電灯用の魔石に光属性の魔力を込めると、他の属性の魔力より、明るくなるのは事実ですけれど。」
電灯には光。調理用具には火。冷蔵室には水(氷)のように、道具の使用目的にあった属性魔力を使うと、性能が上がるのは常識だ。
くすくすといつまでも笑っているチェルシーに、マリアは迷った素振りを見せたあと、チェルシーの手から教科書とノートを取り返した。
「そうやって、チェルシーさんはいつも私を馬鹿にするんですね!私がナイジェルに聖女のようだと言われたのが、気に入らないんでしょう!」
聖女と言われて(言っていない)、どこか嬉しそうなマリアに、周囲は流石に驚いたようだ。
「マリア、それは……無いよ。」
聖女と評されて喜ぶ人間は、今の時代は居ない。
ジェイダはいまだに知らないマリアが流石に哀れだと思ったか。
「……あなた、この世界どころか、聖女の事すら何も知らないのね。」
分かってはいたけれど、とチェルシーが呟いてため息を吐き出す。
「ほらぁ!また、そうやってすぐに私の事を馬鹿にするっ。」
マリアはその意味すら理解しようとせず、涙目になった。
「……ねぇ、マリア。本当に聖女がどういう存在か、知らないの?」
大勢の前で見せ物にするのは流石に趣味じゃない。
庭園の真ん中で騒いでいるせいで、どんどん人が集まってくる。
「なぁに、ナイジェルまで。私を馬鹿にしているの?」
もうっと剥れて睨んでくるマリアに、額を押さえた。
「ちょっと、早速だけれど作戦変更を希望する。」
挙手をして、誰にともないように言えば、マリアは呑気に変なナイジェルと笑った。
精神的苦痛が……




