聖女とは
近付き過ぎたのか治癒魔法の後、ふにっと唇に触れてしまい、絶対零度の視線で護衛に見下される。
「ひょぇぇ、すみません!柔らかいなぁなんて思ってません!はい!」
「チェルシー、彼が怒ったのは叔父上の唇に触ったとかじゃなくて、治癒とはいえ、許可なく魔法を向けたことだと思うよ。」
ナイジェルの説明に護衛が頷く。
当のアイザックは肩を竦めると、宥めるように護衛の手をぽんっと叩いた。
「治癒魔法といえば、マリアは聖女にしか使えないと思い込んでいるようですが……。」
「セカキミではそういう設定ですからね。訓練すれば私にも使えるって聞いて驚きました。」
「チェルシーの治癒魔法は、風属性だったよね。」
属性によって回復量が変わるという事はなく、魔力量と技術が関係している。
「聖女サマは魔法はどれだけ使えるのかな。聖女だと自認するだけあって、もちろん全属性使えるよね。」
属性は大きく分けて、水、風、火、土、光、闇、無がある。
「光のみですね。しかも、治癒魔法しか鍛えていないので、魔石への補充が出来ないという……。」
余りにもジェイダが申し訳なさそうな様子なので、チェルシーは居たたまれない。
「ふぅん……あの魔力量で聖女を名乗るなら、もちろん四肢欠損程度は治せるよね。」
「試した事は無いのでどうでしょう。治療院にも行かないので。」
アイザックの嫌味に、ジェイダはふるりと首を振って言うので、チェルシーは驚く。
「え……聖女を名乗っておいて、治療院に顔を出さないの??セカキミの聖女は治療院や孤児院に頻繁に顔を出して、慈善活動してたのに。」
「前世が異世界の君でも、異世界でさえ本来の聖女に対しての認識はそんな感じなのにねぇ……。」
嘆かわしいと吐き捨てるアイザックに、チェルシーたちは笑うに笑えない。
聖女を自称する者は国に混乱を巻き起こす、異世界転生者ばかりだ。
「とはいえ、この世界に聖女は建国の聖女だけで十分ですから。」
「建国の聖女様って、何歳まで生きられたのでしょう。」
「記録によると123歳だが、退位される時にまだ若々しくあられたから、街に下りて、何と言ったかな……そう、転生ちーとと言うのをやらかしていたとある。」
ご飯が美味しいのも、インフラが整っているのも、ゲームだからで納得していたが、建国の聖女が努力した結果だと考えると、足を向けて寝られない。
「そういえば、建国の聖女様の像って無いんですか?結界を統制する柱はただの柱ですし。」
便宜上、教会と呼ぶが教会は、あちこちに多数存在し、教会には結界を維持するために魔力を集める柱が建っているのだ。




