物語を進める決意
チェルシーはぐっと拳を作り、立ち上がる。
「やはり私が悪役令嬢をやるしかないのですね!」
この世界はゲームの中では無いようで、ゲームの中なのだろう。
聖女が必要無いとされているのに、いつまでも聖女だと思い込む少女を、本来ならば皇族や王族に対しての不敬罪で、退学にくらい出来そうなのに、踏み込めない事実。
「どう考えても、変な方向で物語の強制力が働いていると感じます。ならば、ここは敢えて物語をなぞってみませんか。」
「え……アレに甘い言葉とか囁かなきゃいけないよね、それって。」
乙女ゲームがどういう物なのか、知識を得てしまったナイジェルは顔を青くする。
「ナイジェル様は難易度低すぎて、チョロ殿下とか呼ばれてましたから、頑張って頂くしか。」
「チェルシー嬢はそれで良いの?ナイジェルが他の女性と親しくして。」
じっとアイザックに見つめて言われ、腰が引ける。
「あ、悪役令嬢は嫉妬して、聖女サマに意地悪するのが定番なので!」
最近、ちょっとはナイジェルに情が芽生えている自覚があるチェルシーは、良いか良くないかで言えば、良くない気がする。
「そっか!チェルシーが聖女サマを階段の上から突き飛ばしても、断罪したり婚約破棄しないから思い切り殺ると良いよ。」
にっこにこのご機嫌笑顔のナイジェルに、言っている事は物騒なのに、可愛いと思ってしまうのはもう末期かもしれない。
「では、断罪しないという魔法契約を結んではいかがですか。」
名案!と言う顔でジョージが提案をするので、アイザックがふっと吹き出す。
「この顔ぶれで発言するとか、良い度胸の護衛だな。」
「主人の安全を守る為ならば、不敬など気にしてはいられません。」
しれっと答える姿に、アイザックがそのままクスクスと笑うので、ナイジェルが微妙な顔をしつつ頷く。
「叔父上は結構そういう人間好きですよね……。チェルシー、彼の提案を受け入れよう。後で私のサインを入れた物を届けるから、確認して君もサインすると良い。」
ナイジェルもアイザックの護衛も、アイザックが気にしなければ問題にしないという方針で一致しているようだ。
「正しい信念を持つ人間に不敬を持ち出すほど、耄碌しちゃいないよ。それより……。」
アイザックは顎を引き、全員をゆっくりと見渡す。
「擬似的に物語を進める事はわかった。だが、どんなことがあろうとも、マリア・ヘンウィックに結界の根元には近付けてはならない。それは必ず徹底しろ。」
マリアは何をするか分からない。
自分の欲望を叶えるためならば、世界を壊すことも考えられる。
魔力が高いということは、それを可能にする力があるということだった。
いつもご覧頂きありがとうございます。
あと15話ほどで終わります!
誰かの裏話などとか読みたいなど、ご希望ありましたらコメントなど頂けたら嬉しいです。




